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Episode20:お嬢さまには罪悪感がよく似合う

愛奈との約束で小太郎をバトルフィールド・コンベンションの大会へ連れて行くというミッションは、彼がひな子に折れる結果でなんとかクリアできた。


とりあえず『今度の日曜に一緒にお出掛けしましょう』とひな子が誘い、その時小太郎がすごくいい笑顔になったが、『戦技研の応援に行きましょう』と言うと、ひどく嫌がっているのを前面に押し出した顔つきになった。


『ひな子さん、愛奈に何か言われたのか?』


『小坂部さんには、ぜひ同じ学園の学友として観に来てくださいと誘っていただいただけですわ。それに――小太郎さんも昔はクローンモード競技をなさってたとお聞きしまして、ご一緒していただけないかと思いまして……』


『はぁ……。愛奈のヤツ、そんなことまで話してるのか。まったく、大昔のことをいつまでもネチネチと………』


小太郎は何かにイラついたのか、頭をガシガシとかきだした。

なんとか小太郎のご機嫌を取ろうと、ひな子があれやこれやと励ましの言葉を口にしてみたが、どれもこれも彼の心に響かなかったようだ。


ご機嫌取りが上手くいかなくてひな子がしゅんとうつむき口をすぼめると、小太郎は仕方ないといった表情で、彼女に自分の部屋に来てくれるように言った。

ひな子はそれがどんな意味なのか分からなかったが、それで小太郎が大会に来てくれるかもしれないのならと、ヒナタを連れて彼の部屋へと行ったのだった――。




その後、再びひな子は自己嫌悪に陥ってしまうこととなった。

今はただ、小太郎に申し訳なく、ひな子はベッドの上で枕を抱いてもんどりうっている。


自分のトラウマ的な話をしたあとで、ひな子の顔色の悪さに気づき驚いた小太郎は、とっさに日曜の大会へ行くことを了解し、さらにゲストルームまで彼女を送って来てくれたのだ。


彼が部屋に帰ってからは、ひな子も時代劇の続きを観る気にもなれず、ベッドでひたすら悔やみきれない己の失態に転がり回っていた。


「――あのせいで、小太郎さんがクローンモード競技を引退してしまったの!?」


涙目のひな子のそばにヒナタがちょこんと座る。


《ゴメンネー。うちのお爺様が、河本のお爺様にデータを渡してたみたい》


「あれはバーチャルマシンの性能テストのためって言われてたのに……。AOIのデータと勝負してもふつうの小学生が勝てるワケないでしょ!!?」


《だよねー。あとでうちのお爺様の残り少ない髪の毛をむしっとくから、それで勘弁してね》


「……すいません。それは止めて差し上げてください」


ふうっと小さく吐いて、ひな子はベッドの上で大の字になる。



【コードネーム:AOI】は、バーチャルマシンのクローンモードにて、どれくらいの速度までマシンが対応できるかを図るために記録されたデータである。

なので実際に存在するテスターからデータを収集し、そこからクローンモードに最適化したシンボルNPCみたいなものだ。


そして一般家庭はおろか、学園のような部活に私設のクラブ・道場などといった施設には非公開で、対テロ用の特殊部隊の検証用にはデータの一部を公開している。


小太郎のバーチャルマシンのデータは一番古いプロトタイプのようで、旭川分家の現当主、鳴滝(なるたき)(あおい)の小学生のころのものだと推測される。

ちなみに頭脳派の河平家と武闘派の鳴滝家は、旭川家を支える双璧を成しているのである。


《――蒼くんが、河本のお爺様のお孫さんの心折っちゃったんだねー。でも黒鳥?って男みたいにクローンモードを勘違いしなくて良かったんじゃない?》


「言いたい放題ですわね……。クローンモードは元々実戦訓練用でしたのに、スポーツにも適用できるようにしたのは、どこのどなただったでしょうか?」


《あーはは、うちの企業だね。でもね、売れそうなものは売って利益ださないと。お爺様から研究費もらえなくなっちゃうもん。新しい機材も欲しいし、ね♪》


「はあ……。黒鳥以外にも『自分はテロリストと戦える』と勘違いしてる人はもっといると思いますわよ」


《そーこまではうちのせいじゃないもん!勘違いしてる人が悪いんだもん!!》


ヒナタはニャーニャーと騒ぐだけ騒いだ後、プイとそっぽを向いて猫ちぐらへと戻って行った。



まさか、あれが一般人の手元にあったとは――。


ひな子はうつ伏せになると、シーツをにぎりしめてもがく。

自分のせいじゃないのに、人の心を傷付けるためのものじゃないはずなのに……。


でも間接的に小太郎のクローンモード競技意欲を削いだことには変わりない。


一応、小太郎には愛奈に秘密にしておいてほしいと口止めをされている。

だかしかし、愛奈は小太郎にクローンモード競技に戻ってもらいたいと願っている。


AOIのデータによって、小太郎と愛奈の仲を間接的ではあるが壊してしまったのは自分のせいだとひな子は思う。

なので二人の仲を取り持つ手助けをする義務があると、ひな子は考えたのだ。


(だからといって、なんで、なんで、小太郎さんはあのAOIに勝たないとダメなの!?)


小太郎曰く、コードネーム:AOIに勝てないとクローンモード競技にも戻れない、と言い張る。


(どんだけあのデータにこだわってるのよ!!?)


素人が勝てるはずないじゃない……。



とりあえず明後日の大会を観戦して、小太郎がAOIにこだわらず、クローンモード競技に復帰する気になればいいなぁ。

などと淡い期待を胸に、ひな子はそのまま眠りにつくのでした。

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