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23 業火の再会



「ガアッ、グアッ」

「ガー!」

「ガガガガガッ」


ニュースを先頭にして、3姉妹の駆るアリゲーター・ガーガーが、森を駆け興奮の声を上げた。

あるいは「本当に向かうのか、コンチクショウ!」という、やけっぱちの泣き声かもしれない。


この3羽。

ガサチンが「カメオでは、急旋回で振り落とされる」と言って、呼び出してくれた3羽だった。

ニュースは2週間前の殺し合いを思い出し、複雑な気分だが、キリルは上機嫌だった。


「こりゃ、カメオよりいいぜ!

あいつ、速く走れって言っても、私を乗せると、途端にのろのろしちまうからなっ」


木々をすり抜け、風を切り、くせっ毛を振り乱しながら満面の笑みだ。

ファーもまんざらでもない。


「良く見ると、ぶさくて可愛い。ありがと」


親指を立てるファーの隣には、4羽目に乗る「子オクトパス」の姿があった。

ガサチンは、アクセル・カメオにゴブリンの護衛を任せ、自分はニュースたちに付いてきたのだ。

ニュースが後ろを向きガサチンを見つめると、ガサチンが己の体に、赤い文字を浮かび上がらせた。


『ナンダ?』

「いえ、何でもないわ」


ガサチンのことをもっと知りたいけれど、今は気を散らしている場合じゃない。

ニュースは前を向き、前傾姿勢をとった。


火災に近づくにつれて、焦げ臭さが強くなる。

それと、熱から逃れる獣たちとのすれ違いも多くなった。


「くっ」


炎を恐れ、鳴き叫ぶ獣たち。

ニュースはやり切れない思いで、ガーガーの羽を掴む手に力が入る。

姉妹を乗せるガーガーたちは、すれ違う獣の群れを器用にかわし、砦へと向かった。


「見ろ、ニュース姉!」


キリルの指差す前方。

火の粉は渦を巻き、絶壁の如く燃え盛る炎。


その中から悠然と姿を現す、赤揃えの集団があった。

炎を自在に操る、父ランバート直属の近衛兵たちだ。


その中心に深紅のドレスをまとった、母ハーモニアの姿を見つける。

火炎を涼し気に浴び、父と手を取り、消し炭となった倒木を越えてくる。


「お母さま!」


「ニュース、キリル、ファー、なんてことなの。

本当に、魔獣に乗って現れるなんて。

あなたたち、どうやってアリゲーター・ガーガーを手懐けたの?」


「お母さま、聞いて!」


「それにそっちはデス・テンタ……いいえ、違うわ。

デス・オクトパスの幼体ねっ。

なんて珍しいこと。


ちょっと待って。嫌だわ、意味が分からないわ。

ねえ、あなた。

うちの子たち、デス・オクトパスをテイムしているわ。

私の娘って、凄すぎないかしら」


「少し落ち着きなさい、ハーモニア」


「お母さま!」

「何かしらニュース。今さら謝っても、許してあげないわよ?」


ニュースは目をそらさない。


「ええ、分かっております。どんな罰でも受けます。

ですからお母さま、近衛を退いて下さい」


ニュースの突然の提案に、ハーモニアがきょとんとする。

あごに人差し指を置いて、小首を傾げた。


「もう、家出はおしまい?」

「ええ、そうです。私たちを連れて帰って下さい」


「あなた、どう思います?」

「それで良いじゃないか。ニュースも罰を受けると言っているのだから」


「そうねえ、少し残念だけれど、あなたが言うのなら……

でも一つ質問があるわ。

魔獣テイムも興味があるけれど、あなたたちこの2週間、森のどこで過ごしていたのかしら?」


「それは」

「私をそこへ連れて行きなさい」

「できません」

「なぜ?」


「…………」


「答えたくないのね、別にいいわ。

そうねえ、火を付けたのが1時間くらい前だから……

いつあなたたちが、火事に気づいたかにもよるけれど。

少なくてもアリゲーター・ガーガーで、1時間以内の範囲にあるのね」


「お母さま、止めて下さい!」


「あら、何を止めるのかしら?

私がその1時間の範囲まで、森を焼き払うとでも?

まあ、その通りなのだけれど」


「お母さま!」


「おいハーモニア、なにもそこまで。

ニュースたちをおびき寄せるためだけの、付け火だっただろう?」


「ごめんなさい、あなた。気が変わったわ」


父の(たしな)めも聞かなければ、もう母は止められない。

ニュースの母はそういう人だった。


「くう……」


歯を食いしばるニュースの両脇で、キリルが伸びをして、ファーが首をこきんと鳴らした。


「あーほら、やっぱそうなる。だから言ったろニュース姉。

オフク……お母さまは、そういうノリなんだって」


「ニュース姉、私も知ってた」


妹たちの悟った言い様に、ニュースの心はささくれ、母への感情がこんがらがる。


「くううううっ、どうして!

お母さまは、どうしていつもそうなんですか!」


「なにかしら?」


「澄ました顔で、むちゃくちゃを言う!

誰が何を言っても、意に介さない!」


「それは、お互い様でしょう?」

「お互いなんかじゃないわ! そんなんじゃない!」


「あら、癇癪(かんしゃく)おこしちゃって、お子様ねえ」

「起こしてなんかない! 私は! 私は! 私はああっ!」


「御託はいいわ。嫌なら止めてみせない」

「ええ、止めて見せますとも! ええ! やるよキリル、ファー!」


「そう来なくっちゃ!」

「やる気だけしかない」





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