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朝焼けの光の中にSUV

 やがて、


ガコッ


倉庫扉の(かんぬき)が外される音が漏れて来た。

いよいよだ。各員、目線とハンドサインを交わして呼吸を合わせる。

 そして、


ガアァー!


扉は一気に全開された。


 ――思った通りだ。全力で飛び出して来たところで棒を車輪に突っ込んで足を止めて……


 と、夜盗どもが手段を講じている矢先、


パパパパ!


「うわ!」

「うぐ!」


それほど大きく無い破裂音と共に仲間が2人、あっと言う間も無く倒されてしまった。

 

 ――な、なんだぁ!?


「ぐあ!」


 驚く夜盗は更に3人目が倒される瞬間を目の当たりにした。

 パパパっという音と共に、胸の防具が弾けて飛び散り、腹からは血が噴き出して路上にボタボタ落ちていく。そして、


バタ……


そのまま崩れる様に転倒、手足がピクピクと痙攣を起こしていたが、やがて沈黙。


 夜盗たちは全くの無防備だった。こちらが一方的に攻撃できると思い込んでいたのだから()もありなんである。自分らの迂闊さに気付いた時には手遅れに過ぎた。


 ――と、飛び道具か? 弓かクロスボウ? いや、矢なんか刺さっていないぞ!


パパパ!


「ふぐぅ!」


4人目も倒された。最後に残った夜盗は視線を入口に戻した。


 ――だ、誰かが荷車の屋根に! 何かを構えてるが錫杖? じゃあ火球魔法か氷槍……


 パパパ!


「うが!」


 腹部に激痛。何かが凄まじい勢いで腹に食い込んできた。二カ所、いや三カ所か。


 パパパ!


 更なる破裂音。と同時に左大腿部と膝に衝撃。


 ――は! ががが……


 膝に弾けるような激痛が走る。悲鳴すら上げられないほど。

その膝は関節を砕かれたらしく、夜盗は瞬時に倒れてしまった。

この夜盗も過去、矢を受けた経験は有った。被矢した瞬間、激痛と衝撃で身体が硬直して呼吸もままならなくなる状態。その場から逃げるにも伏せるにも、フンッと勢い付けなければならなかった記憶。

だが今回の衝撃はそれをはるかに凌駕していた。

矢よりも早い速度で、先端が()()()()()()()()を討ち込まれ、殴られるような衝撃の中で筋肉が弾き飛ばされながら奥深く進み、果ては骨・関節が砕かれる・穴が開く感覚。被矢とは比べられない激痛と、頭痛と誤認するほどの耳鳴りと呼吸困難の中、5人目の夜盗も地に沈んだ。




「よっしゃ! 5人とも排除したぞ! 主、出発進行だ!」

「了解ぃ!」


 サンルーフから上半身を出していた勉は車内に戻ると、野党どもを薙ぎ払ったHK416を助手席のニーナに預けて運転席に着いた。ゆっくりアクセルを踏んで連結部に問題がないか確かめた後、倉庫外へと走り出す。

 後ろではハンや丁稚たち従業員が飛び出してきて、野党どもを総掛りでフルボッコにした挙句、フン縛って制圧しているのが見えた。


「このまま道なりに走って下さい! すぐに正門です!」


 ニーナのナビに合わせてハンドルを握る勉。牽引の走行テストをしている余裕が無かったので、距離は有るが石畳による舗装路を選んだのだ。速度が稼げるので結局はこちらの方が早い。

 その後、緩いカーブを曲がると目抜き通り――直線道路に出た。

 まだ早朝でもあり、人出はほぼ無い。

 

 しかし、


「主! 前方に人影だ。武装しとるぞ! 数は3人!」

「やっぱり待ち伏せも居たか。ホント厭らしいくらい、用意周到だな!」


 勉は、ニーナに預けていたHK416を左手に持った。

 待ち伏せ(アンブッシュ)はサバゲでやったりやられたりの常套手段。当然、予想済みだ。


「クルーズコントロールセット、レーンキープアシストON! ええぞ、主!」

「うし!」


 アシスト機能を駆使して速度と方向を維持し、勉の手を開けさせるライト。その勉は再びサンルーフから身を乗り出し、


パパパパパ! パパパパパ!


前に出て道を遮ろうとする賊どもを掃射した。

 そして、


「ぐ!」

「ほが!」


彼らも倉庫前の連中と同じ道をたどる。

 

 勉唯一の取柄の魔法、付与魔法。

 勉はガスハンドガンCZ-P09と同様に、強化魔法を電動ガンHK416にも施したのだ。

 効果は見ての通り。実包にも劣らない破壊力を以って賊どもの排除・制圧に成功した。

 

「すみませーん、急いでまーす!」


 窓越しに町人証を見せながら門を通過する一行。目の前の事象に頭が追いつかず唖然とする警衛番。

だが、乗っていたのは馴染みの顔であるマルティネーゼ商会の娘であるので、取り敢えず倒れた野盗の方に目を向けた。

 詳しい事情は会頭にでも聞けばよい。


       ♦


商品の保温食器を満載しているとは言え、ライトのパワーを以ってすれば荷馬車の牽引走行自体には何の支障も無かった。

とは言うものの、牽引車両の操縦と言うのはそれなりにコツが必要であるし、サスペンションの性能差を無視した走行は破損にもつながる。

加えてこれから走る皇国への街道は、勉もライトも初めて――データの無い未知のルートであるため、慎重に走らなければならない。故に平均速度は低下せざるを得ない。


「ですけどライトさんの速さは素晴らしいです。ツトムさんは低速だと仰いますけど馬車よりは数段早いですし」


 本日の工程を終えて、野営の準備に入ったニーナが勉たちの労を労った。

 ライトは今や魔素仕様エンジン搭載の異世界SUVであるし、ガス欠も気にせず、ハイビーム照らしまくりで夜間でも走り続けられるのではあるが、操縦する勉はそうはいかない。

 信号も無く、交通警察(おまわり)もおらず、他の自動車も当然存在しない自由気ままな状態ではあるものの、徒歩の旅行者は居るし馬車の追い越し・擦れ違いも当然ある。そうでなくとも舗装された高速道路でさえ長時間運転は非常に疲れるものである。

 ましてや初めて通る未舗装の道路では数倍、神経を使う。


 と言うワケで皇国領に入る手前、街道からちょいと離れた沢の近くでキャンプと相成った。

ニーナが夕食の準備をしてくれている間、勉は沢の水を使ってライトの車体に付いた泥を落としていた。


「仕事が終ってからと思っとったがありがたいの~。沢の水もけっこう綺麗で良かったわい」

「ここから下流ですと集落も多くて排水で汚れていくんですけど、この辺りはまだ綺麗な方ですわ」

「取り敢えずは水洗いで我慢してくれよな。落ち着いたら、石鹸でちゃんと洗ってやるからさ」

「おう。しかしこちらの石鹸はワイのボディに合うかのう」

「コーティングや塗装が剥げるほど強力なのは無いんじゃないの? そこまで強いと人の肌にも悪そうだし。でも研磨剤が入っている物は気を付けないとな」

「あたしの店で洗濯用からお大尽御用達の高級石鹸まで取り扱っていますから、ライトさんの()に合ったものを選んでくださいな」

「ありがとな嬢ちゃん。楽しみにしとくわ」


 などと洗車と雑談をしている内に食事が出来上がった。葉物野菜や根菜、そして干し肉を混ぜて煮込んだスープとパンであった。ライトには縁のない時間である()


「もうすぐ皇国領に入ります。納期前日――明日中にはフェラーレロ商事に着けそうですわ」

「いまのところ目立った妨害も無いし、無事に辿り着きたいもんだね」

「おそらくそれは……難しいでしょうね」

「……やっぱり?」

「あたしたちが通過したあと、いくつかの丘や高台から狼煙のような煙が上がっていました。あたしたちは、相変わらず監視されておりますわ」

「皇国領内の方が人数集められるのかな?」

「盗賊どもには国への帰属意識なんて有りませんわ、目先の欲だけです。搾取する相手は自国民も他国民も同じです。恥ずかしながら、我ら魔族の盗賊どもも一緒ですね」


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