第19話 絆を深めて
その後の戦闘も順調にこなしていく。自分達と同じ数の相手にも対処できるようになっていた。最初は浜松さんの奇襲で敵の数を減らし、残りを僕達で殲滅する。僕もまた以前よりも楽に魔物を倒すことが出来るようになった。
迫りくる敵の攻撃を盾で受けながし、その勢いを利用して身体をひねる。腰を回転させ、そのまま剣を振り抜き、一撃で倒す。ようやくガレスさんに教わったことを出来るようになってきたその手ごたえにグッと力強く拳を握った。
「白石、やるじゃん」
僕の動きを見ていた左近寺もどこか嬉しそうに、歯を見せながら笑っている。
「僕自身、盾を使った立ち回りに慣れてきた気がする」
「はたから見ても上手いと思ったよ」
「うん。それこそスキルを持っている人と同じくらいに」
「それは言い過ぎだよ」
どこか照れ臭くなりながら、僕は頭を掻いた。今日の遠征はもう終わりの時間だからこそ、どこか緩慢とした空気が流れている。そんな中で、左近寺はどこか緊張したように、言い淀みながら口を開いた。
「俺たちもさ、これから毎日、一緒に訓練してもいいか?」
視線を彷徨させながらも告げてくれる彼に、驚きつつそれでも心を満たすような温かさを感じる。
「もちろん!」
声が上ずるほどに嬉しくて、ついついにやけてしまった。左近寺の方はその返答にどこか安堵したのか肩の荷を下ろしつつ続ける。
「こうやってパーティを組んで、白石のことを知って思ったんだ。お前は良い奴で、時に覚悟決め手走り出せる。同じパーティーでよかったって」
しみじみと告げる彼は、どこか申し訳なさそうに目を伏せながら続ける。
「だからさ、一緒に痛いと思ったし、もっと知りたいと思った。それと、変に距離を置いてて、ごめん」
頭を下げる彼にそんなことないと僕は首を振る。関わったら佐野達に睨まれる中で誰だって言い出しずらい。自分達も同じように避けられるかもしれない、下手すれば僕のように詰められることもあるだろう。
それに、そんな状況中でも。
「左近寺たちだって、何度か逡巡してくれただろう。僕の方を心配に見つめてくれて、僕はその度に、どこか認めてくれているって嬉しかった。あの辛い訓練を勝手に一緒にやっている気になっていたんだよ。そうして乗り越えてきた部分がある」
西宮さんが気にかけてくれてそれから色んな人の事を知ろうと思えた。そうして見えてきたのは意外にも僕を心配そうに見つめてくれる人の数々だった。ガレスだけじゃない、他の教官も時々僕のことを心配げに見つめてくれていた。
(……そっか。僕も少しずつは誰かのことを思えるようになってきたのかもしれない)
それを気付かせてくれた彼にもまた感謝の気持ちがあった。そんな気持ちが届いたのか、ふっと目元を和らげながら。
「どんだけ良い奴なんだよお前は」
なんて肩を組んでくる。僕よりも力強い彼に、どこか安心感を感じていた。きっと昔の僕なら警戒をしていただろう。殴られるのかなとか、そのまま倒されたりって。けれど今は違う。
左近寺はそんな奴じゃないし、真っ先に敵に突っ込んで行ける勇敢な奴だって知っている。そんな彼が強いという事実に僕は安心感を抱いているんだ。
「そういう左近寺だって、僕のために罪悪感を感じてくれたんでしょ」
「僕のためって言うなよ。俺は白石だから罪悪感を感じたんだよ。お前だから」
真っ直ぐな笑みで告げる彼の顔をまじまじと見つめてしまう。
(……あぁ、そっか。左近寺って結構凛々しかったんだ)
堀の深い顔で、優しく笑う彼に改めて気付かされる。まだまだ、僕自身も相手を知ろうと思わないといけないと。普段と違って見える彼にどこか友人ってこういうものなのかなって温かを感じる。
どこか様子を窺っていた、浜松さんもまた、深く頭を下げた。
「私もゴメン。食事の時に隣になることもあったのに話しかけられなかった。……っていいわけだよね」
「そんなことないよ。それに、あの時は仲良くなる前だし」
「それでもごめん」
僕を首を振りつつ、ほんとに優しい人だなって感じる。彼女はどちらかというと、僕と同じように口に出すことが苦手なのにこうして気持ちを伝えてくれた。
「俺もごめん。何もしなくて」
「平山だって、僕の方を見てくれていただろ」
「気付いていたんだな」
「うん!!」
僕は強く頷いた。嬉しい今の気持ちを発散させるように、いつも以上に大きな声で応えていた。
「それにさ、僕達はこうしてパーティを組んで自然と信頼し合えている今があると思うんだ。背中を安心して任せられるくらいに……そう感じない?」
「そうだな」
平山の言葉に、二人も頷いていた。
「だからさ、それでいいと思うんだ。気持ちを少しずつ重ねていって、相手を理解して。前に進んでいける。それが今だから」
みんなどこか驚いたように目を丸くし、
『そうだな』
と嬉しそうに左近寺と平山が肩を組んでくる。その様子を浜松さんもまた微笑まし気に見つめ、どこか温かい雰囲気に包まれる。三人肩を組んで、どこか楽し気な気持ちで僕達は野営地に戻るのだった。




