10 舞踏会
とうとう舞踏会当日になってしまった。
樹先生を探す事も頓挫している。直ぐにでも探したいが、まずは今日を終わらせよう。
これまで、ミリア嬢とは廊下ですれ違ったが、睨まれる位で特になにもされなかった。
クロエ王女によると賭博の件は水面下で進んでいるらしい。
幼馴染のレオは事件が公になるまで自主的に謹慎している。
「デイジーお嬢様、何故ルーク殿下からのドレスのプレゼント申し込みを断ったんですか。きっと見たことないような素晴らしいドレスでしたよ?」
侍女マリーがドレスを着付けてくれながらボヤく。
「ドレスなんか頂けないわよ。考えてもみてよ、ルーク殿下よ?…恐ろしい。」
「だいたいお立場的にも、本来はお断り出来ない筈ですのに、お嬢様のお断りを受け入れてくれるなんてルーク殿下は本当にお優しいですわ。」
マリーの愚痴は止まらない。
憧れの王子様だが、実際にエスコートされるとなると恐怖が勝る。分不相応過ぎるのだ。前世でいうと人気絶頂のアイドルに指名されてファンの前で踊るような気分かな。
とりあえず、ダンスはデイジーの記憶から練習もしたし大丈夫だ。作法も同じ。支度はマリー達が完璧にしてくれる。
緊張しながら舞踏会場に着くと、ルーク殿下がエスコートしに現れた。何とも美しい姿だ。
殿下にエスコートされながらホールに入ると舞踏会開始の音楽が鳴り始めた。
途中、ミリア嬢がこちらへ駆け寄る姿が見えたが、ルーク殿下は一瞥さえしなかった。
「デイジー嬢、私とダンスを踊って頂けますか。」
美しい王子様の誘いに、意を決してハイと頷いた。
周囲から感嘆の声が漏れる中、王子様とダンスを踊った。この身体ではすぐ息切れするような事がない。なんと素晴らしい。
二曲目には緊張も解けダンスを楽しめた。ルーク殿下の美しい眼差しは目眩がしそうだったが、私に合わせてくれる軽やかなステップが心地よかった。
二曲目を踊ったところで休息しましょうと言われホール脇へ進んだ。ルーク殿下は侍従に話しかけられ足を止めた。
1人で壁に向かうとホール係にグラスを差し出された。
一口のんでホッと息を吐くと、遠くにセオドア先生を見つけた。舞踏会に先生?
いつもの癖毛に少しくらい整えたら良いのにと可笑しくなった途端、手からグラスが落ちた。
急に息苦しくなり膝が崩れる。
悲鳴が遠くに聞こえた。




