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RAIN~レイン  作者: 潜水艦7号
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11/12

混沌は終結し、そこには罪だけが残る

『それから先』に起こった事についてだが。

正直、あまり正確に覚えてはいない。


唯、一言で語るなら『阿鼻叫喚』とでも言うべき惨状だったと思う。


(アクセル)』の腰には拳銃があった。

『私』はそれを使うことに、何の躊躇いも無かった。何しろ、ハンナの近くに居る『人の形をした悪鬼ども』を蹴散らす事しか念頭になかったのだ。


多分、弾倉に残っていた弾丸は全て使い切ったと思う。‥‥何処へ目掛けて、何を撃ったのかも定かではないが‥‥


そして弾丸を使い切ったところで、『(アクセル)』は村人の槍によって息絶えることになったのだろう。後で、血だらけになったアクセルの死体を見たような気がする。


とにかく、そこから先はひたすらに『反撃』と『乗り移り』の繰り返しだったとするのが妥当だろう。


誰に、どの順序で乗り移ったのか。その辺りは、もう何も覚えてはいない。

そのうち、パニックが頂点に達した村人同士が勝手に殺し合いを始めた。


『私』の乗り移りがあまりに頻繁なので、もう『誰』が魔女なのか分からなくなったのだ。

こうなったら、いちいち確認している暇などない。信じられるのは自分だけなのだから。



どれだけの時間が経ったのか。


『私』が気付いた時。

その眼前には、激しい雨に打たれ続ける死体の荒野が累々と広がっていた。


生臭い血潮の臭いが漂っている。

その様は、まるで凄惨な戦場のようでもあり‥‥



「‥‥。」


辺りを見渡すが。

誰ひとりとして、動いている者は居なかった。


「う‥‥」

全身に痛みが走る。


特に、手首と足首に強い痛みがある。

フラフラになりながも『私』は立ち上がった。


おや‥‥?

違和感を感じる。


何かが変だ。


違和感の正体はすぐに分かった。そう‥‥『視線が低い』のだ。

かつて感じた事が無いほどに、『視線が低い』?


『私』は、今‥‥『誰』なんだ‥‥?


辛うじて燃え燻っている松明を手にとり、水たまりを照らしてみる。

そして『私』は、その水たまりを覗き込んだ。


その水面(みなも)に映ったのは。


「‥‥これは‥‥」

『私』は、ハンナになっていた。



ハッキリとした記憶はない。

だが、恐らくはどうにかして村人達の注意をハンナから『逸らす』事には成功したのだろう。

だが、その代償として『私』は死を覚悟しなくてはならないほどの重傷を負ったのだ。


そして。

ハンナを十字架から降ろした後、ほぼ無意識のうちにハンナへ『私』を移したのだ‥‥


雨は尚、天から『私』の身体を叩きのめしている。


 『これ』をどう説明すれば良い?

 この忌まわしき惨劇を。


いったい、何が『悪かった』のだ?

何処で狂ってしまったのだ?

村人達は本当に殺してよいほどの『悪魔』だったのか?


何が‥‥何が‥‥?

頭の中で考えが堂々巡りを続ける。


頬を伝う冷たい『水』が、雨なのか、それとも涙なのか。『私』には分からなかった。



冷たい雨が容赦なく『(ハンナ)』の体温を奪う。

身体が芯から冷えてくるのが分かる。

髪の毛が雨を吸って重くなっているのが感じられる。


『私』は、泥だらけになった自分の小さな掌をじっとみつめる。



神よ‥‥あなたは何をお望みなのですか?


どうして、この無垢な子羊達を救って下さらなかったのですか?

何故、尊い生命が無残に消え去るのをお止め頂けなかったのですか?


それとも、人の世に起こる事の全ては、人の手で始末せよと仰せなのですか?


神よ。

だとすればそれは、あまりにも無慈悲ではありますまいか!

彼らは皆、あなたの愛と救いを信じていたと言うのに‥‥


或いは神よ、あなたは『私』に此の結果の全てを受け止めよと言われるのか。


「無理だ‥‥」

私は地面に座り込み、そのまま両手をついた。


そしてゆっくりと首を振る。

「もう‥‥無理だ‥‥『私』の罪はあまりに重い‥‥」


ああ、分かっているとも。

その『罪状』は『私』ひとりの生命を捧げてすら贖う事が出来ないほどに重い。

これほどの悲劇を経て、『私』はやっと『魔女である事そのものが罪である』という意味を理解した。


だが。

『私』はこの先、どうすれば良いのだ?

この『私』に何が出来るというのだ?


どうすれば『これほどの罪』を償う事が出来る?

何を以って代えるのなら、『私』の魂は赦しを得る事が出来るというのか!


頼む‥‥誰か教えてくれ‥‥

どうか‥‥どうか‥‥!

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