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Episode08:お嬢さまは戦いがキライ?

【ナイトネバードーン】は、最近新しくサービスが開始されたオンラインゲームだという。


ファンタジー世界を模した仮想空間で、プレイヤーは冒険者となりクエストをくり返したり、装備品やアイテムを作ったり、闘技場で他のプレイヤーと戦闘が行える自由度が高いゲームである。


プレイする時のアバターも自由度が高く、本人のデーターを元にする事も出来れば、性別を逆転させたり、有名人を模倣する事もできる。


ナイトネバードーンは戦闘クエストを攻略することで、アイテムや賞金がもらえるゲームで、シードを変える事でマップやクエスト内容も変わり、シードを共有する事で複数で同じ世界を遊べるという飽きさせないでハマると時間を忘れてしまうローグライクゲームだと小太郎は言った――。


仮想冒険同好会は色々なバーチャル・アドベンチャーゲームを楽しむことを目的とした活動ということで、個人で所有するバーチャルマシンよりはるかに性能が良いものを使用しているらしい。




冒険会の五人は最初は質素な服だけを着ていて武器もなく、町のギルドへ行って簡単なクエストを受けた。

最初は手軽なお使いクエ。

次に町の外の弱いモンスターを狩り、クエストの報酬が貯まったとことで安い武器や防具をそろえる。


小太郎は重装備に盾と剣。

みんなの先頭に立ってモンスターを引きつける盾役。

攻撃力より防御力の方が高いらしい。


真澄は軽装備に弓。

どうやら敵に近づかなくて済む遠距離の方が安心するみたい……。

命中力の補助アイテムを付けたようで、装備なしより弓の精度が上がっている。


カオルは軽装備に双剣。

トリッキーな動きは得意なようだ。

しかし〔AGI〕を150ポイントに全振りして敏捷性を高めても、完全回避は出来ないと嘆いているようだ。


会長の健人は重装備で両手斧。

身体をグルグルと回転させながらモンスターを楽しそうになぎ倒していく。


後輩の裕也は軽装備に短剣。

わりと動きが素早くモンスターの急所を一撃で貫いていた。



「防具と武器が手に入ったら、クエもサクサク進むっスね」


裕也が得意気な顔をすると、ドロップアイテムを拾っていた小太郎があきれた声を出す。


「高瀬、まだまだ序盤だぞ。次のクエストはもう少しグレードの高いヤツを選ぶから注意しろよ」


「へいへ~い。けどさぁ、河本センパイってノリ悪くね?」


ブーブーと不機嫌な顔で裕也が口をすぼめる。

移動のために両手斧を背中に背負った健人が、天使のようなほほ笑みを浮かべた。


「それじゃあ、次は高瀬くんが河本くんの盾を借りて、先頭に立ってもらいましょうか?」


「それええなぁ。裕也ちゃん、回避型盾ってかっこええで~。ついでにダメージレベル5に上げとく?」


「ちょっ、三室会長と八塔寺センパイ、それはヒドイっス!お断りっス!!」


焦り顔の裕也が、両手と顔を思いっきりブンブン振って必死に拒否の構えをとる。

ドロップアイテムをバックパックにまとめていた真澄も青ざめた表情で震えた。


「やめて、ボク痛みに弱いからダメージ3が限界……」


「せやったなぁ、真澄ちゃんは痛いのキライやもんな。悪い悪い」


「カオル、嫌味な言い方だね。でも本音で言えば、ボクはノーダメージでやりたいよ」


「真澄はそれでよくても、オレにとっては面白味に欠けるんだよなぁ」


半泣きの真澄に片手て謝るカオル。

あごに手を添えて考え込む小太郎。


仮想ゲームでは、実際の肉体へのダメージはないが、脳への負担にならない程度のダメージを感じるレベル数値が設定できる。

ちょっとしたリアリティを求めるプレイヤーは、最大値の10まで上げるらしい……。


戦闘が終わったあと始末をしながら、こうしてゲームの進行の話をすることが多い。


「プレイヤー同士が適度にリアルな戦闘を楽しむのが仮想冒険の楽しみです。ダメージは個人での感覚差があるのであまり上げないでおきましょう」


「「「「了解」」」」


健人が話をまとめると、みんなそれぞれの荷物を持って町へと移動する。

次はもっと手ごたえのある戦いがしたい。


手に汗握る冒険――。


心ときめくものが、そこにはあった。




夕日が差し込む仮想冒険同好会の部屋の中。

ひな子は設置されている観戦用のディスプレイの向こうで、モンスターと戦う五人を眺めながらため息をつく。


「なぜ、人は戦うことが好きなのでしょう……」


不思議な顔つきをしているひな子の肩に、呼んでもいないアシストロボットの黒猫ヒナタがひょいっと飛び乗ってきた。


《――戦うのは、キライ?》


ヒナタはそう言ってひな子にすり寄る。


「好き嫌いでいえば、嫌いです」


《ははは、正直だね》


そう言うと、ヒナタはひな子の顔にしっぽでフリフリとなでた。

人工の毛が肌に当たると、滑らかなフサフサ感がこそばゆい。

笑うのをこらえながらヒナタの身体をゆっくりなでる。


「あの画面の向こうの人たちは戦いに何を求めているのか、……お解りですか?」


仮想(バーチャル)冒険(アドベンチャー)は娯楽だよ、娯楽。ちょっと君は深刻にとらえすぎ!常闇(ナイトネバードーン)はプレイヤーがみんなで楽しく遊べぶR()P()G()()()()だよ》


「はぁ……。要は仮想ゲーム?ですか??――すいません。その手のことにはどうも疎くて………」


《そんなことで大丈夫なの?》


()()()()生活をおくるだけなら、今のままでも支障はありません」


ふだんの丁寧な言葉遣いから少し砕けたしゃべり方をするひな子。

ヒナタは《そう》とだけ言うと、再びひな子の視覚から消えるのだった。


(心配をかけるのはよくありませんね。もう少しふつうの学生のように振舞う努力をしないと――)


ひな子を頭を左右に振ると、五人の冒険者の活躍を複雑な笑みを浮かべて見つめるのでした。

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