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Episode12:お嬢さまは恋敵?

戦技研とのイザコザから二日後、三時限目の体育の授業が終わり、女子更衣室では女子生徒たちが体操服から制服へ着替えていた。

女子生徒たちは、体操服を脱ぎながらガールズトークに花を咲かせている。


「体育の授業ってタルいよねー」


「だねー。それに次はウザいハゲタの授業だよ」


「葉木田だよォ。でもさー体育のあとの数学って、頭に入んないよね」


「わかるー。お腹も空くし、イヤになる~」


などと他愛もない会話をしながら制服に着替えたあとで乱れた髪をブラッシングする。


ひな子も制服に着替えようと自分のロッカーを開くと、二つ折りされた紙が一枚ヒラリと落ちてきた。

拾い上げて紙を開くと、可愛らしいウサギ柄のファンシーな用紙に『昼食後に屋上のサンルームにて待つ』と簡潔に文章が書かれていたのだ。


(――手紙?)


これはなんだろうと首をよこに傾け、ひな子は手紙と思われるファンシーな用紙を凝視する。

何気に果たし状のような気がしてならない。

ということは、差し出し人は()()()()()()()()と推測できた。


(これが吉と出るか凶と出るか、……すべてはわたくしの努力次第ですね)


ひな子は手早くセーラー服に着替えると、スカートのポケットに手紙を仕舞った。




昼休み。

ひな子は食堂に寄らずに、学園内の購買店でシリアルバーとビタミンゼリーとスポーツドリンクを購入してから屋上へと向かった。

やはり屋上に人気はなく、サンルームも人っ子一人いない。


誰もいないことをいいことに、ひな子は買い物袋からシリアルバーを取りだして、大胆にかぶりつきガツガツと食べ始める。

一箱で四個入りのシリアルバーは、三分足らずであっという間に食べつくされた。


次にビタミンゼリーを一気に喉の奥まで流しこみ、空にすると、最後にスポーツドリンクをラッパ飲みする。


「くっはー!一人飯サイコー!!学園でも河本家でも人の目が気になって、いつも行儀よく姿勢も崩さずだったから、何食べても味がしなかったんだよなぁ……」


素の自分に戻りかけているひな子の頭の上に、ひょいっとアシストロボットの黒猫ヒナタが飛び乗ってきた。


《コラコラ、ダメだよ!ちゃんとお行儀よくしなさい!!》


そう言ってヒナタがひな子のおでこをぺしぺしと猫パンチする。

これが地味にイタイ。


ひな子は頭の上のヒナタを膝の上に下ろし、赤くなった自分のおでこをさすった。


「周囲には誰もいませんよ」


《あっまーい!肉眼で確認できない場所から盗撮される可能性があるでしょ!?ネット記事の見出しに『旭川財閥のご令嬢のトンデモ素行』って書かれて、大型掲示板辺りでさらし者にされるじゃない!!?》


「ヒナタは衛星にリンクしてるから、こちらが見えなくても、そちらで不審者の確認は出来るって聞きましたが、今――こちらをのぞき見してる方はいますか?」


《いない、けど……、そんな知識があったなんて――》


「ある程度のことは理解しています。それにこちらが把握できていない時には、ヒナタの警告が入りますし――」


ヒナタの両脇を持ちあげて二本立ちにしながら、ひな子がすました顔で会話をしていると、今まで人の声だったヒナタが人工音声に切り替わった。


《五メートル後方から、小阪部愛奈と認識される人物がこちらへ近づいて来ています》


人工音声での警告が終わると、ヒナタはひな子の腕をするりと抜けて視界から消える。


ひな子は食べ終わったゴミを袋に入れて、備え付けのゴミ箱に投げ捨てた。

そして素早くベンチへ座り身なりを整える。


ちょうどひな子がお嬢さまらしく成り代わったと同時に、斜め後方のサンルームの自動ドアが開いた。


「……意外と早かったのね」


「やはり、あのウサギ柄のファンシーなお手紙は小阪部さん、あなたでしたか」


白々しくも笑顔で『ウサギ柄のファンシーなお手紙』答えるひな子に、愛奈は顔に火が付いたように赤くなる。


つんけんしている印象しかなかった愛奈の動揺している姿を見て、ひな子は思わず『かわいい方ですね』と口に出しそうになったのを抑えて、ほほをヒクつかせながら彼女に問う。


「あなたがわたくしを呼びだしたのは、小太郎さんのことですわね?」


まだ耳まで赤くなっている愛奈は、コクリと頭を縦に振る。


ひな子は彼女は小太郎にとても好意を持っていることは、以前にお礼をしたときに口にした言葉から知っていた。

そして小太郎は愛奈に対して関心が薄いことも知っている。


学園に通うことになって河本邸のゲストルームに住むことになったのは、ひな子自身が望んだことではないが、人の恋路を邪魔するような形になっているのは心苦しい。


――わたくしは小太郎さんのことをな~んとも思ってないわよ。きゃはっ☆


と言ったところで彼女は信じないだろう……。

寧ろ火に油を注ぐようなものだね。


独りツッコミしながらどう言うべきか悩んでいると、冷静になった愛奈がひな子に近づいてきた。


「小太郎をあんたの婿養子にするって話はホント、……なんですか」


「――ええっ!?」


唐突な愛奈のあり得ないセリフに、ひな子が驚愕する。

そんな話はありえないし聞いてない。


「うちに来た旭川家の家政を務めている河平麗華という女性が、両親にそういってたもの……」


こちらを睨みながら愛奈がそう口にする。


(ちょっ、麗華さん!なんてホラ吹いてんですか!!)


ひな子の心の中で、麗華を何度も平手打ちして溜飲を下げようとする。


そんなこと言われたら、誰だって敵意を感じるよ!

こちらも悪意しか感じないよ!!


怒りで身体を震わせていたが、それでも笑顔を作ってひな子は立ち上がり、愛奈に向き合うのだった。

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