第3話:100円ライトが引き起こす『市場崩壊(ざまあ)』 〜数十億円の通行料ビジネス、1万円のレンタルライトで破産しました〜
その頃、第11層『常夜の森林』、中央ルート。
「な、なんだあの光はぁぁぁぁっ!?」
メガ・アビス社直属の超大型探照艇『ルミナス号』の甲板では、現地責任者である重役のシルバー局長が顔を真っ赤にして悲鳴を上げていた。
彼らは「安全な通行保障」を盾にして、1回につき数百万円という不当な通行料を一般冒険者から巻き上げ、我が物顔で暗黒森林の利権を独占していた。
だが突然、森林の奥から「真昼の太陽」と同等……いや、それ以上の超極大の光が照射され、11層全体を包んでいた暗闇と、光を恐れる凶暴なモンスターどもが一瞬で雲散霧消してしまったのだ。
「ほ、報告します! 第11層全体の暗黒環境が完全消滅! 潜伏していたモンスター群も全滅しました! これにより……我が社の誇る『大型魔導探照灯』の需要が……ゼロになりました!!」
「な……なんだとぉぉぉっ!? 数十億円かけて建造した探照艇だぞ!? 我が社の誇る通行料ビジネスはどうなるんだ!!」
「あ、あのー……あ、あちらをご覧ください!」
部下が震える指で指さした先——真昼のように明るくなった黒森の向こうから、トコトコと歩いてくる三人組の姿があった。
100円のLEDライトを掲げた蓮。
タブレットと契約書類を手にしたエレナ。
そして、巨大なスチームドリルを肩に担いだマルカだ。
エレナは不敵な笑みを浮かべ、泡を食っているおっさんの前に仁王立ちした。
「あら、メガ・アビス社のシルバー局長じゃない。お困りのようね?」
「エ、エレナ……! お前、左遷されたくせに一体何をしやがった!!」
「何って? 11層の暗闇とモンスターを綺麗さっぱりお掃除して、一般冒険者のみなさんに『100円の太陽光ライト(安全保障付き)』のレンタルを開始しただけ。……あ、ちなみにレンタル料は1台につき1日1万円となっております」
「な……いち、1万円ぇぇぇっ!? 我が社が数百万円で貸し出している探照艇に対して、1万円だとぉぉぉっ!?」
「ええ。原価100円だから利益率は抜群。1000万円の通行料なんて払わなくても、1万円でこの階層を昼間と同じように歩けるんですもの。誰があんた達の時代遅れで高額な探照艇なんて使うかしら?」
「ぐ……っ!!」
エレナは眼鏡のブリッジをクイッと指で押し上げると、冷酷なキャリアウーマンの瞳で宣告した。
「これにて、メガ・アビス社が誇る11層の通行料利権は完全壊滅。今まで立場を悪用して不当に冒険者たちを買い叩き、利益をむしり取ってきた報い……たっぷり味わいなさい!」
「ぐ……ぐわああああっ!? は、破産だぁぁぁっ!!」
数十億円の投資が一瞬で紙くずとなり、利権を失った重役シルバーは目を見開いたまま泡を吹いて倒れ込んだ。
……と同時に、ルミナス号の後方に足止めされていた大勢の一般冒険者たちから、割れんばかりの大歓声が巻き起こる。
「「「不遇の三銃士バンザイ!」「メガ企業の悪徳利権から解放されたぞーっ!」「1万円で昼間みたいに探索できるなんて夢みたいだ!!」」」
これまでメガ企業の横暴に耐えるしかなかった冒険者たちが、100円ライトを手にした蓮たちをまるで英雄のように称え始める。
「あ、あの……みなさん、ライトはまだたくさん予備がありますから、順番に並んでくださいね~」
蓮が控えめに呼びかけると、冒険者たちは歓喜の声を上げて群がり、1万円のレンタル契約が瞬く間に結ばれていった。
「ふふ、これでまた我がクラン『不遇の三銃士』の資金は爆増、メガ企業の浅層利権は完全に崩壊ってわけ」
エレナが手元のタブレットで売上グラフを爆上がりさせながら、満足そうに頷く。
「はい! 蓮様の100均ライトとスキルのおかげで、この階層の誰もが安全に過ごせるようになりましたわ!」
マルカもドリルを誇らしげに掲げ、ニッコリと微笑んだ。
メガ企業の不当な独占を叩き潰し、一般冒険者たちに希望をもたらした『不遇の三銃士』。
100円の備品と「刺身にたんぽぽ」のスキルによる快進撃は止まらない。彼らはさらなる利権の陰謀と、地下深く眠る真実を目指して、第12層へと進んでいくのだった——。




