3 デイジー嬢の憂鬱
体調が良くなるとデイジー、つまり私の日常生活が始まった。以前の記憶がうっすらあるので大抵の事は不自由はしない。
まずは生活に慣れてから、樹先生を探す事にした。私だって転生したのだ、いる可能性はある!ゼロでは無い!ならば探す選択しか無い。
ただ、大問題があった。デイジーには幼馴染のレオ・ウェリント伯爵子息という婚約者がいるのだ。そしてその婚約者はミリアという男爵令嬢と浮気中。しかもミリアはどうやら性悪のようだ。
丁度良いからさっさと婚約解消したいが、デイジーが幼馴染のレオを大切にしていた気持ちが残っていた。大切な幼馴染が変わっていく様子に心を痛めていたようだ。
これは放っておけない。さてどうしようか。
朝の支度はいつも侍女のマリーが手伝ってくれる。
改めて自分の姿を鏡で見ると、美しい銀色の長い髪にブルーの瞳、小ぶりの顔に女性としては長身で手足の長いすらっとした体躯をしている。
マリーが髪をとかしながら今日の予定を伝えてくれる。マリーは同じ年の明るい女性で、他家の侍女との交流が多いのか以前から王都の事は情報通だった。
勿論、レオの浮気も知っている。これまでもデイジーの為に随分怒ってくれていた。
「今日の王宮主催のお茶会にはミリアも来るのよね。どうしてやろうかしら。」
私の好戦的な言葉に驚いたマリーが私の手を掴んだ。
「デイジーお嬢様!やっと対峙する決心がついたのですか!お嬢様がお優しいからといって、いつまでも、心無い言葉を我慢してばかりではいけないとマリーは思います」
そう言ってマリーは最近のレオとミリアの様子を教えてくれた。2人は王宮図書館の人気のない時間を狙って会っているらしい。
デイジーの記憶ではミリアに他の人に分からないような嫌味を言われてきた。レオへの想いが強いからといって、そんな嫌味をいう人の性格が良いとは思えない。
しかも噂では何人もの婚約を破談にしてきたという。
「マリー。ミリアについて情報を集めてくれるかしら。最近のレオの様子もお願い。」
マリーは「得意分野です。お任せを。」とかしこまって言い、いつもの様に素敵な髪型に仕上げてくれた。
「あと、一年前位に私の様な高熱を出した男性を知らないかしら?」
もし樹先生が転生してるとすればその可能性はある。少しでも手掛かりが欲しい。
「高熱ですか?男性で…それなら王宮医師のセオドア様に聞いてみては如何です?きっとお詳しいでしょう。」
セオドア医師とは意識が戻った時に診てくれた、あの丸眼鏡の医者の事だった。なるほど、樹先生を探すにはまずはそこからと決意を新たにした。




