表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

健康男子は訴えたい

「最初に逃げ出した盗賊も、皇国に逃げていればとっくに着いておるじゃろな。襲撃失敗の言い訳にワイらの事は誇張されとる可能性もある」

「入国すると、しばらくは広大な農地が広がっています。峡谷もありますし、そういう場所だと目撃者も少ないでしょう」

「やるならそこか。逃亡した盗賊が吹いてりゃ、頭数は前回以上に集められているかもな」

「出し惜しみは無しじゃな。何としてもキッチリと納品、かましてやらんとの。主も嬢ちゃんも今夜はしっかり体を休めといてくれ。夜間の不寝番はワイが勤めるでな」

「うん、そうさせてもらうよ」

「頼もしいですわライトさん。でも、驚きました。まさかツトムさんとライトさんが異世界からの転移者だったなんて!」


 ここに至り、勉とライトは自身の素性をニーナに話す事にした。

 今現在、帝国や皇国はもちろんのこと、風に聞く遠い外国の噂を含めてもライトのような意思疎通ができる車輌の話など、冗談でも存在しない(まあ自我を持つ車など、日本でも存在しないが)。

 この先、ライトのメンテが期待できる回復士は必須であり、当面はニーナにそれを依頼したいと意見が一致した二人は、思い切って真実を話す事にしたのだった。

 最初こそ当惑した彼女であったが、細かい言動の齟齬や、何よりこの世界に於いても並外れたライトの攻撃魔法、加えて勉の駆使する見た事も無い得物(エアガン)を見るにつけ、これはもう信じざるを得ない、と言ったところだ。と言うか、それが一番合点が有ってしまうと言うか。

 魔法が当たり前に存在するこの世界、歴史上の英雄は人並外れた超人・あるいは天才的な戦士や魔導士の名が並んでいると言う。

 どこからともなく現れた勇者が国を救う――などと言った子供向け英雄譚もあるらしく、少なくとも現代日本に比べれば異世界転移などと言う荒唐無稽な現象も、比較的受け入れられ易いのかもしれない。


「あたしにとってお二人は、正にあたしを救って下さる勇者さまです。いえ、神さまがあたしたちを救うために送って下さった使途さまだと信じたいくらいです!」

「そこまで言われるとこそばゆいの~。しかしそうなると、是が非でもこの取引は完遂せねばな」

「賛成。じゃあニーナさんはライトの後席で休んでよ。俺は荷台の下ででも寝るから」

「え、そんな! あたしが外で寝ますからツトムさんこそ車内で! あ、いえ、こんな広い車内なんですから二人一緒でも」

「んな訳にはいかないよ」

「そうやで嬢ちゃん。こんなヘタレでも一応は健康男子なんやから、自ら貞操の危機を招く事は無いぞえ」

「言ってることはもっともだけど、こういう時のいわゆる健康男子は必ず良からぬことをやらかすって前提には一言、言いてぇな!」

「そうですよぅ。ツトムさんがそんな邪なお考えならあたしなんか、あのジュウですか? あれで脅されて、とっくに襲われてますわ」

「そうだよ! てまあ、それはともかくさ、ニーナさん? ここは俺に、カッコつけさせてよ。ね?」


 などと説かれてニーナはライト後席で、勉は毛布のような布を被り、サバゲの夜戦宜しくHK416を抱えて荷台の下で寝る事になった。



         ♦



 パアアァァ――――ン!


 寝入っていた勉は、いきなりのクラクション(ホーン)で一気に目が覚めた。


「来よったぞ! 現在11から12人!」

「かあぁー! マジで来たか、しつっけぇ!」


 今までの周到さからも襲撃される可能性は高かった。

 しかしこうも期待に違わず(?)やられると、恐怖よりも怒り・ムカつきの方が強くなる思いだ。

 勉は念を込めてHK416を強化した。すぐに警戒に入る。


「主、連結を外せ! 後方の防御攻撃が出来ん!」

「了解!」


 言われて勉はヒッチメンバーの固定ピンを抜いた。途端に側方、50m付近からボワっと二つの火明かりが見えた。


 ――火球? いや、火矢か?


 ヒュン!


 火が加速された。こちらに向かって飛んで来る。

 軽く放物線を描いて近付く炎は間もなく荷車の幌に突き刺さった。


「火災発生! リアウォッシャー全力噴射! ウォータハザード!」


 ライトが水属性魔法全開で放水を開始した。噴出口こそ細いリアウォッシャーだが、レベル90を超えるライトの魔法力は水量を大増量。スプリンクラー以上の勢いで水膜を展開し、瞬く間に火矢による火災を鎮火した。


「次来るぞ!」


 再び構えられる火矢を確認したライトは勉に警告。

 炎は二つ。最低2人はいる。

 勉は伏撃ちの姿勢をとり、HK416の安全装置《セフティ》を|ブレット30ポジション《フルオート》へ切換え。即座に引鉄を引く。


 パパパパパ! パパパパパ!


 勉の得物は強化されて実包と同様の威力を誇るが、反動はエアガンのそれのままだった。

 故に連続射撃(フルオート)でも安定した弾道・集弾を誇る。

 放たれた強化BB弾は吸い込まれるように炎に向かって飛んで行った。


 ぐお! などと言う悲鳴が聞こえた気がした。更に、


ボム!


火が一旦、上を向いたと思ったらそのまますぐに落下。更に、火矢用の油にでも引火したのか大きな炎が“ボバッ!”と吹き上がった。見事に命中したようだ。


 ああああ―――! 


距離はそこそこあったが、断末魔な悲鳴が聞こえてきた。弓手が火だるまになって転げまわっているのも見える。


 パパパパ!


 火だるま男の無力化を確信した勉は、もう一つの火に向かって再度掃射。


 うあ! 命中(ヒット)を意味する悲鳴が上がる。こちらも制圧完了だ。


「かかれぇー!」

うおおおおお!

 

 賊たちが突撃を開始した。


「右から5人、左から4人だ。主乗れ、車体の方向を変えるんだ!」

「おし!」


 勉は急ぎ、運転席に乗り込んだ。


「シフトL! どっちでもいいからフルステアリングでアクセルを一気に踏み込め!」

「おっしゃあ!」


 アクセル全開! 最高出力でパワーを受け取ったタイヤはμ(ミュー)の低い路面とも相まって一気に空転、激しくドリフトして車体を90度回転させる。


「よっしゃあ、同時攻撃行くぞい!」

「シフトN! ブン回すぞライト!」

「おお!」


ブオオォォ――――!


「ライトニング・ショット!」


 ズババババーン!


「ギャオ!」

「はがぁ!」

「ぼべべべっ!」


 ライト必殺の雷撃ライトニング・ショットが前方の4人に直撃! あっという間に駆逐する。


「後ろ、来ます!」


 ニーナがリアを見ながら警告。賊の数は5人。


「こっちも一気じゃ! エキゾースト・ファイヤー!」


ズボボオオォォ―――!


初披露。後方からの敵を撃退するための火炎攻撃!

女神さまに改造された4本出しリアマフラーから、火炎が火柱の如く噴きだす!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ