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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: 御度宇雲(おどぅ~ん)
パートせゔん 突発!カオスな大決戦

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そのヨンジュウナナ 凡野仁美

「そ、そそそ、そんな、そんなこと……3号?お前が?グロゲロの記事投稿作者だなんて?そんな偶然が?そんなバカなことが?現実で許されていいわけないでしょうぉぉぉぉぉ?!」

 カニ円盤の代わりに口から泡を飛ばしながら、コクピット内の八ッ神恐子は、全身ガクガク目を白黒。もはや卒倒寸前だ。

 そしてその有様は、追い込んだ元凶・仁美にも、流石に気の毒に映る。申し訳なさげに頭の後ろを掻きながら。

「あ〜いやぁ、()()()()さ?確かにそこはお気の毒だけどぉ、そもそもさ?このお話は元からそーいういい加減な……モガ!」

 ――ストップ仁美くん、「このお話は」は流石にメタいが過ぎる。さつきさん、口封じと説明よろしく!――

 うっすら天意を悟ったさつきが、そんな仁美を背後からガバと羽交締め、口を押さえた。そしてジタバタもがく仁美の肩口からヒョイと顔を出して。

「ニャハハ♪恭子違う違う!()だよ。いいかい?

『お前が造った怪物の元ネタを考えたヤツが、たまたまこの町にいた』んじゃない。

『こいつがこの町にいたから、お前はこいつの考えた怪物を造っちまった』のさ。

 恭子、()()()()()()()()()()()んだよ、()()()()()()に、()()()()()で!

 ……ほら、この仁美とかいう娘っ子のこと、もっぺんよぉく見てごらんよ。昔教えたろ?ほらこうやってこう♪」

 仁美に向かって、さつきは両手の指をくねくねと組み合わせる。隙間から覗くと妖の正体が見えるという印形、世にいわゆる「狐の窓」だ。

「え?こうやって?こう……別に何も……あああああ!」

 怪訝に首を傾げながらもさつきに言われるまま、指を組んで仁美を覗く八ッ神恐子。一瞬置いて、たちまち驚愕。

マイナス霊能力者ですって?それもこんなに強大な負霊力を??

 ……だから工場跡で……私の心眼縛魔の術が……!」

「そそ。あたしの傘もさっき、こいつにガッポリ()()()ちまった♪たいしたモンだよこいつ!

 ま、自分じゃ自分のこと、ぜ~んぜんわかってないみたいだけどね」

「え?なになに?マジ?あたしに?あるの?何か特別な力……モガモガ?!」

「ほいストップ!なぁお前?あとでちゃんと教えてやるけど、今じゃないだろ?お前たちにゃ、やんなきゃいけないことがあるんじゃなかったかい?」

 そう言って。急き込む仁美の口を塞ぎながら、さつきは今度は早苗にサッと目配せ。

「仁美」

 親友の返してきた目つきは真剣そのもの。仁美もさつきにジタバタ抵抗していた力を納める。

「そうだね、そうだった!ゴメン早苗、今は何より厳じいと先生だったね!こうしてらんない、行こう!

 ……さぁノッコも!!」

 そうだ、ノッコはどうしていたのだろう?はっとした早苗は、仁美の視線をたどって彼女が倒れていた辺りに目を向けると。

「いいえセンパイ。わたしは行けません」

 一体いつから、ノッコは気絶から目を覚ましていたのか?

 仁美が呼びかけたその時、彼女はすでにすっくと立ち上がっていて、そして。

「お養父さんのこと、お願いします」

 顔はかっきりと上空を見上げていた。その視線の先にはもちろん……

 そうだ、たとえ一時の好奇心に駆られたとはいえ。ヤスデはあれほどの怒りと焦燥に燃えていたはず。では何故、仁美と恐子のあの長くクドく、一見くだらない問答を途中で遮ろうとしなかったのか?

 ――途中からまるで聞いていなかったから!仇敵の覚醒に気付いて!

 ああ二人はいったい、いつから見つめ合い続けていたのか?

「わたしはヤスデちゃんとここに残ります。二人きりにして下さい」

「小姫様!しからば某も……」

 すわとノッコの中に飛び込もうとする槌の輔、だがそれは出来なかった。離れていてもわかる、今ノッコは、己の意思と霊力で槌の輔の憑依を頑なに拒んでいる。

「ダメ。ツッチーも早苗センパイと行って。わたしは一人で大丈夫だから」

 ノッコのその言葉に、ヤスデはたちまち激昂し。

「一人で大丈夫?……バカにしてェェ!こっちこそ!こいつは、あたしが絶対自分一人でやる!

 ……恐子ぉ!これでコンビ解消だ!アンタも邪魔だ、もうどっか行っちゃえ!!」

 一息でそう言い放つと、ふいとまた声のトーンを落として、ささやくように。

「……ねぇ恐子。アンタがどこで何しようと、もうあたしにはカンケーない。そいつらに頭下げてつるむつもりなら、それでもいいよ。でも一つだけ、気がついてないみたいだから教えてやる。

 今アンタ、ホントはチャンスだ、それも最後の大チャンス!

 だって。アンタが()()()()()()()()()!今ならガラ空きじゃないか!そうだろ恐子ぉ?!」

「……ああ!」

 そうだ、その通り!

 巌十郎と土蜘蛛がどこかで争っている今なら、()()()()は防備がガラ空きではないか!

 ……迷う、女妖術師は首を左右に振って惑う。だがそれは、ほんの一呼吸ほど。

「さっちゃん。ごめんアタイ……やっぱり諦め切れない。大蛇様の復活は、アタイの夢なんだ、ずっとずっと夢だったんだから……ごめん、おっ母ちゃん……

 ……アタイ行くよ!!」

 その一言を残して、円盤は八ッ神恐子を乗せて虚空に掻き消えた。

 どこに?

「恭子……?」一人ため息まじりに首を傾げるさつきの側で。

「あー!そっか、ヤバいヤバい早苗!!」

「むむ巫女殿よ!これはいかん!!」

 慌てふためく二人。八ッ神恐子の向かった先とは?


「……そうよ、もうこうなったら今しかない……今しかないのよ、御免なさいさっちゃん!」

 怪円盤がワープアウトしたその場所。

 すなわち、鴻神神社。正面参道の鳥居前!

「今なら……あの爺さんがここにいない今なら!蛇神の封印を破るなら今、そして蛇神が世界の霊的秩序を破壊してくれれば、大蛇様をお呼び出しすることも……出来る!

 ああ、今だったら!!」


「ううん、大丈夫よ仁美。槌の輔様も。御社みやしろのことはご心配には及びません」

 だが、一人早苗はきっぱりとそう言う。

 その声は確かに幾らか震えている。だが、それはどうやら祖父と土屋を案じてのことのようだ。二人の戦いは一刻も早く止めなければならない、当然彼女にも不安や焦りはあるだろう。

 だが早苗は、彼女も気がついているはずの鴻神神社の危機の方には、不思議にもまるで重きを置いていないようだ。

 それはなぜか……いやむしろ。

 早苗には、大きな別の心懸かりがある。ノッコのことだ。

「でもノッコ?あなたは?本当に一人でいいのね?」

 一言一言、噛み締めるように早苗が問うと。

「ハイ。早苗センパイはみんなと、センパイのおじいさんを止めに行って下さい。わたしのお養父さんもどうか……」

 ノッコの返事は毅然として、しかしあくまで涼やか。そしてそのノッコの声の調子を、早苗は聞いたことがある。それはノッコが蛇神の御子・小姫祝子として、決意を持って何かを語る声。

 清冽な神威がひたひたと、早苗の心を打つ。そうだ、今ノッコは……強く()()している!よくわかった、この場には、何人も他にいてはならない。

「うん、まかせてノッコ!二人のケンカは、私たちがすぐに終わらせてみせる!だから、()()()()

 ……行こう仁美!槌の輔様参りましょう!猫又さんもどうかご一緒に、私たちにあと一押し力を貸して下さい!」

「ニャハ?モチ、いいけど!こうなったらもう行きがかりだし、あたしも土蜘蛛様にお会いしたいしね。

 でもさ?どこにどうやって行くんだって?」

「まず先生の家まで!口裂けさんたちと左波島くんを先に送ってあります。

 多分もうみんなが奥様やニコから、お師匠の様子を聞き出してくれてるでしょう。まずその話を聞いて……」

 緊急事態、だが早苗はあくまで慎重。必要な用心は怠らない。

 師・巌十郎の霊能者としての格の高さを、彼女はすぐ側で仰ぎ見上げて来た。彼のあの力がこちらの仇となった時、その恐ろしさはいくばくか?そして一方、かつて蛇神をも苦しめたという妖総大将・土蜘蛛すなわち土屋の力も、早苗には計り知れない。

 しかしその二人があろうことか今、かの地で激突している!

 そんな修羅場に、何も知らずにいきなり飛び込む無謀は犯せない。たとえわずかでも事前情報は必要だ……そしてその早苗の判断は、実に正しかったのだ。さもなければ今頃全員、メリーさんの二の舞になっていただろうから。

「それからみんなで一緒に丘の上公園に……あ、そっか!困ったな、どうやって行こう……?」

 ただしもちろん、早苗も一人のまだまだうら若き少女だ。全てにおいて完璧ではない。

 先ほど急な思いつきで使った「流し拐いの術」、もちろん慌てていたし、初めてのこととて効き加減の事細かい調節は出来なかった。だから八尺様を二人とも(何故二人いたのかは早苗には以下略)あちらに送ってしまったのだ。

 そう、ここから土屋宅への移動手段は、早苗には確保出来ていない。

 連絡して一人戻って来てもらうか?困って小首を傾けた早苗に、今度は仁美がドヤ顔で自分の胸をドンと叩き、

「ムフ〜ン、大丈夫!あたしのグロゲロちゃんたちに任せて♪

 ……ハ〜イみんなぁ聞いて聞いて!いいかな?急いでマザーちゃんの周りに、輪になって輪になって♪」

「「「「ハイ、ママー♪」」」」

 仁美のその姿、ママというより保育士さんの風情だ。そして銀の怪物たちもまるで幼稚園児のお遊戯のように、その仁美の掛け声に嬉々として(?)従い、アークマザーを中心にたちまち一つの円陣サークルを作り出す。

「早苗、それと猫のさっちゃんだっけ?あたしと一緒にあの輪の中に入って!みんなが送ってくれるから」

「あ〜……そういや、さっきの……あのデカブツが地面からズモズモ〜って湧いて出て来た……アレ?」

 アークマザーの最初の出現。さつきはその光景を思い出した。

「アレで?向こうに?」

「エッヘン!『空間転移』は、進化前からグロゲロちゃんたちの得意技だから!行ける行ける!」

「いやそりゃあ……」

 聞いてさつきはたちまち怖気を震う。

 謎の怪物が、謎の怪物をワープさせる。そりゃ出来るんだろうさ、同族同士なんだから。でもその力に自分たちが巻き込まれて運ばれるってのは?

 どう考えてもぞっとしないではないか。

「大丈夫かい?ホントにぃ?……ニャゴワァ!待てちょっと待てって!!」

「いーからホラホラ、入ってさっちゃん!」

 露骨に嫌そうな顔のさつきの腕を、かまわずグイグイ引く仁美。高位の猫又であるさつきだ、普段ならただの女子高生の力など容易に振り解けるのだが。

(こいつ、やっぱりわかってないね!なのに都合のいい時だけそうやって……()()()で引っ張るなぁ!……ニャハハ、ダメだ勝てニャい……)

 仁美の謎パワーに引き摺られ、さつきはとうとう輪の中に連れ込まれた。

「さぁ早苗も!早く早く!」

「うん」と、こちらは素直に従う。早苗はすっかり悟っている、こういう時のこの親友のノリには敵わないし、妙な信頼感もある。まぁ大丈夫よね、その辺は作者ママのお墨付きがあるんだし、そもそもこのお話の中だし。

 とうとう三人銀色の輪の中に入って、最後に。

「ほらツッチーも!」「槌の輔様、お早く!」

「小姫様……」

 皆に取り残されて地面にぽつんと一人、その小さな体をいっぱいに伸ばして。彼はまだ、彼方で上空の強敵と対峙している己が主の姿を見つめていた。

 だが彼にもわかる、感じる。早苗の感じたものと同じ、祝子の侵しがたい、余人には決して曲げることの出来ない神意。

「……よし参ろう!!」

 ついに槌の輔は一飛びに跳ね飛んだ。降り立った先は早苗の肩の上。

「よおし、じゃあみんな、()()()()()()()()()()ね♪行き先はかくかくしかじか、オッケイ?」

「「「「ハイ、ママ〜♪」」」」

「でわ、しゅっぱぁぁぁぁつ!!」

「ルルルルルゥ〜♪」

 仁美の号令で、遊園地のアスファルト舗装された地面があたかも水面であるかのように、アークマザーと銀の円陣サークルはたちまちズモズモと下に沈む。

 そして四人の姿も共に消えていく……

「ニャギャァ!いやこれ絶対死ぬ、死ぬって!ヤダヤダ、ミギャァァァァ……ガプ!」

 まさしく死にそうな顔でもがき逆らうも、結局ぽちゃんと地面に沈んだ、さつきの顔を最後にして。


 円盤から降り、八ッ神恐子は単身鳥居を駆けくぐる。

 神域一般に自然発生的に存在する、低級不浄霊を斥けるごく弱い力場。それは当然ここにもある。が、今この場所にそれ以上の特別な霊的守護力は感じない。

 出来る。

 恐子はゴクリと喉を鳴らし、息を呑む。そしてぐるりと辺りを見渡す。

「社殿かしら?石碑のどれか?それとも御神木?」

 彼女が探そうとしたもの。この社に於ける蛇神の魂の封印、その()は何か?

 だがすぐに考えるのを止めた。迷っている暇などない。最早チャンスは、この一度きりかも知れないのだ。

「……いいわ、片っ端から!」

 順繰りに、すべて破壊していくのみ。

 八ッ神恐子は、普段は暗所でも付けたままだった青いサングラスを、その場にかなぐり捨てる。度無しの色レンズが、参道の玉砂利にぶつかって粉々に砕けた。

 もうそれは身に着ける意味がない、彼女の両の蛇眼からめらめらとあふれ出す鬼火はもはや、ちゃちな色眼鏡一つなどでは隠しきれるものではない!

かしこかしこき八岐大蛇御大神に、我、出雲は八上のすえ恭子、敬い敬い、なおなお重ね敬いて申す……」

 そして伏せた顔の下に、器のように合わせた両掌を構えると、そこに眼からの鬼火が雫のように涙のように、しとどに落ちて溜まっていく。

「我に力を……」

 作り上げたのは、バレーボール大の鬼火の玉。

「御大神、我に御力を!」

 そして、片手で頭上にそれを差し上げる。狙うは正面、鴻神神社・上社本殿。

「まずそこから、ええい!」

 大きく振りかぶり、その鬼火を今にも投げつけようとした、その時。

「……え?」

 ピタリと動きが止まる恐子。彼方で本殿の扉がさっと開いたのだ。そして。

「やあ。やっぱりおいでになられましたか、八掴さん。お待ちしてましたよ」

 神職の装束をきりりと身につけて、社殿の奥からしずしずと進み出たその人物。

 俊介だ。

(続)

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