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戴冠パレード

きりが良いので少し短いですが投稿します。

城下町にパレードが通る。

空中に舞った者達から、祝いの花吹雪が落とされる。

白い大きな蝶の羽を開いたギーレが王冠をかぶり

煌びやかに装飾された山車の上で市民や祝福する諸侯、見物客に手を振る。

同じ山車の後方で剣を下手に構えた格好で同行するトリストは

その様子を冷めた気分で眺めていた。

「へーへー、確かにご立派な羽ですこと

全然似合っちゃいねーけどな」

小さく呟く。

パレードの随行なので白銀の甲冑に額当てと彼も正装である。

新王はギーレに決まった。


トリストは山車に揺られる中昨晩の出来事を思い起こしていた。

蜘蛛討伐から戻り、トウランスの様子を見に行った時

まだギーレはトウランスの部屋にいた。

「なんだ、まだ居たのか」

「騎士殿」

トリストに気付き毒づき始める。

「今、薬師を締め上げて吐かせたところだ

 何かおかしいと思ったらこいつ羽が捥がれてるんだってな?」

暫くの沈黙ののちトリストは肯定した。

「ああ」

「ちっ!そんな半端者じゃ役に立たん、王の選びなおしだ!」

ギーレが鼻息荒くいきまく。

「ウェンリィ!ウェンリィは何処だ?

 こうなりゃ王になるのは奴か俺かだな!

 へっ、奴になら負けやしないぜ

 畏敬の念もなんも感じねーし、四の五のぬかしやがったら

 あいつの羽もずたずたに引き裂いてやるっ!」

なるほど、同格の羽の場合最後にものを言うのは腕力なんだな、と

トリストは呆れた。


「、、ウェンリィは、、死んだ、、」

荒い息のなかトウランスが切れ切れに呟く。

その声を聞きつけギーレがトウランスを揺さぶり起こそうとするのを

トリストが止める。

「よせっ、怪我人だぞ!」

それでも収まらずギーレが怒鳴る。

「ウェンリィが死んだって?! 本当か?!」


「飛んで、、俺を、、

 蜘蛛の巣が、、乾涸びて、、嫌、、嫌だ、、」

ぽつぽつと熱にうなされながらトウランスが答えるでもなく呟く。

トリストに肩を掴まれたままギーレが問いかける。

「聞いたか?今の?

 熱の譫言じゃないよな?」

「熱の上での譫言だが、真実だろうよ

 幻羽人の腕のミイラが1本落ちてたしな」

それを聞きギーレが笑いだす。

「そうか、あいつ蜘蛛に喰われたのか

 そうかそうか、よしよし、それじゃあ俺が王になるのに何の問題も無い訳だ

 早速主だった連中を集めて」

こみ上げてきた笑いが止まらずあれこれ算段をし始める。

「あ、そういや蜘蛛

 騎士殿、蜘蛛はもう大丈夫なんだろうな?

 俺が襲われたらシャレにもなんねぇぜ」

思い出してトリストに問う。

「ああ、木っ端微塵になってるよ」

トリストは平然と答えた。


「なーんてな、やったのは俺じゃないけどな」

と、ほくそ笑む。

「しかし、あれがあいつの仕業だとしたらミダル様がご執心な訳も解るぜ」

まだ魔術もまともに知らない男だ、ただ力任せに魔力を暴発させただけだろう。

それだけの事だが桁外れの力だというのは容易に理解できた。




ギーレの戴冠の祝賀パレードが盛大に催されているなか

トウランスは一人自室に居た。

熱はもう下がっている、切り裂かれた胸の傷も包帯でまかれ血は止まっていた。

鎮痛剤が効いているのか今はもうそんなに痛みを感じずにすんでいる。

そっと、右肩を抑える。

じっと目を伏せ、睫を震わせていたがやがて決心したように瞳を開くと

全裸に包帯のみを巻いた姿でシーツをガウン代わりに立ち上がる。

姿見の前に立ちシーツをずらし巻かれた包帯をゆっくりと外す。

そして背の羽を広げる。

右の下羽が根元から引きちぎられていた。


声にならない悲鳴が上がった。

涙が後から後から溢れ出てくる。

もう、、自分に光羽は無い。

光羽どころか満足な羽さえ無い。

幻羽人では無くなってしまった。

どうしていいのかわからなかった。

足元がガラガラと音をたて崩れ去り暗闇に落ちて行く。

唯一無二であった羽が無い今、存在理由もすでにないも同然だった。

姿見の前に蹲りただただ肩を抱きしめ震える事しかトウランスには出来なかった。









 





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