第5章第20話〜急襲かはたまた〜
首を失ったヤマタノオロチの身体が倒れ塵のように消えていく。刀を背の鞘に戻し俺は長槍を納めたアリスに向き直る。
「…癪に触るが礼を言わせてもらう…ありがとな」
「あらまぁ!貴方感謝ということができるのですか!?」
「…こんな野郎ぅ…」
アリスの軽口に対し俺は刀の柄に手をかけ抜くそぶりをする、まぁ実際には抜かないが。
「…で、どーしようか…報告書に「敵の吸血鬼の妹と手を組んで倒しました」…なんて書けるかよ」
そう俺達の組織は戦闘をした際に報告書を書かなければならい義務がある、ちなみに弘はめんどくさいと言い大体簡単な2言で終わる為、本部によく行き事務作業をする遥がよく頭を抱えていた。生前の清岡も弘と同じくちゃんと書かずに提出する奴だった。…まぁ俺も人の事言えないけど。書く内容としては戦闘になった経緯、使用とした技や能力、止めを刺した人を書く必要性がある。
「?別に今はターゲットでは無いので大丈夫なのでは?」
「違えよ…どーせ事務のやつになんでその場で殺さなかったのか問われるんだよ…敵対するつもりがない、なんて理由にならねえよ」
俺がそう四苦八苦考え込んでいると。
「勝斗!……なっ!?そいつは…!」
騒ぎを聞きつけ林が来た、アリスを見た林は十字槍を構え戦闘に入ろうとするのを俺は片手で静止した。
「待って、こいつ今は敵対するつもりはない…それにさっきヤマタノオロチと交戦した際、手助けしてくれたんだ」
「はぁ?何を言ってる?こいつが手助けだぁ?…勝斗、こいつは俺達が狙っているバイケルの幹部の1人だろ、それに…俺達は宇品で一度交戦して雄也をやられてんだよ」
「だが雄也をやったのはこいつじゃない、レジスタンスの丸上だ、でも交戦したとはいえこいつが参戦してくれなかったからもっと被害が出ていたのは事実だ」
「けどよ…はぁ…遥には俺からも一言添える、流石に俺も言えば納得するだろ」
事実こいつがいなければ建物の被害のみならず死傷者も出たかもしれなかったし俺も負傷していたかもしれない。その事を鑑みたか林は十字槍を下ろし煮えきらない表情をしながらも受け入れてくれた。
「………」
アリスは少し驚いたような表情をし、少し考えるように顎に手を添え、すぐに飄々とした表情に戻る。
「…では私はこれにて失礼しますわ、お二人様道中お気をつけてくださいまし?」
そういうとアリスは人混みに紛れて消えていった、アリスを見送った俺達はそれぞれ帰路についた。
広島城に戻った俺は野村さんと影山が出迎えてくれた。影山は少し不安そうな顔をしている。
「…渡辺さんおかえりです、随分遅いですが何かありましたか?」
「…あぁ、野村さん本通りにてヤマタノオロチと交戦した…んでその時敵の幹部の1人アリスと共闘した」
俺の報告を聞いた2人は一瞬目を見開き顔を見合わせ、再び視線を俺に戻した。その時、俺らが入っている襖から声が聞こえた。
「すみません〜そちらに渡辺勝斗さんはいらっしゃいませんか〜?」
なんと先程別れたアリスが姉のアイリスを連れて俺達の部屋前に来ていたのだ。




