Episode32:お嬢さまの前に現れたのは?
更新を再開したけど毎日更新できないかもしれませんが
どうぞよろしく(o*。_。)oペコッ
あれから気味が悪いくらいに平穏な日常が続いていた。
小太郎は蒼本人よりAOIの方にご執心な様子で、裕也に至ってはあの日を境にAOIの事に関しては口をつぐんでいる。
なおかつ失態を犯した麗華はあの方の嘆願で失脚しなかったものの、当分こちらに大口を叩けないと思われる。
このことに関してだけは精神的に気分が良い。
しかしヒナタを通してあの方が、
《麗華がいなくなるとあたしの自由が減るの。本人も反省してるし~、それにこのネタでしばらくこき使えるから、あたしにとってはラッキーなことだったよン》
などとうれしそうに報告を入れてきた。
本当にあの方は自分の研究以外のことには興味がないなっ!
とはいえ、ネット通信以外のあの方へのつながりは、すべて麗華が管理しているから仕方ない。
こちらもヒナタがいないと、あの女の嫌味を聞いてからでないと連絡が取れないのだ。
そんなことをひな子は思い出しつつ、今日は愛奈と食堂で昼食をとっていた。
彼女とはバトルフィールド・コンベンション以来、小太郎をはさまなくても話し合える仲になっている。
なにせ、彼がどんなに綺麗な女性が身近にいても、バーチャルマシンのデータに過ぎないAOIに夢中なことに、危機感より安堵したようだ。
『バーチャルアイドルに恋してるようなものだからいいよ。それに相手は男の子だし』
愛奈の中で、何かが吹っ切れて割りきれたみたいだ――。
和食定食の焼き魚をほぐしながら、ひな子は彼女たちの情報も整理しておく。
出来ればこれ以上、何も問題が起こることもなく学園生活を送りたいものだ……。
ひな子が静かにお茶をいただいていると、戦技研のもう一人の愛(自称ラブ)が昼食のトレイを持ってこちらへと歩いてきた。
「ラブ奈ちん、ひなちん~。いっしょにご飯食べよ☆」
ラブはふたりの返答も聞かずに愛奈のとなりにトレイを置いてちょこんと可愛らしく座る。
彼女は見た目だけは子犬のように愛らしい。
とくに害がなさそうなのでひな子が何も言わずにいると、対面の愛奈が苦笑いをしながら手を顔の前に突きだして『ごめんね』のしぐさをしてきたので、にこりと笑顔を送ってみた。
当の本人はいそいそとトレイの上に乗っているピルケースから錠剤を五つほど取り出して口に入れると、ウォーターボトルでそれをのどの奥へと流しこむ。
そしてボディケアと明記されているゼリーチューブをチューチューと吸いだしたのだ。
「あっ、また津川先輩はそんな食事をして!」
「ラブ奈ちん、ダイエットだよダイエット!この愛されボディをキープするためには必要なこ・と・な・の♡」
「それにサプリメントはあくまで補助食品です。ちゃんとした食事をとらないと病気になりますよ」
「お昼だけだからラブ奈ちん、怒っちゃイヤン」
愛奈とラブの会話を他人事のように聞いていたひな子だったが、彼女たちの方から小さな機械音が耳に入ってくるのを感じる。
食堂の雑多な騒音に紛れて、ある独特な音がほんのわずかだが聞こえてくるのだ。
しかし、それはそう簡単には目にすることはない。
巧妙に隠してあるからだ。
(もしかして――。でも考えられなくもない……)
今のところは監視だけにしておこう。
調査は竹谷に任せておけばいい。
こちらからアクションを起こす必要性は、今のところ感じない。
ひな子は力ずくでサンドイッチを力ずくでラブの口に入れようとしている愛奈を見つめながら、自分の食事を黙々と食べるのだった。
放課後は冒険会の活動に参加し、バーチャルマシンに乗せられ、みんなとゲームの中で冒険していると、真紅のマレットドレスに両手サーベル、そして目を覆うマスクを身に付けた縦ロールの金髪な女の子が、踊りながらモンスターを蹴散らしていた。
「うわっ、防具なし!?」
「プレイヤースキルが高そうっスね」
「高レベル者のようだね。……名前は『ヒナ』だってさ」
「ソロプレイヤーみたいやな」
小太郎たちが単騎でモンスターの群れを相手するヒナの戦闘を観戦する。
無駄のない動きと鉄壁の回避力。
仮想ゲームだからこそ可能な動きともいえる。
後輩たちとは別にゲーム内のプレイヤー検索をしていた健人がボソリとつぶやいた。
「ヒナというプレイヤーは、一週間くらい前に現れたらしい。あれだけのプレイヤーなら何かのランキングに入っていてもおかしくないのに名前が載ってないんだ……」
「ということは、中のヤツはチート使いか廃人か?」
「言葉は悪いけど、その可能性があるね」
モンスターを倒した数のランキング、高レベル者ランキングなどは一週間更新なため、ゲームを始めたばかりのプレイヤーはランキングに載らない。
また課金アイテムで経験値を増やすことは出来るが、それでも高レベルとなると寝食を削るくらいにダイブを続けなければならない。
さらに戦闘などをプレイヤーの代わりに自動で行うプログラムを使用した違反行為ではないのか?とも考えられる。
男たちがヒソヒソとそんな話をしていると、プレイヤーネイム『ヒナ』がモンスターを討伐し終えたようで、両手のサーベルを腰の鞘に納めたあとこちらへと近づいてきたのだ。
その様子に驚いて固まっている冒険会のメンバーをよそに、ヒナは魔法使いのひな子の前でとまると、
「今日もごくろうさま♪」
スカートのすそをつまんであいさつをする。
ひな子は”やはり”という顔つきでヒナを見つめた。
「こんなゲームで遊んでいてもよろしいのですか?それとも仮想ゲームの研究でもなさっておいでないのですか?」
「気分転換、みたいな?それに毎日毎日部屋にこもって研究してると気がめいるしぃ~」
「まったく……、あなたというお方は――」
お説教の一つでも言いたい気分だったが、冒険会の男たちが近寄ってきたので保留する。
だが、ヒナは彼らの方を向くとフフンと鼻を鳴らして言うのだ。
「わたしが【コードネーム:AOI】を開発した天才プログラマーのヒナだよ~ん」




