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夏休み突入…前。

煽っておいて夏休みに入れませんでした。


テストが終わった翌日、俺たち三人は呼び出しを受けて生徒会室に向かった。ノックをして入ると、中には例の生徒会長とロバート、そしてコズモがいた。

「座ってくれたまえ。私は生徒会長だ。名乗ることはできない」

はあ?

「何の用でしょうか生徒会長?」

おいレギオ、何か突っ込んでほしそうだぞ。スルーしてやるなよ。

まあ面白いのでスルー組に参加。

「…ツッコミ…要件はズバリ全魔権だ。一年は他の出場者が辞退してな。俺たちの学年はまあ紆余曲折を経て…色々とな」

「そこからは私がご説明を」

ロバート、苦労してんなあ。

「全魔権にサポーターを二人つけ、さらに合宿費用なども出します。一年のサポーターは…伯爵令嬢のお二方となります」

シンシアとアナスタシアが。何のサポートしに行くんだろうな。

「合宿は学園所持の海浜沿いにある施設です。一年から三年全てが総力を上げて取り組むモノですので、本気で(そして意味ありげに俺へ視線をやる)やっていただければ、と」

「俺が本気を出さないとでも思っているんですか?」

おいレギオ。見たのはお前じゃないぞ?俺だぞー。

「ええ、少々力を出していただく訳にはいかない方もいるようですし?慢心は敗北の言い訳ぐらいにしかなりませんから」

もちろんロバートもガンガン煽る。嘘は言ってない。

前半は俺宛に。後半はレギオへ。

「……俺は慢心などしませんよ。全力を出して挑みます。競技の説明は?」

「ああ、はい。つい…競技は団体戦ーー3vs3、そして個人戦です。それを勝ち残ることでポイントが加算、各校の勝利が決定します」

なるほど、合理的ではある。

こうすれば客観的に校内の魔法師のレベルを見定められる訳だ。

その評価が如実に就職にまで影響してしまう。だとすれば…。

「この全魔権での戦いが、当校の存亡をかけるってことでいいのかな?」

「そうですね」

すでに就職が決まっているようなロバートはともかくとして、彼以外の生徒会メンバー二人の顔色が変わる。生徒会長も無能そうに見えてその辺りは理解していたと見える。

「だから押し付けられたんだな…」「ヤバイわね…」

あ、ダメだ分かってなかったや。


「という訳で、連携のために作戦を立てる。何か案は?」

「私ぃ、レギオが前にでてぇ、サクッとやっちゃったらいいよぉ」

「お粗末な作戦ですね。レギオ様は魔法の強みをお持ちです。それを使ってみればいかがです?」

この二人どうして俺の脚を踏みにじりながら同席してるのかな。

「作戦立案、練習をするぞ!」とレギオが提案して来た。放課後はあんまり長引かせたくないんだけど、仕方ないか。

そう思って受けたのが甘かった。

「お疲れのようですね。死んではいかがでしょう?」

「えー?お肌ツヤツヤだよ、まだ五発はいける顔だぁ。そしてそれであたしはご飯六杯はいけるよぉ。さあ、アズキュンをギンくんのっ!」

そこで言葉をとぎらせたのは、アズサが耐えきれずに『サイレンス』を使ったからだ。

「…連携を声で行うチームもあるだろう。そして魔法の無詠唱なんてものを習得していなければ、魔法を封じられる」

若干顔が赤い。

「肉体干渉系は許可されていたしな。連携を封じるのはそれでいいか。他に手は?」

「精霊魔法使えるやつがいるなら話は別じゃないだろうか」

精霊魔法に必要なのは、精霊と仲が良いこと。俺はたまにいろんな精霊の愚痴を一晩中聞いてやったり解決に手を貸したりするからものすごく仲はいいんだけど、いかんせんベタベタしすぎるのだ。

親友のアズサのことを話したら、親の敵でも見るような目で見られたしなあ。

そして、精霊魔法は呼び出せば魔力が尽きるまで『お願い』を聞いてくれる。だが、居丈高に命令すれば何でも聞くと思い込んでいるのだ。そして文献にはこう綴られている、『精霊魔法は取引である』と。

こうした間違い(俺が呼んだ精霊王が教えてくれた)は傍迷惑なのだと言っていたっけ。精霊とは絆を大事にするのであり、与えられるものが真心がこもってさえいれば、何でも喜ぶということを。

こんなひよっこが出るということは、その原理を知らないものが多いのだろう。

「へー、そういえば、テイムした魔物は?」

「人数までなら良い、だが殺さぬように指示することだと書いてあるな」

『俺も出られるんだナ。嬉しいゼ』

「レムが張り切るのはいいけど、やり過ぎには注意しろよー」

「俺の蛇も到着しそうだ。気になっていたんだよアナコンダ一号」

え、二号が…?

「着いたら、俺のとそのレム、戦わせてみようぜ!」

ダメです!勝負の前から勝負がわかるなんてそんな無体なことできるか!

結局その話は流れた。


「で!バイトだよアズ!」

「な、何だいきなり」

「アークで臨時バイト探してるんだけど、どう?」

アズサがあんぐりと口を開ける。予想外らしい。

これは毎年のことなのだが、夏休みはじめにアークで試験が行われる。もちろん新人入会試験だ。

これが三日間あるのだが、アークに滞在する人も少なくない。そこで身の回りの世話を行えるにんげんが必要になる、ということだ。

そして、何を隠そう、今回の試験官はクローリーとアイル、クーリ、そして狂戦士なのである。

「まあ、執事喫茶でバイトするよりいいかなって」

「アークで……バイト…俺は今心底お前と出会えてよかった」

「何だか嫌な言い方だなー」

嫌味を言うが、嬉しそうなアズサに俺も少し嬉しい。

「掃除と洗濯とベッドメイキング…色々できるぞ」

「それは心強い。なら、腕前を見てお願いするよ!」

そういえばアズサって、ここにくる前は何をしてたんだろうか?

次回はアークの試験の話です。アズサがギンの部屋にお泊りします。

何も起こりませんように。

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