第5章第12話〜曲芸師ムース〜
〜時間は少し戻り林視点〜
「よっと…これで40体目か…」
俺は江波から舟入にかけて地形などを知るために偵察に来たが、今のところ最高ランクがA程度の妖怪しかおらず、とりあえず突き殺していた。
「んー…ここまで来るとなると何もないか?」
「そんなことはございませんよぉ」
俺は後ろを振り向くと、そこにはピエロ化粧をし、二つに分かれている赤いマントを羽織った男がいた。
「誰だ?お前」
「おやおや、そこまで警戒しないでくださいよ〜、私は佐藤・ムエルド・ムース、と言いまーす。『曲芸師ムース』と言えば分かりますかね?」
曲芸師…聞いたことがある、だが名前程度しか知らないためどんな奴かは分からない。俺は槍を構える。
「敵ってことでいいのか?」
「えぇ、貴方は私達の「ショー」に招待されたのです!」
よく分からないことを言うムースを見つめながら、距離を少しずつ詰める。間合いに入る。
「はぁ!」
「おっとぉ!早いですねぇ!これはとんでもない開幕だぁ!」
「ごちゃごちゃうるさいな、あんた」
刺突を避けられ、横に薙いだが、奴は身体が柔らかいのか簡単に避けやがった。
「それじゃあ、僕の力を見せてあげるよ!it's show time!」
そう言うとムースを中心に広めの円形の魔法陣のような模様が現れ、それぞれ赤、白、黒、となっている。
「なんだこれ…?」
「ご心配なく、これは僕の能力ですので怖がる必要性はありません、それにこの円は貴方にダメージを与えることはできませんのでご安心ください」
見掛け倒し…というわけではないのは確かだ、だが仕掛けてこないなら、こっちからいくまでだ。俺は槍を構え奴に突っ込む、踏み込んだのは赤色のエリア。
「いくぜぇ!『十字乱…なっ!?」
おかしい、身体に力が入らない…いや違う、身体に力が入らないんじゃない、マナを使うことができない!
「何故だ!」
「おやまぁ、これは無様で滑稽ですね!この赤いエリアに入れば、入っている人はマナを使うことができなくなり、身体強化や技を使うことができなくなるんですよぉ!」
そういうと奴は俺に拳を振りかぶり殴り飛ばした。見た目に反してかなり勢いが強く、筋肉もあるようだ。
「なら、赤のエリアに入らなければ良いだけだ!」
そう言い俺は白のエリアに入り、刺突を突き出そうとする。すると俺の腕が鉛を乗せたかのように重くなり、突き出す速度が遅くなってしまっていた。
「なんでだ!」
「白のエリアは、アクションをするスピードを大幅に下げることができるのですよ。」
「狡い手ばっか使ってんじゃねえぞ!」
「それが僕の戦い方なんで…ねぇ!」
先程と同じようにムースは俺をぶん殴る、間一髪今回は槍を間に挟んだため直撃は免れた。
「なら今度はここだ!」
黒のエリアに入る、すると今度は足が重くなり、なかなか進むことができなかった。
「今度は足の速度を下げるのかよ!」
「ご名答!」
そして、また俺はムースにぶん殴られてしまった。
「まだですよぉ!」
するといきなり目の前にムースが現れ、再び殴られてしまった。
「まだまだぁ!1発で終わるのは『ショー』としてつまらない!」
すると、また奴が目の前に現れぶん殴られてしまった。
「ぐっ!?」(肋骨が1本いかれた!)
「驚きました?そう!これも僕の能力!分身を出すことと、超スピードでの移動!」
曲芸師ムース…これはかなり厄介だ…完全な近接タイプだが、足元の3つのエリアを使って相手を抑制し、離れている敵には分身で攻撃し、怯んだ隙に自身が近づき殴る…。正直相手にしたくないめんどくさい相手だった。




