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【連載版】廃棄孔―トラッシュラビュリンスー  作者: 黒染
迷宮胎動編

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迷宮胎動3


 新しい情報の確認も終わり、ぼくの考えるダンジョンの構想を実現する為に、改めて、彼女に聞かなければならない事がある。

 ティファニアの名付けの話題で、話が逸れたけどぼくが彼女に聞きたかったこと……


「ティファニア、君の“ラビュリンスアドミニスト”をぼくが使う為には、どうしたら良いの?」


 それは、ダンジョン生成の為に重要な彼女の能力“ラビュリンスアドミニスト”の使い方を知ることだ。


 新しい情報をいろいろ知ることができたのは良かったけれど、肝心のダンジョン関係の情報は、何ひとつ分かってない。

 さっきみたいに、ぼくの質問にスラスラ答えられるようになった、今のティファニアなら、きっと答えることが出来るはずだ。


「んっ」


ぼくの質問に対して、彼女がとった行動は、言葉による返答ではなく、ぼくに向かって両手を広げて、まるで子供が抱っこを強請るみたいに座り込む事だった。


「ティファニア……?」

「んっ!」


 広げた両手をさらに伸ばして、こっちに来てとアピールしてくるティファニア。


「どうしたの、ぼくは能力の使い方さえ、教えてもらえれば……」

「この能力(ちから)は、お話するよりも実際にやって見た方が早いから、こうしてるんだよ?」


 ティファニアが言うには、ラビュリンスアドミニストは説明するには少々複雑らしい。


「あのね、タイキ。私に背中から寄りかかって、座ってくれる?」

「う、うん。分かった」 


 ティファニアの言うとおりに、彼女を背に寄りかかってみると、


「じゃあ、いくね」


 彼女は、ぼくの体をそっと、片手で抱き締め、もう片方の手で目を覆った。

 視界を塞がれた事で、寄りかかった彼女の柔らかい体の感触と体温が、より鮮明に感じられて、落ち着かない。

 しかし、ぼくの気持ちの事など露知らず、ティファニアは気にした様子もなく、より強く密着してくる。

 そうしている最中、背後で何かが、ざわめき、蠢いている気配がした。

 

「ティファニア?一体、何をしてるの?」


 思わず、気になってティファニアに聞いてみるも、ティファニアは、


「んと、準備してる」


と簡潔に答えるだけで詳しくは教えてくれない。

 ざわめきが収まってくると、ティファニアの手で隠された真っ暗な視界にぼんやりと何かが浮かんできた。


『コアモンスター、個体名:ティファニアの魔力の周囲への侵食が完了しました。

 侵食範囲をダンジョンに変える事ができます。

 能力“ラビュリンスアドミニスト”を使用しますか?』


 視界に表示された“ラビュリンスアドミニストを使用しますか?”と言う文字。先ほど彼女が言っていた準備とは、“ラビュリンスアドミニスト”を使いダンジョンを生成する為に、周囲を魔力で侵食することだったらしい。


「準備できた。いつでも、いいよ」


 ティファニアの言葉に頷く。


「“ラビュリンスアドミニスト”起動。

ダンジョン生成を開始」


『“ラビュリンスアドミニスト”起動を確認。

 承認しました。侵食範囲にダンジョンを生成致します』


“ラビュリンスアドミニスト”を起動した瞬間、意識が身体からゆっくりと剥離していく感覚を覚え、気づくと自分の体を空中から見下ろしていた。

 背後からぼくの体を抱き締めるティファニアを見ると、彼女の長い髪が大きく広がり、先端が黒く結晶化して地面と融合している。

 先ほどのざわめきは彼女の髪が蠢く気配だったみたいだ。

 意識だけで、空中を漂っていると周囲が、暗転する。

 すると真っ暗な視界の中に映し出されていく、魔力で侵食された範囲の鮮明なダンジョンの全体像の映像。

 ダンジョンの全貌は大きな山に囲まれた岩だらけの荒れ果てた窪地。その窪地の中央地下にあるこの広い円形の空間が、今ぼく達のいるコアルームと呼ばれるダンジョンの心臓部ということだろう。

 

『ダンジョンの生成が、完了致しました』


ーダンジョンマスターのタスク。ダンジョン生成が達成されました。DP及び業貨が付与されますー


 ダンジョンの生成が完了したことが知らされると同時に、頭の中に直接、ぼくの天職のタスクがひとつ達成されたことを告げられた。


 ーError:落人と恩寵の不適合による不具合によりDPの付与に失敗しましたー

 

「……………………………はっ?」


 今のメッセージは何?エラー?恩寵の不適合?何の事?DPの付与失敗という信じられない言葉を告げられた。


「…………ティファニア、ちょっと黒曜石板を確認したいから、手を退けてくれる?」

「ん、分かった」


 ティファニアにそうお願いすると目の前に広がっていたダンジョンの風景が消え、暗転した視界に戻る。そして、ティファニアが手を退けてくれたことで、視界が明るくなったので、黒曜石板を確認する。


ーー


 名前:タイキ 

 天職:ダンジョンマスター

 位階:0

 体力:50

 魔力:#@$&!?*%¥

 技能:――

能力:命の鎖

   :万象生命の盃

 特性:生命の揺り籠

 恩寵:絶倫

   :繁殖

 契約:【幼生母胎竜ティアマット】

 【ダンジョン】  

 階層:1

 モンスター:0

 DP:0

 施設:0


 ーー


 っ……メッセージの通りだ。DPは増えていない。最悪だ。ダンジョンを運営していく為に必要なDPが、タスクを達成しても付与されないなんて……。

 いや、落ち着こう。まだ、他の方法でDPが得られるかも知れない。悲観するにはまだ早い。今はひとつずつ目の前の事を熟していこう。


 一先ず、DPと一緒にあった業貨の方だ。

 もうひとつの付与されたと言う業貨は、どこにあるんだろう。

 そう思い、少し辺りを見渡していると、チャリンという音がすぐ足元で響き、音のした方を見てみると、そこには、か黒く縁取られた深紅のメダルが落ちていた。

 メダルを拾い上げて、よく見てみる。

 メダルには炎のレリーフが彫り込まれていて、か黒い縁取りと深紅の色も相まって、地獄の炎を連想させるデザインだ。


「この業貨で、位階を上げるらしいんだけど、救済者と同じ使い方でいいのかな?」


 そう思い、黒曜石板に業貨を近づけてみるが、救済者の時と違い画面に沈み込むことは無かった。どうやら、救済者とは使い方が、違うようだ。


「黒曜石板に入れて使う訳じゃないなら、ぼく自身に対して使うのかな?」


 そう言えば、あの光球が、“業貨を使い、位階を上げ、魂を磨く”と言っていた事を、思い出す。

 魂というなら……、と思い業貨を自分の胸へと押し当てる。

 すると、予想通りに業貨は、胸の中へと沈んでいき、完全に沈みきった直後、頭の中に、


『位階が上昇しました』:位階0→位階1


という言葉が直接響いた。


 位階が上昇したというけど特に何かが変わったという感じはしない。


ーー


 名前:タイキ 

 天職:ダンジョンマスター

 位階:1

体力:50

 魔力:#@$&!?*%¥

 技能:――

能力:命の鎖

   :万象生命の盃

 特性:生命の揺り籠

 恩寵:絶倫

   :繁殖

 契約:【幼生母胎竜ティアマット】

 【ダンジョン】  

 階層:1

 モンスター:0

 DP:0

 施設:0


 ーー


 黒曜石板で、情報の確認をしてみても、位階が上昇した以外に特に変わりはないみたいだ。

 情報の確認も終わったので、DPは確保できていないけど、ダンジョンの情報の確認の為に“ラビュリンスアドミニスト”を使い、ダンジョンの調整に戻る。


「ティファニア、お願い」

「ん………」


 ティファニアに目を手で覆われ、再びダンジョンを見渡す景色に移り変わる。

 すると、目の前にダンジョンのカスタマイズ画面と思わしき画面が映される。

 カスタマイズ画面には、ダンジョンの支配領域、設置できるダンジョンの施設、召喚できるモンスター、DPの残量等、DPショップ、維持DPの項目があり、なんだか360度広がる風景も相まって、VRゲームの画面みたいだなと思った。

 ただ、気になるの視界の端に映っている、カウントダウン時計だ。猶予は、およそ1週間程だろうか、どんどんと数字を減らしていっている。

 この数字が、何なのかは何となく察しがついた。おそらくこれは、ダンジョンの準備時間を表していて、この数字が0になった時、強制的に入口が出現し、外部と接続されるのだと思う。


「制限時間は1週間。それまでに最低限、ダンジョンの設備を整えなくちゃいけないということか」


 時間には余裕があるように思えるが、ダンジョンの設営にどれだけ掛かるか分からない。しかも、ダンジョンの運営する為のDPが、エラーのせいでタスクを達成しても手にはいらない状態なんだ。

 ゲームの様な画面で、一見ゲームをしているかと勘違いしそうになるが、これは現実でゲームじゃない。実際にダンジョンの設備を作るのに、どれだけ時間が掛かるのか……。

 そう考えたら、1週間という期間が、ひどく短く感じる。


「時間は、無駄にはできない……」


 まず、ダンジョンの設備に必要なDPを確認しておきたい。

 ダンジョンの拡張にも、DPを必要とするなはずだし、先に必要となってくるDPを知っておかなくちゃ。


【ダンジョン:設備 :Lv1】

 :宝箱【ランダム】20DP :罠各種 20DP 

 :魔方陣各種 50DP :防壁 50DP

 :モンスターゲート 200DP

 :通路1m 100DP :部屋 1m² 100DP


 このLv1は、きっとぼくの天職の位階で、その位階の高さに応じて、設備の数も増えていくのだろうけど、それにしたって設備の設置に必要なDPが多すぎる。

 ダンジョンマスターのタスクを熟しでも

 設備の時点でこれだと、ダンジョンの領域拡張に、どれだけDPが必要になるか検討もつかない。それでも、確認はしておいた方が良いよね。


【ダンジョン:領域拡張】

 :階層追加 二階層 10000DP 

 :範囲拡張 直径1km 1000DP


 無理だ、いくらなんでも多すぎる。

 どちらも、いくらタスクを熟したとしても、1週間で誰も入ってこないダンジョンで獲得できるDPの量じゃない。


 Lv1のダンジョンの設備でこれだけのDPが必要となるなら、この先の設備には、どれだけ沢山のDPが、必要となってくるのだろうか。

 他にDPを消費するものは召喚モンスターとDPショップ、あっ、ダンジョンの維持にもDPを使うんだった。

 DPショップぐらいは、見ておきたい気もするけど、DPのない今のぼくには、無用の長物だ。


「やっぱり、最初に安定してDPを獲得できるようにしなくちゃ駄目か」


 一応、その為のアイデア事態はあるにはある。ぼくの考えが正しければ、DPを稼ぐことはできるし、モンスターのことも何とかなるはずなんだ。けど、それはあくまでもぼくの予想だし、仮に正しかったとしても、ティファニアに大きな負担を強いることになるかもしれない。

 だから、彼女に能力の使い方を確認しておかなくちゃいけない。

 しかし、やらないという選択肢はない。

 唯でさえ、情報源に乏しく、打てる手が少ないのだから使える手は使わなくちゃ、ジリ貧になる。


 “ラビュリンスアドミニスト”を解除してもらい、彼女の正面に座り直して、真っ直ぐに彼女の目を見つめ、意を決してティファニアにあの能力について、聞いてみる。


「ティファニア、君の能力“十三の獣”と“太母の胎”を使いたい。あの二つの能力は、どうやって使えばいい、教えてくれる?」 

「………いいの?」


 ぼくの質問に対し、ティファニアの回答は要領を得ないものだった。

 その“いいの?”はどの様な意図で言ったのだろうか?能力の使い方を知ることについて?それとも、何か別の意味が?


「それは、どういう意味?」

「本当に……使っていいの?この能力を使う為に必要な事、知ってる?

 きっと私、止まれないよ。ずっとね、我慢してたんだよ。初めて会った時から、ずっと……頑張って抑え込もうとしてた。タイキが良いって言ってくれるまでは我慢しようって。タイキに喚ばれた時にね、タイキの昔の事をいっぱい知ったの。それで、タイキに会って、あなたへの想いが溢れ出して止まらないの……。」


 熱に浮かされた様に頬を上気させ、自分の中から溢れ出しそうになるものを抑え込もうとするかの様に、自分を抱き締めるティファニア。瞳を潤ませ、息を荒げてぼくを見つめる彼女は、ひどく扇情的で艶めかしかった。


 その姿を見て、思わず唾を飲み込む。女性とそう言った経験のない、ぼくからすると彼女のその姿は刺激が強すぎる。それと同時に能力の使い方についても、大凡の検討はついた。どうやら、ぼくの予想は当たっていたらしい。


「それにね、この能力はティアマットの本能が形になったものだから。一度始めたら、タイキへの想いが抑えきれなくなって、絶対に自分じゃあ止められなくなるよ。それでも、本当に使っていいの?」

「………うん、構わない。この先、どれだけDPが必要になってくるのか分からない。闇雲にDPを使ってダンジョンを維持できなくなっても困る。君の能力を使う事で、DPを抑えつつ、DPを稼げるというなら使わない手は無いんだ。君が、構わないなら使わせて欲しい

 ううん、違う。力を貸して、ティファニ……」

 

 ドサッ!


 彼女の名前を言い切る前に視界が反転し、天井を背景に、ティファニアの顔が目の前に迫っていた。


「はぁ…はぁ…、ふーっ、ふーっ」


 息を荒げて目を見開いて、ぼくを見つめる彼女の瞳の中に、理性の光はなく、まさしく好物を目の前にした捕食者の目をしていた。

 腹の上に馬乗りにされ、凄まじい力で腕を押さえ込まれる。彼女の薄蒼銀の髪の毛が蠢き、全身を這い回り身体の自由を奪う。身じろぎも出来ずにいるぼくの服を、尻尾で器用に脱がしていくティファニア。


「はぁ、はぁ、いいんだよね。もう、がまんしなくても。タイキが良いって言ったんだよ。あぁ、ずっと、こうしたかった。とまらない…おさえられない。たいき、たいき、たいきぃ……!」


 うわ言の様にぼくの名前を口にしながら、上から覆いかぶさり、首筋、顔を舐め回した後、口付けされ、そのまま口内を蹂躙する。

 箍の外れた彼女は、先ほどの言葉通り、本能のまま、止まることはなかった。

 そこからは先は怒濤だった。時間の感覚が無くなるほどに、幾度となく果て、それでも物足りない彼女に貪られ続け、次第に意識が闇へと沈んでいった。


 酷い頭痛と共に意識が目覚めた時、最初に目にしたのは、臨月の妊婦の如く膨らんだお腹を愛おしそうに撫でるティファニアの姿だった。





――ダンジョン開放まで残り120:21:39――

 どうも、黒染です。

 誤字脱字報告、アドバイス、感想お待ちしています。

 面白かったら、高評価よろしくお願いします。

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