表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルター・イグジスタンス  作者: 夢見る冒険者


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/15

第2話 存在改変という怪しいスキル

どこかワクワクする気持ちを胸に抱きながら僕も壇上に上がる。黒一色に塗られた金属製の板は、横2m、縦3mほどはあるだろう。かなり大きくその存在感に圧倒される。


(いよいよ、自分にもスキルが職業が発生するんだな)


喉をゴクリと鳴らす。今まで自分の才能なんて全く分からなかった。けれどこの世界では違う。自分が進むべき方向が分かる。どのような職業でも工夫次第だろう。ラノベのように応用すれば最強の能力にだって覚醒できるかもしれない。


だけど、少しは願ってしまう。剣神とか、賢者などの最強の職業を。目を瞑り神様に願いながら僕は黒い板に手をついた。


瞬間ひんやりとした感覚が手のひらから伝わる。自分の中に何かが流し込まれたような感覚の後、目の前の板が光、文字が書き込まれていく。


職業:愚者

スキル:存在改変

称号:<英雄に憧れし者>


「……」


その結果は言うまでもなく最悪だった。職業愚者って何だよ。称号、英雄に憧れし者って……そう思うが、スキルに目が吸い寄せられる。存在改変。文字通りの意味なら、対象の物事、人物にすら影響できる最強の能力じゃないだろうか?


例えば敵が攻撃してきてもオートでひしゃげるとか、全自動カウンターとかも可能なのでは!!とテンションが上がる。だから僕は気付いていなかった、周囲の反応を。


当然のように僕がテンションが上がるスキル=周囲から見たら危険なスキル。ということだ。召喚した勇者にこちらの常識は無く下手すれば、自分達ですら危ういと考えたのだろう。僕は場内にいる騎士に一斉に囲まれる。


「……えっ」


流石に浮かれていてもわかる。自分を囲むように騎士が一斉に移動し鎧の擦れる金属音を聞けば気にならないはずがない。彼らが僕を見つめる視線は、緊張と不安、それと使命に満ちた目だった。


王様と勇者様だけは守る。そんな気概を感じる。だからだろる。相手の緊張が僕にも伝播し、軽く息が乱れ始める。


「……あの~」


なんて声を出すが、相手は警戒心が抜けていない。初めて見るスキルなのだろう。勇者や他の人と違って彼らに余裕がない。


ふとチラリと見た王様ですら、どのように対応すれば判断が付いていないのだろう。目を見開いたまま僕の事を見つめ続けている。当然クラスメイト達も緊張した面持ちで僕を見つめる。その視線は、熊やライオンといった脅威となる生物が現れた時の反応に近い。


当然のように体を半歩引き、僕から皆が距離を取る。ただでさえ浮いているクラスメイトに集められた視線に僕は委縮していた。完全に敵視されている。怖い。思わず後ずさりながら俯いて地面を見つめてしまう。


この状況からどうやって対応すればいい?危険じゃないってどう示す。そもそも僕だって、この能力を把握できていないのに……。


思考を巡らせても答えが出るわけでない。これで疑惑が晴れても僕をクラスメイトは受け入れてくれるのか?そう目の前が暗くなった瞬間だった。僕の掌が誰かに握られる。冷たくなっていたのだろう。その手は太陽のように温かくて、どこか震えていた手が止まる。


視界を上げて、見つめた先にいたのは、西宮さんだった。


「ねぇ、存在改変ってさ、髪型とか変えられるの?もし人に有効ならさ、ポニーテールにしてみてよ」


いつもと変わらない、朗らかな笑みを浮かべ、鈴が鳴るように綺麗な声で全体に響き渡るように告げる。その声にみんながポカンと口を開けていた。当の僕ですら意味が分からなかった。どこまでも明るい彼女は今、自分を殺すかもしれない相手の手を握っているのだ。正気じゃない。


誰だってそう思っているはずだ。なのに、彼女は首を傾げて「どうしたの?」とでもといたげな表情だ。僕の方がどうしたの?って問い返したい。だって、あまりにも無防備だから。


「ほら、やってみて」


という彼女の声に戸惑いつつスキルを発動しようとして……


「あの、使い方が分からなくて……」


そう返答することしか出来ない。というかそもそもスキルってどう発動するんだ。その返答に彼女は目を丸くして


「言われてみれば、そうだね!!」


声を弾ませながら、うんうんと大きく頷く。彼女もまたスキルなんて存在を知らない世界から来たのだから当然だ。


「あの、サミール様、スキルはどのように使えるのですか?」

「えっ……あ、あぁ、スキルに意識を集中させれば、おのずと使い方分かる」

「そうなんですね、ありがとうございます!!」


どこか呆けながら答えた騎士団長は、自分の失言に気付く。この状況で何が起こるか分からない。だからこそ制止しようとして……


「ほら、やってみて白石君」


それよりも早く告げられた彼女の声に背を押された僕はスキルを発動しようとする。スキルに意識を集中させて……


「ごめん、出来ないみたいだ」


※対象には発動できません


そう目の前にウィンドウみたいなものが現れて否定される。


「……そっか」


彼女はどこか納得したように、ふっと笑みを零した。どこか安心したように。当然だろう、僕だって、相手の力が分からない中で、触れるのは怖い。もしかしたら、相手を支配できる可能性すらあるスキルなのだから。


それからは、このスキルの範囲がどの程度に及ぼすのか検証したという事で鼠を触ることになった。どことなく汚れた鼠の目は、ギラリと輝きこちらを威嚇しているように感じた。それに少し怯えてしまう自分を情けないと思いつつ、


「これ、本当にやらないと……」


鼠を手に抱えた騎士を恐る恐る見上げると彼から「早くやれ!」と言わんばかりに睨まれる。思わず背筋が伸びた僕は、意図せずして鼠に触る。同様にスキルを発動しようとするも同じように


※対象には発動できません


と表示される。じゃあ、何が対象なんだよ!!と心の中で叫んでしまう。それでも相手の表情を下から窺いつつ答える。


「できないようです」


と。そんな中、宰相と紹介された豪華な服に身を包んだ、どこか風格のある50代くらいの男性がポツリと呟く。


「もしかして、砂を石に変えるとか、形状変化なら出来るんじゃないでしょうか?」


その言葉は適切だった。持ってこられた砂は石になる。同時に自分の中にある何かが失われた感覚があり、少し身体が前のめりになる。


「どうかしたか?」


どこか警戒するような王様の声に驚きつつ、僕はポツリと答える。そんなに神経質にならなくてもよくない?と思いながら。


「いえ、存在改変を発動した瞬間、何かを失うような感覚がありまして……」


僕の方が彼のことを少し警戒するように、身体を半身にしながら答えてしまう。その言葉に王様はどこか安堵する。それはきっと、これまで僕が対象外といってきた言葉が本当だと分かったからだろう。


存在改変というものを使用するのに代償があるということだから。王様はなにやら水晶のようなものを持って来る。それに手をかざせと言われた僕は、抵抗感がありつつも従う。何を言ってもやる流れになるし、そろそろクラスメイトの問い詰めるような視線が痛いから。


王様はその結果に満足そうにする。


「どうやら、存在改変を使うには魔力を使用するらしいな。100➔95との表記がある」


ようやく僕のスキルについて判明したことに安堵した。僕のスキルが人に影響を及ぼせないどころか、鼠と言ったものでも不可能なのだ。ようやく警戒心を解いた王様はその日、王城について案内されるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ