第6章第1話〜血に染まり〜
私の名前は石川ヒナ、妖怪討伐組織ネオ・プリズムに所属するSランクハンターです。私は先程久しぶりに会えた命の恩人である、渡辺勝斗がネオ・プリズムの本部に帰ってきて広島での報告をしてくれた。バイケル四天王、その中で要注意するべき人物のオメガ、福山城でのベータの討伐作戦、吸血鬼姉妹の姉の死、その妹を引き取る事。その全てを彼は話してくれた。私に対してじゃなく現当主である美香様に向けて話していたのは少し残念だったけれど…。そしてその吸血鬼妹の引き取りの許可が降りた時、勝斗は嬉しそうに立ち上がって大急ぎで玉座の間を去った。その時私は勝斗の刀が戦闘で折れたことも聞いており、刀を渡しに行こうと勝斗のマナを辿って、不本意ながら美香様と追いかけていた時だった。なにやら人だかりができており私はなんだろうと思い、覗いた時だった。
「……え……?」
「どうしたの?……は……?」
私と美香様の視界に飛び込んできたのはうつ伏せになって倒れている勝斗だった。赤いコートの背中に2箇所刺されたであろう刺し傷があり、そこから血を流していた。
「…勝斗!!?」
「嘘…嘘嘘嘘嘘!?」
私は群衆を押し除けてまで勝斗に近寄り、背中の刺し傷ち治癒術をかけて治そうとする。美香様は何処かに電話をかけ、終わるとまた何処かに電話をかけるを4回ほど繰り返し、勝斗を抱えている私の元へ来た。
「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「………ぅ………ぁ………」
「勝斗!私だよ!?美香だよ!!」
「………」
勝斗は気絶したのか目を閉じ、身体から力が抜けた。私は背筋に悪寒が走り胸や手首を触り、脈を確認した。幸いまだある。治癒術をかけ続けなんとか背中の刺し傷を抑え出血を止めることはできたが、勝斗の顔色は非常に不味かった。どうしようと慌てふためいていると、遠くから救急車が来た。
「どいてください!通ります!」
勝斗が担架に乗せられ救急車に乗せられ、私と美香様も同行することとなった。
病院に着くと勝斗は手術室へ運ばれ、私たちは外で待機することになった。
丸一日だろうか、時間が経ち手術室のランプが消え医者が出てきた。
「落ち着いて聞いてください、最善は尽くし一命取り留めました。あとは本人の気力次第です…」
医者はそう言うと勝斗のところへ通してくれた。勝斗は数十本ほどの管に繋がれ、酸素マスクを付けられている。当然意識はない。それを見た美香様がその場に崩れ落ち、私も足取りが覚束ないまま彼に近づく。
「誰にやられたのよ…貴方がやられるなんて変な冗談よね……」
答えない、帰ってくるのは沈黙。お腹の奥が煮えくりかえるほどの怒りが生まれた。
「絶対私が殺すから…死なないでよ…」
私は崩れ落ちて泣いている美香様のお手を取り立ち上がらせる。
「…美香様、お辛いことは心中お察ししております…ですがやった奴がまだ生きていますのでそいつを…」
「えぇ…分かってる…全国のハンターを本部に招集させて会議を開く…そしてそいつを見つけ出して…殺す」
「はい…既に坂田様、広島からの期間準備をしている林達、宇佐山城に在る山本達、北海道の守山達、九州の青山達に連絡を入れました」
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「皆様、今回はお集まりいただき感謝致します。」
美香様が上座に座り、私達は下座に座っている。
「聞いての通り、私達ハンターの最高戦力の1人、渡辺勝斗が街中で背後を刺され、今意識を失っております。今回は勝斗を刺した犯人を見つけ出し…そいつの首を取る」
最後の言葉に丁寧で上品な様子はなくただただ怒りに燃えている圧を感じ取った。当然全員反論するわけもなく平伏して承諾の意を表し顔を表にあげる。
「田村、今村、月見、影山、五十嵐の5名は刺した者の身元、所属、居場所を特定することを命じます。」
美香様は淡々と指示を飛ばす。もしかしたら快楽殺人犯の可能性だってあるため無闇にバイケルの仕業にはしない。指示を出された5名は部屋を退出し準備に取り掛かりに行った。
「続いて…林、山本、青山、佐々木、守山、樋口の6名は身元特定され次第すぐに出撃できるように準備をしておいてください」
次に実働隊が組まれた、となるとあとはそれぞれ持ち場を守るために留守居となるのだろう。
「…本部には石川ヒナ、坂田充の2名に加え小林とアリスを本部に置きます」
本部に置かれる首尾は全員Sランクハンター(アリスは妖怪ではあるがこの後入隊書類を通すつもりなのでハンターとして認定されている)それに坂田様は勝斗の師匠であり最強と云われているレジェンドハンターだ。
「野村、貴方は九州の監視を、田所…入ったばかりで不安でしょうが北海道を頼みました。本州は私達本部で監視します」
「現状、勝斗だけじゃなく山岡も怪我で抜けている状況だ、一人一人しっかりしねえと簡単に崩落する。良いな、油断すんじゃねえ」
坂田様の一言に全員息を呑み頷いた。事実レジェンドハンターがやられている、緊張感が尋常じゃない。
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それから2週間が経った、まだ犯人の痕跡は掴まれていない、ここまでくるとなると流石に困難になってきた。勝斗もまだ起きていない。そんな時、通信機が繋がるノイズ音が聞こえた。
「皆聞こえる?僕だ今村だ、犯人特定完了した。レジスタンス所属のハンター、金山浩二と田中良平の2名、暗殺に長けてる人物でマナを隠すのが途轍もなく上手かった。大体愛知の名古屋辺りにいるよ。そして、その2名なんだけど…もしかしたらバイケルと繋がってる可能性があるかもしれないんだ、実働部隊は気をつけてな」
敵対組織レジスタンス、勝斗や山本や田村に聞いたことがある、確かレジェンドハンターの河原がいる組織だったはず、そしてさらにそのハンターがバイケルと繋がってる可能性があるときた。
「実働部隊、聞こえる?今すぐ愛知へ向かってその屑どもの首を取るのよ」
「了解、すぐに向かう」
通信機越しで林が応答した、暗殺専門なら正面切って戦うのならすぐに終わるだろうと私は考えていた。




