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オルター・イグジスタンス  作者: 夢見る冒険者


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第20話 王の密談

野営地へ戻ると、前回のような重苦しい空気はもうなかった。誰もがどこか興奮した様子で、笑顔を浮かべている。


「なんか、めっちゃ力が湧いてくるわ!」


そんな声があちこちから聞こえ、みんな堂々とした表情をしていた。今回は森にも慣れていたこともあり、前回よりずっと長い時間、探索を続けることができて、みんなも収穫があったのだろう。


以前に僕に負けた面々は、スッと鋭い視線を向けて、次は絶対に倒すという意思を感じる。その中でも以前、あと少しという部分まで接近した彼が僕たちの方に近寄って来た。


「お前たちのチームはどうだった?」


そう尋ねられ、佐近寺が代表して答える。


「そうだな。四体同時まで相手にして、レベル8まで上がったかな」


その言葉に、周囲から驚きの声が漏れる。


「マジか……」

「じゃあ、白石も?」


緊張した様子で僕の方を見つめるが僕は首を振った。言ったらきっと馬鹿にするような視線が来ると分かっている。躊躇する気持ちももちろんある。けれど現実からもう目を逸らしたくなくて素直に答えた。


「いや、僕は成長が遅いみたいで、まだレベル3かな」


そう答えると、彼はどこかほっとしたような表情を浮かべる。そうしてふっと嫌な笑みを浮かべたところで、左近寺がフォローするように口を開いてくれた。


「そういうお前らは、どうなんだ?」


そう聞き返されると、相手の班は少し得意げに胸を張った。


「俺たちはレベル5までいったよ」


僕の方をふっと馬鹿にしたように笑って見つめていた。佐野の方をちらちら見つめている辺り、彼にアピールしているようでもあった。僕はコイツと違って戦闘から逃げ出してはいないとそう言いたげだった。


「言っとくが、白石はきちんとパーティに貢献してくれてる」

「そんなの当たり前だろ」


なんて言いつつ彼は満足したのか自分が聞きたいことだけを言って去っていった。それにどこか視線を鋭くしながら左近寺は見つめてくれた。その気づかいが、庇ってくれる気持ちが嬉しくて。


ついつい僕は笑みを浮かべてしまうのだった。そんな風に温かな気持ちに包まれる中で彼らが返って来た。


僕達よりも整った装備、キラキラと光を反射させる鎧に身を包んだ勇者の姿に僕は思わず圧倒されて唾を飲み込んでしまう。


まるで彼を祝福するように周囲の光が集まっているようだった。視認できる程に魔力が彼を包んでいて、手の届かない場所にまで成長したことを実感させられる。思わず、グッと奥歯を噛みしめて、悔しいなって思ってしまった。


追い越そうと必死になって、頑張って、それでも差が縮まらない現状を突きつけられる。そう俯いた瞬間にトンッと背中を押される。振り返った先にはガレスさんがいて、真剣な表情で頷く。お前は確かに成長していると肯定してくれるように。それに対して僕も頷き返すのだった。


(そうだ。僕にはガレスさんが付いてくれている。今は彼を信じて前に進めばいい)


そんな風に気持ちを固める中で、周囲の人は興奮したように尋ねる。


「それで、相良たちはどのくらいまでレベルが上がったんだ?」

「僕が11で、他のみんは10かな」

「流石相良だな」


自分たちの倍のスピードで強くなっていく彼に、勇者に尊敬の眼差しが向けられる。相良もまた、それを一身に受けつつ堂々としていた。


「それでステータスの方は?」

「オール360越えかな」

「やっぱ、化物だわ」

「人を化物呼ばわりするんじゃない」


なんて軽い調子で、口にした彼の頭にチョップを入れる。そっと添えた程度で痛くもない。それでも受けた彼は「痛てて……」とどこか嬉しそうに笑みを零しながらさすっていた。


一瞬で周囲の雰囲気を変える彼の影響力の強さを実感する。


(僕も相良くらい、頼りにされるようになる)


そう決意を改めてするのだった。西宮さんの隣に立てるようにと。



***



Side王様



「勇者たちの様子はどうだ?」


王の問いに、報告役の騎士は一歩前へ出る。


「はい。おおむね問題ありません。相良殿はすでにレベル11へ到達。パーティー全体の平均レベルも10となっております」

「ほう。かなり順調そうだな」


王は満足そうに頷く。当初の想定ではレベル8くらいまでいけば問題ないと感じていたからこそ、想定以上の成長速度に流石は勇者であると感心していた。


「他の者たちは?」

「ほとんどの者がレベル5を超えております。ただ一人、白石だけは成長が遅いようで、レベル3となります」

「……そうか」


王は小さく頷きながら、どこか白石のことを案じるような表情を浮かべる。彼もまた人類の未来を想う優しい心の持ち主で、召喚した手前不遇な生活をさせていることに少し罪悪感を感じていた。


それでも気にかけないのは、王として特定の誰かを贔屓するような行為をしてはいけないという心構えからくるものだった。それでも、話題に出たついでにと尋ねる。


「あの者のパーティーはどうじゃ?」

「はい。彼の所属するパーティーは非常に順調です。最高レベルは8。勇者パーティーに次ぐ成長速度となっております」

「ほう。もしや白石が皆を引っ張っているのか?」

「いえ。戦闘面ではなく、精神面での貢献が大きいようです」


騎士は報告書へ目を落とした。


「初めて魔物と遭遇した際、誰よりも先に前へ出て仲間を守ろうとしたこと。そして今も誰より努力を続けている姿が、仲間へ大きな影響を与えています」


王はどこか優し気に目元を緩める。それに気づいた騎士がさらに続ける。


「何より、彼に模擬選で負けた者の『白石には負けたくない』『追い越されるわけにはいかない』という意識が、少しずつ迫ってくる彼の存在、周囲の者たちの競争心を刺激しているようです。その結果、全体の成長速度も上がっているように見受けられます」

「……そうか」


王は満足そうに頷いた。古に伝わって来た勇者召喚。その対象だけではなく彼らが一緒に来た理由もあるのかもしれない。そんな風にどこか思う。願わくば、誰一人掛けることがないようにしたいとその想いを抱いてもいた。


王はすぐに意識を切り換え、必要な事を確認する。


「して、次の演習場所は?」

「はい。予定どおり、サハラ迷宮を考えております」

「うむ。それでよい」


迷宮。そこは絶えず魔物が湧き続ける危険地帯。世に現れる魔物の多くは、迷宮からあふれ出たものだとも言われている。


本来であれば、冒険者や騎士たちが定期的に迷宮へ潜り、魔物の数を減らしていた。しかし戦争が始まったことで、その戦力は前線へ回されている。魔王軍の侵攻により、各地で防衛戦が続き、迷宮へ戦力を割く余裕もなくなっていた。


その結果、迷宮内部では魔物が増え続け、このままでは大規模な魔物の氾濫、スタンピードが起こりかねない。だからこそ、勇者たちにはレベルアップを兼ねて迷宮へ向かってもらう必要があった。


本来なら、あと一回ほど森で経験を積ませる予定だった。しかし、彼らの成長は王たちの想定を上回っている。


「彼らを頼んだぞ」


王の言葉に、その場にいた者たちは静かに頷いた。迫り来る魔族との決戦に備え、王国もまた着実に準備を進めていくのだった。

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