迷宮胎動9
ティファニアの”ラビュリンスアドミニスト“とぼくの”念話“を使ったダンジョンクラフトは思いの外上手くいっている。
ラルヴァ達がモルケットに進化した事で、ダンジョンの拡張が順調に進んでいるのが、大きな要因のひとつだと思う。
モルケット達は、凄い勢いで土を掘り進み、ノエルを経由してのぼくの指示に従って着々とダンジョンの通路や部屋を広げていく。
ぼくは”ラビュリンスアドミニスト“を使用中に見る事の出来るダンジョンリストで調べたダンジョンの設備、魔方陣をぼくがダンジョンの全体像を俯瞰して見る事でその都度指示を出して調整を繰り返しながら、巨大な魔方陣をモルケット達に地面の中に掘り込んで描いていく。
こうして地面の中に作られた魔方陣は、ダンジョンの迷路になりながらも、同時に魔方陣としての機能も発揮してくれる。
地上からは見えない上、地下に潜ったとしても洞窟の通路としか思わないだろう。
ぼくも”ラビュリンスアドミニスト“で地面の中に掘られた魔方陣の導線を透視しているから分かっているだけで、この透視がなければただの地面にしか分からなかったと思う。
ダンジョンの中心にある窪地に空いた大きな深い穴とそれを取り囲む荒れ果てた頂上付近に雪が振り積もる程に高い岩山。さらにそれらを中心とした広大な荒野。
それが、今のぼくのダンジョンの全貌だ
中心にある大穴を取り囲む岩山とその周辺の地下に多重に掘り込んだ魔方陣は活性化の魔方陣というもので、この魔方陣の効果は魔方陣の中にある生命力を活性化させるというものだ。
この活性化させる力でシルヴァディに地上に撒いてもらう予定の種を成長させて魔方陣を掘り込んだ辺りを全て樹海に変えて、そこにノエルの生んだ蟲モンスター達を放つ。
魔方陣によって活性化された蟲モンスターや植物達に環境を整えさせ、これから先色んな種類のモンスターを放つ事で、ダンジョンに生態系を作り出して生存競争が行わせて、DPを獲得する為のシステムを作り出す。
その為にシルヴァディには洞窟の外、ダンジョンの地表へと行って貰い何処にどういう種を植えるのか下見を行って貰っている。
これは、実際に外の環境を見て、どんな植物がこのダンジョンの土地に適しているか、どの様に環境を整えていけば良いのか、スペ植物のスペシャリストであるシルヴァディに確認して貰うのが一番良いと思ったからだ。
“ラビュリンスアドミニスト”で、ダンジョンを観測しながらシルヴァディと“念話”でやり取りして、シルヴァディが教えてくれる情報を地面に書き留めて、これを元に後々、ティファニアやノエルと相談して何処にどんなモンスターを放つか決めていく為の判断材料にする。
それと、これはダンジョンの整備を始めて暫くしてから気づいた事だけど、ダンジョンにモンスターを放って作業しているのに生存DPとやらが入ってこない。
どうやらダンジョン内にいるモンスターの生存DPや死亡DPは、ダンジョンが解放されなければ手に入らないみたいだ。
なので、ダンジョンが解放されるまでは、ただ只管に自分のダンジョンの開発を行っていく。
ノエルの”蟲産み“で、どんどん生まれてくるラルヴァ達をモルケットに進化させて作業効率を上げていく。
どうも、ラルヴァ達の成長速度は、豊富な魔力を持つ魔晶樹を食べる事によって格段に早くなっているそうで、このペースならダンジョン解放までに広大なダンジョン領域の地下に巨大な魔方陣を描き切るのも間に合いそうだ。
モルケット達が掘り出した土は、シルヴァディの元に運ばれくる。
土を運んでくれるのは、シルヴァディが生み出した種から育った花。さらに、そこから吐き出された種が生長して生まれた頭から小さい双葉を生やした手足を生やした人型の、ずんぐりむっくりとしたものや、小さくてほっそりしているもの等色んな姿があるマンドラゴラみたいな歩く根っこのモンスターだ。
ーー
【ポッピンフラワー】
階級:無銘
契約主:タイキ
特性:千紫万紅
能力:放散種
詳細:トドルッツという植物を生み出す花。花の色によって、特有の能力を持ったトドルートが生まれてくる。
ーー
【放散種】
一度に沢山の種を撒く。
ーー
【トドルッツ】
階級:無銘
契約主:タイキ
特性:色によって変化
能力:色によって変化
詳細:ポッピンフラワーが飛ばした種から生まれた歩く植物。一匹一匹は弱いが、集団で力を合わせて行動する事で外敵と戦う。
母体であるポッピンフラワーの種類によって、能力が変化する
ーー
色取り取りのポッピンフラワーから生まれた根っこモンスター、トドルッツ。
何故、トドルート達が土をシルヴァディの所まで運んでくるのかと言うと、それはシルヴァディの主食が土だからだ。
モルケット達が掘ったティファニアの魔力が浸透した土はシルヴァディに生える植物の抜群の栄養源になるらしく、どこには入っているのか、明らかにシルヴァディの体積よりも多い量の土を平らげていた。
ちなみにこのトドルッツは、人の言葉を理解するくらい知能があるみたいで、ぼくやシルヴァディ達の指示をそこそこ熟せる程度の賢さはあった。
ただ、問題があって土を運びにモルケット達の所にトドルッツが近づいた時に、モルケット達がお腹を空かせていたりすると、視界に入ったトドルッツを襲ってを食べてしまう事が頻繁に起きていた。
今はとにかく、人手がいるので数を減らされると困ってしまうのだけど、人の言葉が分かるトドルッツと違い、モルケットはノエル越しに簡単な命令ができるくらいの知能しかない為、トドルッツ達を食べないでという指示をしても本能の食欲の方が優先されてしまってこっちの言う事を聞いてくれない。
一応、モルケット達の食べ物はシルヴァディが用意してくれたのだけど、穴掘りと言う重労働故か、すぐにお腹が空かせてしまい、近づいてきたトドルッツを食べてしまうみたいだ。
そんな何時、食べられてしまうか分からない危険な状態なのに、与えられた仕事を健気に熟してくれるトドルッツ達には感謝と同時に申し訳無さが湧いてくる。
このトドルッツを生み出すポッピンフラワーは、花を窄ませて、先端が細く底がふっくらとした壺状になり、種を散弾銃のように上へと吐き出して、種を周りに植え終えると小さな蕾の状態になってしまう。
蕾の状態になったポッピンフラワーは、再び種を吐き出せる様になるのに、土中の栄養や魔力にもよるが早くても3日ほど掛かるらしい。
ポッピンフラワーが一度の放種で吐き出す種の数は8〜10個程で、ポッピンフラワー自体あまり密集して生育できないようで、ポッピンフラワーの数もこの洞窟の限られたスペースでは制限されてしまう。
そうなると、必然的にポッピンフラワーから生まれるトドルッツの数も限られてしまい、モルケットに食べられてしまうのは、労働力の観点から見ても、急いで解決しなければならない事なのだけど本能を抑えろというのも無理な話だ。
なので、代替案として洞窟の外、岩山の雪の無い場所にポッピンフラワーの群生地を作る事にした。
さっき述べた様にポッピンフラワーは密集して生育できない。
狭い洞窟の中では、ポッピンフラワーを沢山育てられない。
だったら、広い洞窟の外で育てれば良いと考えた訳だ。
その為に、魔法陣掘刻と並行して地上の環境整備も行っていく。
人手は割かれてしまうけど、ノエルやシルヴァディの協力もあるので、順次新しく生まれたモンスター達を投入して行けば何とかなるはずだ。
イメージとしては、一度だけテレビで見た世界遺産のギアナ高原。
断崖絶壁の上に緑が生い茂り、滝が流れ落ちて川となり、ダンジョン中に巡っていく様な場所。
ポッピンフラワーだけでなく、食べ物が豊富に実る沢山の植物達を植えて、樹海エリアを流れる川の源流を作り、樹海エリアの基盤を作り上げる。
その為に大穴を囲う岩山の一画を切り崩したり、穴を掘った時に出た土を盛って、切り立った崖を作り上げる。その上の地面を均し耕して、ポッピンフラワーやその他、植物を植える土壌作りを行う。
シルヴァディにも、高原の方に向かって貰った。
シルヴァディには、少し悪いけどシルヴァディの食べる土を高原の盛り土に使わせて貰う。
広範囲を切り崩す為には、モルケット達だけでは、どれだけ時間が掛かるか分からないので何か良い手は無いかと、休憩がてらの食事中にティファニアに相談してみたら、
「それなら【ヴェルミドーザー】がいいよ。かなり大きいモンスターだから、モルケットよりも沢山、土を掘れる。あ、ただ食欲旺盛で殆ど本能で動くから作業中は常にコントロールしなきゃいけないから、ノエルの負担が増えちゃう」
と言う。
ノエルの負担が増えてしまうなら、本人に確認を取った方が良いよね。
という事で、ノエルに【ヴェルミドーザー】を増やしても大丈夫か聞いてみたら、
「私は構いませんわ。ヴェルミドーザーは知能が無いので支配に抵抗される事も無いですし、一度支配してしまえば、操る事自体は簡単ですので大した負担にはなりませんわ」
と、快く許可を貰えたので、ノエルに変異繭の何体かをヴェルミドーザーへと進化させてもらう。
……今のノエルの話から、支配されている筈のモルケット達が、こっちの言う事聞かずにトドルッツを食べちゃうのは、何なんだろう?
暫くして、変異繭からヴェルミドーザーが生まれてきた。
生まれてきたのは、円錐状になった大きい頭部、口を開くと中には太く逞しいランスの様な牙と分厚く鋭い鉈の様な牙が入り乱れた、岩盤を削り砕くシールドマシンを思わせる口。
段々と先細りになっていく太く長い胴体に細かな棘を満遍なくに生やし、その胴体の蚯蚓の環帯と思われる部位には、硬そうな金属質のドリルのネジネジとした溝が走る甲殻。そして、全身には一目見て分かる程、ギチギチと筋肉が張り詰めている。
ティファニアに『かなり大きい』と聞いていたけど、実際に変異繭から出てきたのはモルケットとそんなに変わらない大きさの、しかし屈強なミミズの様なモンスターだった。
ーー
【破砕蠕蟲 ヴェルミドーザー】
階級 村落
契約主:タイキ
特性:螺旋環殻
:硬鋭棘
:破砕双牙
:大食漢
能力:掘削
:硬化
:振動探知
:溶解液
詳細:巨大な蚯蚓型の悪食肉食モンスター。目は退化しており、視力はなく振動を感知して獲物を探す。非常に大喰いで、常に獲物を探して動き回る。
口にある硬い岩盤を砕く剛槍牙と砕いた岩を粉微塵に粉砕する磨鉈牙の二つの牙で地面を掘り土ごと獲物を砕いて捕食する。蚯蚓の環帯にあたる螺旋環殻は体を回転させる事で体を前へと押し出し、胴体に生えた硬鋭棘は、振動を感知するレーダーとしての役割とスパイクに使い細かく動かして、地面の中を移動する為の足の変わりになる。螺旋環殻と硬鋭棘による回転と蠕動を用いた動き、破砕双牙による障害物の素早い破壊によって地面の中を凄まじい速度で移動できる。
ーー
【溶解液】
腐食性の高い液体を分泌する。
溶解液をかけられたモノは、脆く軟化し著しく強度、防御力が低下する。
「なんか、思っていたより小さいね」
「まだ進化したてですからね。ですが、すぐに大きくなりますわ」
「ん。それに変異繭の大きさに合わせて出てくるから、進化したての姿はどうしても小さくなっちゃうんだ」
目の前で、ウネウネと蠢く数体のヴェルミドーザーを見ながら大きさの事を疑問に思って口にすると、ノエルとティファニアが補足しつくれた。
「あっ、そうでしたわ。ヴェルミドーザーが通った場所は溶解液の所為で非常に脆くなってしまうのでした」
「えっ!?そうなの!?」
「はい。ヴェルミドーザーは穴を掘る際に、“溶解液”で自分の周囲の土を脆くして穴を掘りやすくするのですが、その時に染み込んだ“溶解液”が暫くの間、残り続けて土を脆くし続けてしまいますの」
ヴェルミドーザーの“溶解液”ってそんなに厄介だったのか。
それだと、このままモルケットとヴェルミドーザーに高台を作らせても、“溶解液”の影響で脆くなった地盤が崩れ、高台が崩壊してしまいかねない。
「あ〜、それなら、誰か土を硬めて高台を崩れないようにできる奴が必要だね」
「ん。確かにヴェルミドーザーの溶解液で脆くなった土をそのままにしてたら、高台なんて直ぐに崩れちゃうね」
「土の硬化……、圧縮でしたらアシグモ属がよろしいでしょうか」
「ん。良いかもしれない。アシグモ属は、歩く時に地面を踏み固める習性を持ってるから。特にゾウアシグモの歩いた後は地盤まで固めるから、ヴェルミドーザーが緩めた地盤を固めてくれる」
「ゾウアシグモ!それです!良い考えですわ。さすがお母様!」
なんだか、あれよあれよと言う間に話が進み、ティファニアとノエルによって解決策が導き出されていた。
話の内容についていけずに、ただ黙って2人の会話を聞いているだけになってしまった。
「それでは、何体かゾウアシグモに進化さすますわ。あぁ、そうですわ。ヴェルミドーザーは肉食性の蟲モンスターですし、餌になりうる繁殖力の高い蟲モンスターも用意しなければいけませんわね」
ノエルはそう言うと、再び変異繭に向かって息を吹きかけて、“女王のフェロモン”を使った進化のコントロールを行った。
ダンジョンに生態系を作ろうとしてるぼくが言うのも何だけど、初めから餌になる為に生み出されるモンスターって、かなり残酷な運命を背負わせているよね。
「ゾウアシグモの方はこれで良し。後は、もうひとつ。餌となる蟲モンスターですわね。……………んっ」
ノエルの肥大化した腹部が蠢いて、先端にある穴から、細長い白い物体…卵と思われる物が出てくる。
ノエルはラルヴァ達の卵よりも、遥かに小さいそれを次々と産み出して、あっという間に自分の足元を埋め尽くしてしまった。
「これくらいでしょうか?後は、ふぅ〜……………」
自分の産み出した卵に向かって、ノエルは息を吹きかける。
すると、忽ち卵にヒビが入り中から夥しい数のとても小さい白い粒の様な蟲が生まれてきた。
「……………―――ひっ!!」
あまりの光景に、引き攣った声が漏れた。
足元を埋め尽くしていた卵から生まれた夥しい数の蟲は、そのまま逃げる様に外へと続く穴へと殺到していき、直ぐにみんな居なくなった。
その身の毛のよだつ光景に寒イボが立った肌を擦りながら、今生まれたモンスターについて尋ねた。
「い、今のは何?」
「今のはね、アミンコって言うモンスターだよ」
「ア、アミンコ?」
「そう、アミンコ。小さくて、力も無いけどその分凄く繁殖力が高くて、死んだ生き物やゴミを食べて分解する、色んな生き物の糧になる凄く大切な役割を持つ生き物」
ーー
【アミンコ】
階級:無銘
契約主:タイキ
特性:環境適応
能力:大繁殖
詳細:生き物の死骸や排泄物、枯れた植物等を食べる腐肉雑食性のモンスター。
エビともダニとも言えない奇妙な見た目をしていて、どんなに劣悪な環境であっても生きていける高い生命力を持つ。
小さく、力も非常に弱く色んな生き物に捕食される生態系の最下層に位置する生き物。
極めて高い繁殖力で、被捕食や環境の急変による減衰よりも、早く個体数を増やして数を維持する。生態系において、分解者であり、重要な栄養段階を占める被捕食者でもあると言う非常に重要な存在。
ーー
【大繁殖】
一度の交配で、大量の卵を産み出す。
また、卵から産まれてくる子供の数も増加する。
黒曜石板に表示されたアミンコの情報を確認して。
あれほどの、数え切れない程に生まれたアミンコの事を考えれると、あの数のアミンコが食べ尽くされるという事は、まず無いと考えて良いと思う。
それにしても、ノエルが咄嗟の思いつき……思いつきなのかな?で生み出してくれたアミンコって言うこのモンスター。
詳細を見る限り、色んな生き物を支える為に凄く重要なモンスターだと言う事がよく分かる。
さっきは思わず引き攣った声を上げてしまったけど、アミンコはぼくのダンジョンに必要不可欠なモンスターなんだろう。
ヴェルミドーザーだけでなくこれから先、生み出されるモンスターを支える為の糧になってくれるアミンコが加わった事で、ダンジョンの生態系の安定性は、きっと格段に増したのだから。
そうこうしている内に変異繭の進化が完了して、ゾウアシグモが繭を引き裂いて出てきた。
ゾウアシグモは、丸い大きなくす玉の様な腹部の上に小さなドーム型の頭胸部が乗った黒褐色の体をし、頭には全方囲を見渡せるよう八つの目がぐるりと円を描くように付いていて、頭胸部から小さく手の様にも見える4本の足と何よりも特徴的な体を吊り下げるように伸びた四本の足に象足の名前の由来になったと思う分銅のような太く重量感のある太い足先をした蜘蛛型の蟲モンスターだった。
ーー
【重脚蟲 ゾウアシグモ】
階級:殺人
契約主:タイキ
特性:象脚
:軟重金属体皮
:展望複眼
:鋼毒
能力:硬化
:加重
:転圧踏
:金属糸
詳細:巨大な足で地面を踏み均す蜘蛛型のモンスター。鉱物を主食としていて、腹部を土の中に埋めて土中の金属を直接体内に取り込む。取り込んだ金属から出来た、軟らかな重金属性の体組織を持った超重量級の体は下手な攻撃ではビクともしない。頭部に円を描くように配置された複眼は全方位を見渡す事ができ、死角は真下のみ。
体内に極めて毒性の高い金属毒を保有していて、体の関節から霧状の毒性の高い金属毒を噴霧する事ができる。
ーー
【加重】
体重を増やす事が出来る。増やした体重は時間経過で、元に戻る。
【転圧踏】
地面を踏みつけ、土を固める。
重量が重ければ重いほどに、踏みつけた土の硬さが上がる。
【金属糸】
金属性の糸を出す。
「これが、ゾウアシグモ……。名前に象って付くくらいだから、もっと大きいかと思ってたけど。やっぱり、この子も進化したてだから、これくらいの大きさなの?」
「ん、そうだよ。ゾウアシグモも、本当ならタイキの知っている象と同じくらいの大きさになるんだよ」
兎にも角にも、新たな戦力として加わったヴェルミドーザーとゾウアシグモをノエルに頼んで、早速作業に向かわせて貰う。
ノエルは”音響支配“を使い、支配を受けたヴェルミドーザー達は、ノエルの指示に従いあっという間に壁の中に潜り込んで、ゾウアシグモは、地面を揺らしながら、ヴェルミドーザーが開けた穴を通って地上に向かって行った。
ぼくも、直ぐ様”ラビュリンスアドミニスト“でダンジョンの観測と監督に戻る。
高原の開発場所では、モルケット達が岩山を熊手の様な腕で削り、切り崩していた。
しかし、モルケットの大きさであの大きな岩山を削って高台を作る光景は、まるで小さなノミで巨大な岩を削っているかの様な気の遠くなる作業に見えた。
『ノエル、ヴェルミドーザー達はどう?』
『もうすぐ現場に着きますわ』
『すご、早いね。地面を掘り進む速さが、モルケットとは大違いだ』
ノエルとの念話で、ヴェルミドーザーがもうすぐ高原に合流する事を高原の設置場所に向かって貰っているシルヴァディに念話で連絡した。
シルヴァディからは、直ぐに了解の返事と共に、シルヴァディももうすぐここに着くと返ってきた。
ゾウアシグモ達の方は、見た目の通りの鈍重さで高原に着く迄には、ヴェルミドーザーの作った道を使っても、まだまだ時間がかかるみたいだ。
ノエルの言う通り、シルヴァディと念話して直ぐにヴェルミドーザー達が地面から出てきた。
モルケットとヴェルミドーザーにノエル経由で指示を出して、シルヴァディやゾウアシグモ達がここに来る迄に、少しでも作業を進めていく。
ヴェルミドーザーが、体から分泌する“溶解液”と体格を活かしてどんどん地面を飲み込んで削って行く。
そして、“溶解液”で軟らかくなった地面をモルケットが“溶解液”でも溶けない鋼の腕で削り、形を整えていく。
地面は横に広く、縁取りが波打った半円錐形のすり鉢状の窪地に整えられて、反対側の切り立った土地の上には、ヴェルミドーザーが排泄し、モルケットが削った土が盛られて山になっていた。
作業が進んで暫く経って、シルヴァディがトドルッツ達を伴って合流してきた。
トドルッツ達が来た事で、トドルッツが土を運ぶ作業を担当する事で、モルケット達は掘削作業に専念する事が出来る様になり、作業効率が少し上がってきた。
さらに時間が経ち、ようやくゾウアシグモ達がやって来る。
ゾウアシグモ達は山盛りになった土の上に行き、その大きな足で土を踏みつける。
ゾウアシグモの“転圧踏”だ。
しかも、踏み込みの様子から“加重”を使っているみたいで、地震を思わせる揺れが起きていた。
ゾウアシグモが“加重”と“転圧踏”を使って、土を踏みつける事で破砕双牙による粉砕と“溶解液”でドロドロになった地面が岩盤の様な硬さに変わって行く。
ゾウアシグモが踏み固め、踏み固めた地面の上にダンジョン中からトドルッツ達がまた土を運び込み、ゾウアシグモが運び込まれた土を再び踏み固める事で高く積み重なっていき、高く聳え立つ崖となり、その断面は地層の葉理の様になっていた。
窪地に沿って作られた高台の積み重なった土は下に行くほど硬く頑強になり、上に積まれた土は植物を植える都合上、適度に柔らかく踏み固められている。
そうして出来上がった高台にシルヴァディが植物の種を撒いていく。
高台に撒かれた種は、トドルッツがノエルの元から運んできた“活性液”を掛けられて、瞬く間に生長して大きな樹になった。
生長した樹は水樹と言う、枝から水が噴き出る樹で生長した水樹はすぐに水を噴き出して、高台の地面に振り注ぐ。
高台の崖際に並び立つ水樹から噴き出し、振り注いだ水は高台から流れ落ちて滝となり、窪地へと溜まっていった。
また、高台の山側の土地には、沢山のポッピンフラワーの種が撒かれて、“活性液”によって生長したポッピンフラワーからトドルッツが生み出されていく。
生まれたトドルッツはすぐにダンジョンの整備の為、ダンジョン中に広がっていった。
シルヴァディは、その他にも高台の上に色々な種を蒔いていく。
撒かれた種もまた、“活性液”によって生長して、コアルームにもある仙桃の実る木や魔晶樹、不思議な紋様の真っ黒な葉をした針葉樹と広葉樹、色取り取りの玉の様な実を垂らした木、ほんのりと光る花をつける草、トマトやキュウリの様な実をつける草等、様々な樹木と野草へと育っていく。
これで広い高台の上に、ポッピンフラワーの花畑と水樹の森、食べ物が実る木、多種多様な樹木と野草が生い茂る森が何とか形になった。
この高原が、これから作る樹海へと続く源流となっていくんだ。
――ダンジョン開放まで残り72:25:03――
どうも、黒染です。
誤字脱字報告、アドバイス、感想お待ちしています。
面白かったら、高評価、ブックマークをよろしくお願いします。




