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【連載版】廃棄孔―トラッシュラビュリンスー  作者: 黒染
迷宮胎動編

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迷宮胎動10


 ダンジョンには、二つの種類があるらしい。


 1つ目は広域解放型。

 ぼくのダンジョンがこのタイプに分類される。

 ぼくのダンジョンは、ティファニアが教えてくれたのだけれど解放型のダンジョンと言うらしく、出入り口が存在せず何処からでもダンジョンに侵入できて、階層があまり重ねられない変わりに、広大な領域をダンジョンエリアとして保有するタイプの広域解放型のダンジョンなのだそうだ。

 2つ目は多重階層型。このタイプのダンジョンは、よくある迷宮と呼ばれるものであり、遺跡や洞窟、塔みたいに出入り口が限られたタイプのダンジョンで、こちらの特徴はダンジョンの範囲はあまり広くない変わりに縦に伸びる多重階層になっているという所だ。


 広大なダンジョンエリアの中央。

 そこにある険しい岩山に囲まれた大穴。

 さらにその周囲に広大な荒野が広がっている変わりに、二階層目以降が存在しなかった。

 それに二階層目も、モルケットが掘った魔方陣用の洞窟と言うもので厳密には、二階層目と言えるか分からないものだった。

 そして大穴の中は、岩棚と岩橋、洞穴でできた迷路の様な構造をしていて暗く不気味な穴の底へと続く道となっていた。

 その穴の底のさらに奥にコアモンスターであるティファニアとダンジョンマスターのぼくがいるコアルームはある。

 この構造がティファニアに教えてくれたぼくのダンジョンが解放型となる理由だ。


 ダンジョンマスターには、ダンジョンを作っていく際に守らなくてはならないルールがあった。


 これは、ダンジョンの開発をする為に色々調べていた時に見つけたもので、そこにはダンジョンを運営する際に守らなくてはならないルールが書いてある。

 迷宮典範と言うものだ。


【迷宮典範】


 ・ダンジョンコアへと続く道を閉ざしてはならない。

 ダンジョンコアへと続くが閉ざされた時、ダンジョンマスターは罰(ペナルティ)が与えられる。


 ・ダンジョンコアとダンジョンマスターの運命は共にある。

 ダンジョンコアが破壊された時、ダンジョンマスターは死亡し、また、ダンジョンマスターが死亡した時、ダンジョンコアは崩壊する。


 ・ダンジョンコアは、常にダンジョンの領域の中に在らなければならない。

 ダンジョンコアがダンジョンの領域より外に流出した時、ダンジョンは消滅しダンジョンコアも崩壊、ダンジョンマスターは死亡する。


 ・ダンジョンの存続が不可能となった時、ダンジョンは消滅する。

 ダンジョンを維持する為の所持DPが、維持DPを下回った時ダンジョンモンスター及びダンジョン設備、領域をDPへと変換し維持DPに充てられる。ダンジョンが崩壊した時、ダンジョンマスターも死亡する。


 ・領域を持たないダンジョンは存在できない。

 ダンジョン領域の支配率が一定の割合を下回った時、そのダンジョン領域の支配権を消失する。ダンジョン領域の支配権を消失した場所はダンジョン外の扱いとなり、全ての支配領域を失ったダンジョンのダンジョンコアは崩壊し、ダンジョンは消滅する。ダンジョンマスターも死亡する。


 ……何度も繰り返し、”ダンジョンマスターは死亡する“としつこいくらいに念を押してきていた。

 それだけ、ダンジョンマスターというのは死亡条件が多いと言う事なんだろう。


 迷宮典範の内容を、ティファニアに聞きながらもう少し詳しく整理してみる。


 まず、第一の項目。


 “ダンジョンコアへと続く道を閉ざしてはならない。”


 これは、ダンジョンマスターはダンジョンを常に攻略できる状態でなければならないと言う事らしい。

 ダンジョンコアルームへと続く道を作らなかったり、閉ざしたりした時、また何らかの事情で失われた場合にもこの項目の違反条件に抵触してしまうみたいだ。

 違反条件に抵触した場合に発生するというこの罰がどういうものか分からないけど、生半可な罰じゃない事は確かだろう。

 最悪の場合、発生する罰はぼくの死になるのかもしれない。


 次に第二の項目。


 “ダンジョンコアとダンジョンマスターの運命は共にある。”


 これは、ダンジョンマスターの概要にもあったものと同じで、ダンジョンコアとダンジョンマスターの命は連動していて、どちらかが失われた場合、もう片方も消えてしまうと言う意味だろう。

 ぼくの場合は、ダンジョンコアの変わりにコアモンスターであるティファニアが倒されたら、ぼくの命も其処で終わると言う事だ。


 ただ、この項目に関しては少し気になる事があった。

 それは、ティファニアの特性にあった“■■■■■”と能力の“命の鎖”だ。

 ティファニアのステータスの詳細にあった“■■■■■の力により自身の産み出した生物とその系譜が、存在する限り生命を維持し続ける”の一文と“命の鎖”の“この能力を持つ者が、死なない限り、契約相手の命も保たれる”と言う効果。

 ティファニアの“十三の獣”で生み出した眷属、ノエルとシルヴァディ。さらに二人が生み出したモルケット、ヴェルミドーザー、ゾウアシグモ、ポッピンフラワーから生まれたトドルートと言ったモンスター達。今はこの子達ぐらいだけど、この先もっと増えるだろうティファニアが生み出すモンスター。

 “■■■■■”の特性は封印中となっていたけど説明をそのまま受け取るなら、この特性が解放された時、眷属とその子供である彼らがいる限り、ティファニアは不死身の存在となり死ぬ事がなくなるのだと思う。

 そこに“命の鎖”の“この能力を持つ者が、死なない限り、契約相手の命も保たれる”という能力。

 この能力を持つ者。この場合、ティファニアが死なない限り、契約相手であるぼくも死なないという事になる。

 “■■■■■”が解放されてティファニアが

不死の存在になった時、“命の鎖”で繋がれたぼくもまた、不死身になるのだろうか?


 まだ”■■■■■“の封印が解かれていないので、こんな事を考えるのは時期尚早かも知れないけれど、そこが気になった。


 続いて、第3の項目。

 “ダンジョンコアは、常にダンジョンの領域の中に在らなければならない”


 まぁ、当然だよね。と言うのがこの項目に関する感想だ。

 ダンジョンコアを核として、ダンジョンと言う肉体を構築されているのだから、その核が外にでてしまったら肉体を維持出来なくなるのは当たり前の話だと思う。

 ダンジョンコアが持ち運び可能な魔石から加工したタイプの物だと、誰かに盗み出されてダンジョンの外に持ち出されてしまう可能性がある。

 こんな項目があるくらいだから、そういう事も過去、何処かで実際にあったのだろう。

 その点、うちはティファニアと言うコアモンスターが、ダンジョンコアとしての役割を担ってくれているので、持ち出されると言う心配はない。………と思う。

 ティファニアが洗脳されたり、愛想を尽かされてダンジョンの外に出て行かれてしまったりしたら、とか考えだしたらキリがない。だから、なるべくそうならない様に気をつけていかなくちゃ。


 それから、第四の項目。


 “ダンジョンの存続が不可能となった時、ダンジョンは消滅する”


 ダンジョンを維持する為のDPが尽きた時、ダンジョンは消えてしまうと云うルール。


 ダンジョンモンスターの召喚、維持。

 ダンジョンの施設の建設、維持。

 ダンジョンの領域の拡大、維持。

 さらにそれら全てのダンジョン物資は、ランクが高くなる程に必要になってくるDPの量も跳ね上がってくる。

 故にダンジョンの規模が大きければ、大きい程に、ダンジョンに高ランクのモンスターや施設が多ければ多いほどに、ダンジョンを維持する為のDPが大量に必要になってくる。


 だけどDPを獲得する手段は限られていて、ダンジョン内で、生物が生存し続ける事で手に入る生存DP。ダンジョン内で生物を殺す事で手に入る撃破DP。

 ダンジョンマスターが、タスクを達成する事で獲得できる報酬DPの三つがある。

 DPの獲得量は、撃破DP、報酬DP、生存DPの順で前に行くほど多くなってくる。

 撃破DPは、倒した生物の強さによって変動するし、報酬DPは貰える回数は不明でどれだけのDPが貰えるか分からない。生存DPは獲得量は低いけど、ダンジョンの領域内に生物がいれば継続的にDPを獲得できる上、数が多ければより多くのDPが手に入れる事ができる。


 しかし、ぼくの場合、エラー……恩寵の不適合の所為で報酬DPが獲得できない。

 なので、ぼくがDPを獲得するには、撃破DPか生存DPの二つしかないのだ。

 そして、この二つのDPはダンジョンが解放された状態じゃないと獲得出来ない仕様になっている。つまり、今のぼくにはDPを獲得する方法がないと言う事なのだ。


 ぼくはティファニアや、ノエル達の力でDPを使わなくても、モンスターを用意する事ができた。

 でも、ダンジョンマスターは通常、DPを使ってモンスターを召喚する。

 ダンジョンマスターの説明にあった事だけど、DPを使って召喚したモンスターでは、生存DPも撃破DPも手に入らない。

 

 だから、DPを使って召喚したモンスターを使って、ダンジョンを攻略しに来た侵入者が生きている時に生存DPを、倒したりする事で撃破DPを確保するのが普通なんだそうだ。


 こうやって獲得したDPを使ってダンジョンを維持していく。

 いくのだけれど、ダンジョンの規模や環境、防衛によって所持DPを維持DPが上回る事は珍しい事ではないみたいで、その場合にダンジョンのモンスターや施設、領域を削ってDPに変換して足りない分を自動的に補う様になっている様だ。

 但し、この時の変換レートは召喚や設置する際に消費されたDPの半分程になってしまうらしい。


 だからダンジョンを無計画に拡張した結果、維持DPが足りなくなってしまいDP確保の為にせっかく用意したダンジョンのモンスターや施設をDPに変換するも、確保できたDPはつぎ込んだDPの半分程で、結果としてダンジョンの規模が縮小したり、最悪の場合消滅したりしてしまうといった事が往々にしてあると言う事だ。


 特に落人としてこちらに来た人間は、元々の性格から手に入れた力に溺れて、自分は神になったという全能感に嵌まりがちで、こういった状況になる事が多いらしい。……ぼくも気をつけよ。


 それから、維持DPがどのタイミングで、所持DPから引かれるのか分からない事も問題だ。

 報酬DPと撃破DPは、いつ手に入るのか分かりやすのだけど、生存DPはどのタイミングで手に入るかわからない。

 生存DPと撃破DPが、唯二つの命綱のぼくからすると、撃破DPはともかく生存DPの入手タイミング次第で致命傷になりかねない。

 今のぼくには、DPが無い。

 生存DPや撃破DPが手に入るより先に、維持DPが発生したら、ぼくの殆ど初期状態のダンジョンだと支払う為の設備もモンスターもいない。


 そんな状態で、維持DPが引かれたらその時点で詰みかも知れない。

 


 ………最後に、第五の項目。


 “領域を持たないダンジョンは存在できない。”


 これも当然といったら当然で、言いたい事は分かる。

 ダンジョン領域の支配率が一定の割合を下回った場合に、そのダンジョンの支配権を消失するとは典範に記されていた。

 このダンジョンの支配率と言うのは、ダンジョン内に存在する自分の勢力下にいるモンスターの数と分布、ダンジョンの設備の数、ダンジョンコアの魔力によって侵蝕された領域で決まり、モンスターの数が減ったり、設備が破壊される事や、領域を侵すダンジョンコアの魔力が取り除かれる事でダンジョンに対する影響力が削られて行く。

 最終的に一定の割合を下回るとその領域に対する影響力を失い、結果、ダンジョン領域を維持する事が出来なくなる為にダンジョン支配が解除されると言う事らしい。

 ダンジョンの支配領域が無くなってしまい、コアルームのみになってしまうとダンジョンコアは力を失い消滅してしまう。


 ダンジョン攻略には、そうやってダンジョンの領域を削って行く事で、ダンジョンを消滅させる方法もあるのだそうだ。


 ………黒曜石板で見つけた迷宮典範に記されていた内容を、ティファニアに教わりながら整理してみたけど、分かった事は、ぼくにはやっぱり難しいと言う事だった。

 ぼくにギリギリ理解できたのは、ダンジョンコアを隠してはいけない事、ティファニアとは一蓮托生と言う事、ダンジョンコアを持ち出してはいけないと言う事、ダンジョンを維持する為のDPは常に確保しておかなくちゃいけない事、ダンジョンの領域は死守しなければならないと言う事だ。

 ティファニアは、それだけ憶えていれば大丈夫と言ってくれたけど、ぼくは怖いんだ。

 この中に明記されていないだけで、ぼくが気づけていない抜け道や裏ルールみたいなのもきっとある筈だ。

 ダンジョンが解放されて、外の世界と関わる様になったら、ぼくより経験の豊富な、この世界に先に来た落人達とも戦う事になる。

 考えすぎなのかも知れないけど、用心しておけばもしもの時、足元を掬われそうになったてしても、慌てずに何かしら対処できるかもしれない。

 だから、警戒は怠れない。

 何かあった時に失われたるのは、ぼくの命だけじゃなく、ぼくに力を貸してくれているティファニアや、ノエル、シルヴァディ達の命にまで及ぶんだ。


 ダンジョンで生存競争を行わせようと考えているぼくが言うのも何だけど、せめてぼくが名前を付けた、ぼくを慰めてくれたティファニアや、ぼくを父と慕ってくれるノエル、シルヴァディ達には報いたい。


 それが、今ぼくに出来る最善の事だと思うから。


――ダンジョン開放まで残り52:21:19――

 どうも、黒染です。

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