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Episode09:お嬢さまには理解できない

日も陰りはじめた夕暮れ。


最終下校時刻10分前の予鈴が、校舎中に鳴り響く。

あらかじめ会長が設定していた予鈴の時間に合わせて画面にアラートが表示される。


冒険会のメンバーは冒険を途中のシードを記録し、帰り支度を整えてから部活棟から出て来ました。

そのとき、ちょうど運動部のユニフォームを身に付けていた集団と出くわしたのだった。


「な~んだ、ヌルゲーマーかよ」


「キモオタだ」


クスクスとあざ笑う運動部員たち。

小太郎たちは慣れているのか、彼らたちと反対方向に移動しようとする。

だが、彼らは子供のように通せんぼをしてきたのだ。


「ほうら、モンスターだぞ~♪通して欲しけりゃ倒してみろよ。ほらほら~」


やや体格の良い男子部員が、いかにも殴ってみろと真澄の方へ顔をよせる。

そこへすかさずカオルが割り込んできた。


「もうガッコも終わんで、あんたらも早よ着替えんとまずいんちゃうか?」


「オレっちらはお前らみたいな弱小同好会と違って、ちょっと遅くなっても先生らは何も言ってこないからいいんだぜw」


男子部員は額に手をあてて、キャハハーッと大笑いする。

心底ウンザリした顔のカオルは、左手で男子部員を押しのけるように道を作ろうとした。


「まあええわ。ワイら帰るからそこどけや」


「ああん?そんな口きいていいと思ってんのかァ~」


カオルと男子部員がにらみ合っていると、まあまあと会長の健人が仲裁にはいる。


「学園から便宜を図ってもらっているといえども、部活中に問題を起こせば先生方からもそっぽを向かれますよ」


「そうそう、そうっスよ。みんな仲良く、それが一番大事っス」


健人の後ろから後輩の裕也もふるえながら小声でそういうと、運動部員たちはプフフとバカにしたように口元をゆるませた。


「ちょーっと弱小同好会ともめたところで、センセーらはみ~んなウチらの味方に決まってるじゃん♪」


「お前らみたいなオタクのお遊びと違って、こっちは学園や他校からも認められてる誇らしい部活なんだよ。何が『仲良く』だよ、バッカじゃねぇの~」


ゲラゲラとあざ笑う運動部員たち。

冒険会のメンバーはみんな、彼らからバカにされようとも強く反抗したりはしない。

何かをあきらめているような、――そんな印象をひな子は受けた。


「真澄、どうする?」


「このままだと、簡単には開放してはくれないでしょうね」


小太郎と真澄がヒソヒソと話をする。


前方にカオルと健人。

その後ろに裕也。

またその後ろに小太郎と真澄。

さらに後ろにひな子立ち往生していた。


運動部員たちは後方にいるひな子には気づいておらず、仮想冒険同好会の五人だけしかいないと思っている様子だ。


かなりまずい状況になりつつあると、真澄と小太郎は顔を合わせて思案する。


「戦闘技術研究部のリーダーの田原先輩は、ここにはいないようですね」


「腰巾着の女と愛奈の姿もないな。――ホントあいつら、なんでオレたちのことを目の敵にするんだろ?」


「バーチャルマシンを使う仲間といえども、あちら側は国に貢献する素養を持った活動をしていますから……」


はあっとため息をつく真澄の言葉を聴いてか、後ろにいたひな子がキョトンとした顔つきをした。


「バーチャルマシンを使う部?国に貢献する素養を持った活動??――それは一体何のことでしょう?」


「オレらはバーチャルマシンの()()()()()()を主体とした【仮想冒険同好会】、さっきカオルが言っていたバーチャルマシンの()()()()()()()を主体としているのが向こうの【戦闘技術研究部】通称は戦技研」


「あちらは『テロから身を守り、また周りをも守ること』を目標とした活動をしています。そして全国大会でも優秀な成績を残している立派な部なんですよ」


「まあ、それがどうして人様に迷惑をおかけになるのでしょう……」


小太郎は同じバーチャルマシンを使用し、個人本来の力、技能を扱う部である説明し、真澄は対テロのために活動している素晴らしい部だというのだ。


人に役立つための部活動なのに、何故このように人の迷惑を顧みずに行動が出来るのか、ひな子には理解できなかった。

そうこうしているうちに、前方から鈍い音が鳴り、カオルが後ろへ飛ばされてきた。


「八塔寺くん!!」


「カオルセンパイ!?」


健人と裕也が声を上げる。

とっさに小太郎が倒れてきたカオルを抱きとめた。


戦技研の男子部員から殴られたのか、カオルのほほは赤く腫れており、口の端から血がにじんでいた。

小太郎は彼を地面に下ろし、自ら先頭へと向かっていった。

ひな子はスカートのポケットからレースのハンカチを取りだして、カオルの口元を抑える。


「……ヒドイ」


ぽつりとひな子が悲しげにそう口にする。

するとカオルは二カッと笑うのだ。


「これでええんや。ほかのヤツだと、ほんまに大問題なる……」


「え?」


彼の言葉にひな子は意味が分からず不思議そうな顔をしていた横で、真澄は気まずい表情をし目を伏せる。

しかしカオルが戦技研の部員に暴力行為を受けたという事実は変わらない。


抗戦的ではなかった会長の健人と小太郎に裕也が、前に出て戦技研の部員たちに抗議をしはじめたのだ。


「君たち、こんなことをしてタダで済むと思ってるのですか!?とくに戦闘技術研究部はその特性上、部員全員に厳しい規律が課せられていると聴きます。他の生徒に暴力を振るう行いは、退部もしくは退学を言い渡されてもおかしくないことですよ」


健人が毅然とした態度で、両手を大きく広げて戦技研の部員たちに真っ向から抗議の言葉を述べた。

すかさず小太郎もこんな馬鹿げたことはやめて、道をあけるように要求する。

裕也は二人の後ろから腕を組んで、うんうんとうなずいていた。

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