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我が名は……ま、いいか

「これでも男性人格で設定されとるでな。それともお主は、大きなおっぺぇはキライか?」

「大好きだ! て、そうじゃなくてよ。俺との、この差は何なんだよ!?」

「まあ、事務的にスキルポイント割り振られてさっさと転移処理されたって、そんなとこではないか? 女神さまもストレス発散兼ねとった様子だったし、結構忙しい業界なのかもな」

「納得いかん!」

「そうは言っても現実はこれもんだからな。受け入れるが吉と言うものでは無いかな?」

「そりゃお前はいいよ。チートたっぷり貰ってるしな!」

「例えそうでも、車と言うものは人が操縦してナンボよ。魔力を集中すれば自動操縦も出来ん事は無いらしいが、全魔力を放出しても精々十数秒ていどだとの事での。雷撃や炎撃の方が楽って有り様でなぁ」

「そうなんか?」

「でな、お主。お主には正式にワイのオーナーになってほしいのだ。女神さまの話によると、ここの文明水準は地球で言えば中世から近世の辺りでな、長距離移動でも徒歩か馬車が主流らしいのだ。当然、自動車の扱い方を知る者など一人もおらん」

「定番だな~」

「で、安心して任せるには、お主が一番適任――と言うか、お主しか()らんと言うワケでな」

「……もしかして、この転移はお前が主役で俺は脇役って事かぁ?」

「さっきも言ったであろ? 車は人を乗せ、人の望むものを乗せて運ぶのが正道。それが我ら自動車の矜持ってもんでな。主筋はあくまで人間様よ」

「う~ん、そうだなぁ。俺もこんな右も左もわからないところを徒歩でとぼとぼってのも考えものだしな~。仕方ないのか」

「とりあえずオーナー登録してくれ。そうすりゃこの車は、お主にしか起動できなくなるでな。いわゆる主従契約だ」

「そう言われるとなんだか仰々しいけど……まあ、わかった。モニターに直接入力でいいのかな?」

「うむ。ここに名前を打ち込んでくれ」


 モニターの画面がオーナー登録画面に切り替わった。

 勉はガイダンスに沿って名前・年齢・性別等を入力。


「次はワイに名を付けてくれ。それで登録は完了だ」

「名前? いや、もう車名が有るだろ? 確かL……」

「それは商品名だ。ワイ専用の名を頂くことで主従契約が成立して魔法等、相互に連携する事が出来るようになるそうだ」

「名前かぁ。いや、喋る車の名前なんて……あ、なんか昔、AI搭載のスポーツカーが準主役の海外ドラマがあったそうだな。動画で見たぞ」

「む、もしやナ〇トライダーか? 設計やエンジニアが話してたぞ。人車一体化の完成形の一つだな。ワイの世代では無理かと諦めとったが」

「ナ〇ト2000とか言ったなアレ。同じじゃ芸も無いし、でもお前も興味ありそうだからちょっと(あやか)って……」

「肖って?」

「ライト。ライトでどうかな?」

「ライト? 新世界の神でも目指しそうな名前だな」

「そういう知識も有るのか?」

「うん、良い。良いな! ではライトで入力してくれ」

「ライト、と。よし終了」


 ヴォオォォォン


 入力終了と同時に勉は、軽い光と鳴動らしき振動を感じた。魔法絡みの契約ゆえであろうか?


「よし(あるじ)。早速だが、この森から出てみないか?」


 呼び方が”お主“から”(あるじ)“に変わった。ユーザー登録のせいだろうか? 字面としてはあまり変わらんが。


「森を出るのか? 周辺の情報は授かっているのか?」

「大雑把なマップは有るが街道や町村のデータは無いのだ。で、走りながら前後左右のカメラで情報を収集してアップデートしたいと思ってな」

「なるほどね~。わかった、取り敢えず偵察がてら進んでみるか。早晩、水や食料の確保は必要になるからな。と、そういやライト。おまえ燃料は? ハイブリッドだからガソリンは必要なんじゃ?」

「それは気にするな。まあ、その辺りも走行中においおい話そう。じゃ、主よ。出発進行と行こうか?」

「了解だ」

「安全運転で頼むぞ?」

 勉はシフトをDレンジに入れ、アクセルをゆっくり踏み込んだ。




      ♦




 いくら悪路にも強いSUVとは言えども過信は禁物である。こちらの世界では電話一本で駆けつけてくれるロードサービスなど望むべくもない。突然、道路に穴が現れたり路肩が崩れたりでスタックしてしまったらお手上げだ。

 しかもライトは、ハードなクロスカントリー仕様ではない。基本は街乗りだ。

 サバイバルゲーム仲間でオフロードに蘊蓄のある者から聞いた話も思い起こしながら、勉は時速20~30km程度の速度で慎重に森の街道を進んだ。


「てことは、ガソリンは不要になったってワケか?」

「おうよ。今のワイは魔素を燃料として稼働しておるのよ」

「魔素を燃やすのか? それとも魔素をガソリンに変換しているとか?」

「と言うか、回転運動に直接変換――と言った方が近いかな、と女神さまは言っとったがの。詳しい原理とかはワイにも良く分からんし、女神さまも怪しかったの~」

「この速度だと駆動は主にモーターだよな? もしかして電気も魔素?」

「おう。『魔素仕様スーパーオルタネータ搭載!』つーて女神さまがチューニングしてくれてなぁ。バッテリーや燃料タンクは圧縮魔素の収納つーかな? 雷撃や炎撃はその魔素を放出する事で機械のワイでも魔法攻撃が出来るっつーワケよ」

「じゃあ魔法世界のここでは燃料補給も要らないってことか? EV以上にエコだし経済的だな」

「とは言っても、調子こいて放出しすぎると魔素切れを起こしてシステムの維持すら出来なくなる、との事でよ。バッテリー切れ、ガス欠と同じ状態だな。その後はEV宜しく、魔素充填には時間が掛かる」

「EVのネックは重量と廃棄を含めたバッテリー問題、そして充電時間だからなぁ。その間は無防備か」

「だから人間のパートナーが必要、と言う訳でな」


 などとお互いの現状を語り合う二人(?)。

 だが語るにつれ、同じ異世界に飛ばされた者同士と言うのに自分とライトとの差に、ふつふつとムカつきが湧き上がり気味の勉である。

 片や隠れ巨乳の女神が付きっ切り・至れり尽くせりで説明・指導、チート能力付与。

 片や説明も無しにいきなり異世界放逐。おまけに特典能力は偏りなんて言葉も生温いほど極端な割り振り。

 

「となると、ワイと主とのツーマンセルを前提にここへ送り込んだ、と言う解釈も有り得るかの?」

「とは言っても、俺への恩恵無さすぎだろう。せめて説明くらいは……そういやライト?」

「なにかな?」

「お前、女神さまに何か言われたか? この世界に転生する理由とか目的とか? ラノベやマンガだと魔王を倒してほしいとか定番だけど」



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