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22 焦土に咲く再会の火


「お母さま……っ」ギリッ


ニュースは、母の苛烈さを見せつけられ愕然とする。

木から降り、カメオの背からも飛び降りて、デス・オクトパスへ駆け寄った。


掘っ立て小屋からは、荷をまとめ、大きなカゴを背負ったゴブリンたちが続々と出てくる。

パルとググーも、それぞれ親に手を引かれていた。

その様子を見つめ、ニュースは問う。


「ガサチン、西へ退避するのですか!」

「ソウダ」

「くうっ」


ニュースはそれだけを確認すると、拳を強く握りしめ、自分の足元を(にら)みつける。

硬く強張り、様々な思いが入り交じり動けなくなった。


ぺちぺちぺちぺち。

妙な音がするので視線を上げてみると、ガサチンが親オクトパスの腹を、触手でぺちぺち叩いていた。

親オクトパスの体が明滅し、ガサチンがニュースへ語りかける。


『ニュース、止マッテイルノカ?

ソレデハ、芋スナノ的ニシカ、ナラヌゾ。

フィールドデ、立チ止マル馬鹿ガ、ドコニイル』


「なっ」


『絶エズ動ケ。視界ヲ狭メルナ。

フィールドデ、何モカモガ、ウマク行クト思ウナ。


願イヲ、幾ツ抱エテモ構ワヌガ、

限ラレタ時間内ニ、叶ウノハ、セイゼイガ1ツ。

イヤ、ソノ1ツモ、ママナラヌ。

塵芥(チリアクタ)ニ、終ワル』


ニュースはまじまじと、親オクトパスに乗った、子オクトパスを見つめる。

まさか魔獣に、戦場の心得を教わるとは思わなかった。


「ガサチン、あなたは一体!?」


『迷イトハ、幾ツモノ欲ニ、絡メ取ラレタ心。

ナラバ、心ヲ捨テヨ。

グリップヲ、握リシメ、白クナッタ指先ノ、感覚ダケヲ信ジロ。


フルオートハ、控エロ。バレルガ、馬鹿ニナル。

基本ハ、移動シナガラノ、3点射ダ。

2拍置イテ、3点射。ソレヲ、心セヨ』


遅れて駆け寄り、ニュースの両脇に立っていたキリルとファーが、姉を(ひじ)でつつく。


「ニュース姉、フルオートってなんだ?」

「バレルってなに?」

「…………最後ちょっと、私も分からなかった。でも!」


ニュースは腰に下げる剣の柄を、強く握りしめる。

指先が白くなるのを感じ、同時に、何度も振ってきた剣の感触がそこにあった。


その剣で、自分は何を守るのか?

差し迫る限られた時間の中で、何が守れるのか?


「キリル、ファー、私はっ」

「いいぜ。何をしたって付き合ってやるよ、ニュース姉」

「ニュース姉、私も付いて行く」


ニュースは妹たちを、強く抱きしめる。

その腕に伝わる温もりの中で、ニュースは腹を決めた。


母親ゆずりの深紅の瞳が、怒りで揺らめく。



    *



赤揃えのアーマーを、装着した近衛兵たち。

その中で一際大きな4人が、闇の森で巨大な戦斧(バトルアックス)を振るっていた。


アックスの武骨な刃には、火炎魔法が付与(エンチャント)してある。

兵士がその重さを活かして、森の樹木へ叩き込むと、立木がいとも容易く燃え上がっていく。


コードウェル家当主、ハーモニア・コード・コードウェルは、闇の森を決してあなどりはしなかった。

ここがどれだけ恐ろしい場所かは、身をもって体験し承知している。


だからこその、派手な火付けであった。

夫のランバートが、燃え盛る炎に渋い顔をした。


「なにも、ここまでせんでも」


「あら、森を舐めてはいけませんわ。ここは死地ですのよ。

ニュースたちは砦に居なかった。

けれど砦内に、微かに残る真新しい焚火の跡。


ここに居たのは間違いないでしょう。

けれどその後、どこへ行ったのか」


ハーモニアは燃え盛る森を眺める。


「私が3日持たなかったこの森に、あの子たちはもう2週間も滞在している。くやしいわあ。

ニュースは優しい子だから、曲がったことが嫌いなの。

理不尽に燃え盛る森を見て、どう思うか。

私が何をしようとしているのか、近づいて確認せずにはいられないわ」


ハーモニアはこの状況を、他の近衛たちに、物体を透過し遠視できる魔導具で監視させていた。


「……あいつらが、炎で死ぬとは思わんのか」


「これぐらいで死ぬようなら、コードウェルの名は継げません。

あの子たちは、この火災をどこかで見ているはず。

立ち昇る煙を見て、どう思っているかしら?

私を感じてくれているかしら?」


「むうっ」


子供たちが行方知れずだと言うのに、楽しげに振る舞う我が妻へ、ランバートは(うな)るしかない。

そんなランバートの元へ、駆け寄る近衛が一人。


ひざまずき、己の「視た」ものを報告する。

その内容にランバートは目を()き、ハーモニアは目を輝かせた。


「まあ、たくましいことっ」






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