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オルター・イグジスタンス  作者: 夢見る冒険者


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第15話 一人の鍛錬

遠征の翌日は休みとなった。表向きの理由は、流石にここ2週間ずっと訓練続きで息抜きも必要だろうという事だった。けれど裏の理由はきっと、昨日初めて対峙した魔物による恐怖を紛らわせるためだろう。


僕自身も未だに恐怖という物はある。最初に倒した時の感触は未だに鮮明に思い出せる。もちろん、僕だって逃げたいという気持ちがないわけではない。ただ、それ以上に——


見つめた視線の先。友人と楽し気に笑いあっている彼女の姿を見て、決意を固める。


(うん。あんな風に楽しそうに笑う彼女が笑顔でいれるように強くなりたい!!)


レベルが上がりずらいからこそ、今の内に強くなりたいのだ。一歩でも少しでも彼女に近付けるように……。


どこか浮足立ったように、


「今日は何処に行こうか?」

「教えてもらったんだけどね、美味しいお菓子を打ってる店があるんだって」


なんて嬉しそうな会話を聞きながら、僕は一人、その場を離れるのだった。



***



既にこの休みの日を何に使うのかは決めていた。いつも通り、訓練場に僕は足を運び、軽い準備運動をしていると声が掛かる。すると、想定していなかった人物から声が掛かる。


「白石くんは出かけなくていいの?」


男性の声ではない、ソプラノ声で良く透き通る、聞いていて心地の良い声色だ。


「に、西宮さん!?」


驚きながら振り返った先に、彼女の姿があって僕は動揺してしまう。だって、当然でしょ、先程まで彼女は友人と話していたのだから。


僕が急に驚いた反応が可笑しかったのか、彼女はくすくすと肩を揺らしながら笑った。やがてその揺れも収まり彼女は再度尋ねてくる。


「それで、白井くんはでかけないの?」


と。それに対して僕は、正直な気持ちを伝える。


「うん。まだまだできないことがたくさんあるし、もっと強くなりたいんだ」


彼女の盾になれるくらいは強くなりたい。その想いだけは変わらないから。何より、あの場でレベルアップできなかったのだから他にできることはやっておきたかった。


彼女はそんな僕の気持ちを汲み取ってくれたのか、優しく笑い。


「もし何か欲しいものがあったら言ってね」


なんて声を掛けてくれる。相変わらずこんな自分にも優しい彼女の対応に癒されつつ。


「うん。欲しいものがあった時はお願いしたいかな」


なんて返すと、彼女はどこか軽い足取り去っていった。彼女の背中が小さくなり見えなくなると急に近くに気配が現れる。


「いいのか?一緒にいかなくて」

「……!? ……いけませんよ、そんなに仲良くないんで」

「でも、彼女がお前の護りたい人なんだろ?」


ニヤニヤして聞いてくる教官の方をジトっとした目で見つめてしまう。分かっているくせになんて意地の悪い顔をしている彼をどこか攻めつつ、それでも真剣な顔に戻って答える。昨日突きつけられた事実を……


「昨日パーティーメンバーの動きを見て理解したんです。スキルの偉大さを……」


左近寺たちは戦闘に必要なスキルを与えられている。剣術適正Bだったり、弱点看破といったものを最初から獲得している。だからこそ、僕と違って戦闘になってもその剣は冴えていた。


「未だに僕は戦闘系のスキル有してません。彼らみたいにスムーズに動けたりしない。なら、立ち止まっている暇はないと思いませんか?」

「ふっふっふ……安心したよ。お前さんがしっかりと最強を目指しているようで」


教官の視線がスッと細くなり、顔も急に真剣なものに変わった。


「お前さんはレベルアップのスピードもどうやら、この世界に住む人間よりも遅いらしい。けれど、重要な心構えという部分は他のやつらよりも出来ている。まぁ、勇者とはまだ比べられないけどな……」


あの後知った事実だが、僕たちのパーティが3レベル上げているのに対して、彼らは既に5レベルにまで達していたそうだ。確実にものが違うと分からされてしまう。


「安心しろ、スキルは自力でも身に付けられる。この俺のようにな」

「もしかしてガレスさんも?」

「あぁ、俺もあまり戦闘向きのスキルを持っていなかった。けど、技術を磨いて今や王国近衛兵にまで上り詰めた。だからかな、お前さんと俺が被るのは」

「僕はまだガレスさんの程、達観できてませんよ」

「あたりめぇだ、俺の32年間をそうそう否定されてたまるか」


なんてどこか優し気に彼は語ってくれる。そうしてひとしきり笑った彼は、僕の方を見つめる。


「それじゃあ、準備はいいか優織ゆうり

「はい!!」


そういって彼に特訓をしてもらう。魔力を使った身体能力の強化の練習。それと根本的に必要となる体術と武器を使っての訓練。戦闘をしたことによって露呈した弱点を徹底的に鍛える。


「ほら、攻撃するときに盾が下がっているぞ!!」

「攻撃の呼び動作が大きい!!それじゃあ、相手に除けてくれって言っているようなもんだ」

「片手で剣を持ってるんだ、リーチは当然短くなる。相手との距離感を正確に把握しろ!!」


盾を剣で弾かれ、よろけた隙を木剣で撃ち抜かれ悶絶したり。疎かになった足元を払われて思いっきり地面とキスをしたり。緩急をつけた攻撃が鳩尾を貫いたりと、呼吸を思わず忘れる事態に陥りながら僕は鍛錬を積んでいく。


当然のように魔力が枯渇した時の想定で戦うなど、鉄を生成しながら、今できることを精一杯行っていった。そうした充実な日を過ごしたからだろう。それはきちんと数値になって返ってくる。全体の数値が約2ほど上昇するという結果で。


夕暮れへと差し掛かりそうになる時間になりようやく今日の訓練は終わりということになる。流石にこれ以上はかなりの疲労感を残すからという事だった。まぁ、魔力を明確に把握する訓練はできるからこの後もやるんだけどね……。


やっぱり夕陽が落ちていく姿は綺麗だな、なんて二人してどこか夕陽を眺めながら訓練を終えるのだった。

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