魔道
サド心がさく裂してしまいました(ははは、、)暴力的な描写があります。
どのくらい経ったであろう
トウランスは長い間そのまま動けずにいた。
夕闇が辺りを包み始めた頃不意に背後から声がかかる。
「へ~ぇ
光羽ってのは1枚でも欠けると光らなくなっちまうのか
それじゃ唯の透明の羽だな、いや
唯のじゃないか、出来そこないの屑羽だな、トウランス」
振り返ると入口の扉に王冠をかぶったギーレがにやにやと笑い立っていた。
「ギーレ、、」
「『ギーレ様』だろ、トウランス」
蔑む様な表情で尊大に言う。
「しかし、そんな無様な羽じゃ市民にも置いておけんな」
ギーレの言葉が突き刺さる。
羽が無くなるという事の絶望。この世界になんの因も無くなり
何物でもない自分、、、。今までの生が全否定される。
嘆くより唯々どうしていいのか解らず
はらはらと涙が頬を伝う。
その儚く頼りげない様子をギーレがじっと凝視していた。
わずかに伏せられた長い睫に涙が光り
潤んだ瞳、噛み締めて赤みを帯びた唇。
非常に顔立ちの整った綺麗な青年である。
本人にそんなつもりは微塵も無かろうが
その様子は実に艶めかしかった。
ギーレの喉がゴクリと鳴る。
「すぐさま城から出ていけ
、、、と言いたい処だが
なんならこのまま城に置いておいてやってもいいぜ」
そう言いながらゆっくりトウランスに歩み寄り
強引にその腕を掴み胸元に引き寄せる。
「俺の伽奴隷としてな」
「なっ?!」
ギーレに倒れ込む様な格好になり我に返るトウランス。
ギーレがその顎に手をかけ上を向かせる。
「幻羽人としてはカスだが
伽奴隷としてならなかなかの上玉だぜお前
たっぷり可愛がってやるよ」
意図を察してみるみるトウランスの顔が青ざめる。
「今まで男の伽奴隷を持っている奴の気がしれなかったが
お前を見てると悪かねぇと思えて来るぜ」
くくっと卑ねた笑いを浮かべトウランスの肩に手を回す。
「どれ、丁度手回しのいい格好だし
早速味見してやるか」
と、そのまま引き寄せ、首筋に舌を這わせ始める。
びくっと身を強張らせたトウランスの全身におぞ気が立つ。
嫌悪に顔を歪め首を振る。
「い、、嫌だっ放せ!」
思いもよらない否定の言葉にギーレが苛立ち
乱暴に傷口を抑えそのままトウランスを床に押し倒す。
「痛ぅっ!」
打ち据えられた振動がダイレクトに傷口に響く。
「嫌だと?
ちっ、てめぇまだ自分の立場が解っていないようだな!
自分より上位の羽を持つ者からはビンビンに逆らえないオーラが
出ているだろうがっ!」
そう、ギーレは生まれてこの方否定というものをされた事が無い。
自分の思い通りにならない事など無かった。
彼より上位の羽の持ち主が居なかったから彼に刃向う者など存在しなかった。
それを、羽の欠損した相手に拒否され、文字通りキレる。
蜘蛛に負わされた傷口を覆うガーゼの上から掴みかかり
次第にその手に力を込めて行く。
「ああっうっ!」
トウランスの口から悲鳴が上がる。
「俺に抱かれて嬉しいだろう?
ええ?
それとも何か、お前はまだ自分が光羽サマだと思ってんのかよ?
笑わせるぜその千切れた羽でよっ!」
「いっあっあぁ、、」
傷口をかき回されるかのような痛みがトウランスに襲い掛かる。
あまりの苦痛に再び涙があふれ肩で大きく息をする。
傷口からは鮮血が噴き出していた。
トウランスの意識は痛みの為朦朧としている。
「ちっ見ろ
訳の解らんことぬかすから
傷口すっかり開いちまったぞ」
ギーレの手にも血が付いていた。
動けないトウランスの様子を、観念し受け入れたと思い少し機嫌を治す。
「そうやって素直に大人しくしていりゃ痛い目に遭わずに済むんだ
解ったなトウランス」
手に付いた血を拭う。
トウランスがガウン替わりに羽織っていたシーツが床に広がってた。
その身を震わせ横たわるトウランスの膝から太腿を撫で上げ
足を開き持ち上げる。
「おっと、そういやこっちも初モノだったな
それじゃこっちの方も辛いかもな」
ギーレの下卑た笑い声が朦朧とした意識のなか遠くに聞こえる。
嫌だった、受け入れ難い事だった。
男娼などに成りたくなかった。普通の奴隷ならまだ受け入れられたかもしれない。
だがよりにもよって、、、否定の言葉でいっぱいになる。
「まぁ、こっちは慣れてくればすぐによくなるさ」
ギーレの手が執拗に絡みついてくる。
逃げたかった、自由に動けぬ己の身が呪わしかった。
その思いが力を呼び起こす、震える指先に魔力が集う。
はっきりしない意識の為、集中が足らず蜘蛛を倒した時とは
比べようもないくらい微々たる力だった。
だが、、それでも、、、。
「どれ、素直になった事だし
いきなりは可哀想だな、少し慣らしてやるか」
手に入れた獲物を存分に楽しもうと指先を舐めるギーレに
集まり魔法式を組み込まれないトウランスの魔力が行き場を探し暴発する。
爆音と共に閃光が辺りを照らし出した。
いきなりの閃光にギーレは腕で顔を庇う。
袖が焦げ、ぶすぶすと煙が上がる。
「な?? 貴様っ!」
何をされたのか解らなかったが観念したと思っていた相手の抵抗に
ギーレの怒りに再び火が付く。
「はやり、、嫌だ、、断らせてもらう、、」
歯を食いしばり痛みに震えながら、半身を起こしトウランスが消え入るような声だが
しっかりと拒絶する。
「トウランスっ!貴様ぁっ!!」
怒号を上げギーレがトウランスに掴みかかる。
「よぉ、その辺で勘弁してやったらどうだ?」
飄々とした声がそれを止めた。
ギーレが振り向くと、扉に寄り掛かる用に腕を組んだトリストの姿があった。
パレードの時の甲冑姿である。
「あんた、、めっちゃかっこ悪いぜ」
その言葉はギーレの怒りに油を注いだ。
「な、なにをーーっ!」
殴りかかろうとするギーレをひょいっと避け、トリストはトウランスの前に
座り込む。
「しかし、なんつー挑発的な格好を、、、
あ、そういや脱がしたの俺が、ははは」
すまんすまんと冗談めかして謝っていた顔が真顔になる。
「ひでぇな、、」
トウランスの顔からは血の気が失せ、肩と胸の傷口を抑えていたガーゼから
鮮血が溢れしたたり落ちている。
「そいつは俺の奴隷だ!
どう扱おうが俺の勝手だ!
余計な口出しをするなっ!!」
ギーレが怒鳴る。
自分の言葉に後押しをされ自信にあふれた声でギーレはトリストに命令した。
「大体いきなり入ってくるとは無礼千万っ!
さぁ、さっさと出ていけ!
俺は今からそいつを2度と刃向えんように
じっくりと調教するのに忙しいんだからな!」
自分の権力を確信している声であった。
王の自分逆らう者など白の剣士といえどいる訳がない。
もし、居ようものなら許しはしない!尊大に構えるギーレに
冷めた口調でトリストが答える。
「調教ねぇ
責めて泣かせて、嬲って?
下衆な野郎だな、あんた」
「黙れ!黙れ!!
俺は王だぞっ!この国の支配者だっ!
一介の白の剣士の分際でよくもっ!
大体貴様の用はもう済んだろう!
さっさとこの城から出て失せろっ!!」
口角に泡を飛ばし怒鳴るギーレ。
「あんた、何か勘違いしてねぇか」
怒髪天を衝くギーレの様子を涼しく受け流しトリストがほくそ笑む。
「俺に命令できるのは白の王と王子シュリアン様だけだぜ?」
口は笑っているがその眼光は鋭い。
「まぁ、それと俺の愛する女、とな」
軽くウインクしてみせる。
どこまでが冗談なのか本気なのかつかみどころのない男ではあるようだ。
毒気を抜かれたようにギーレは黙った。
「こいつの答え次第では、あっさり出て行ってやるから
もう少しそこで待ってろ
基本的に幻羽人同士のいざこざに首を突っ込む気はないからな
別にあんたがサドで下衆なホモ野郎でも一向にかまわんさ」
あまりの言い草にギーレの口から、おいっ っと突っ込みが出る。
改めてトウランスに向き直る。
「トウランス、大丈夫か?
意識はしっかりしてるな?」
痛みで朦朧とはしているが、トウランスはしっかりと頷く。
「よし、よく聞けよ
今一度だけ問うぞ?
魔術に生きるか?」
魔術に生きる、、、。
それは奴隷からの解放を意味する。
もう迷う事など何もなかった。
トウランスは気を抜くと手放しそうになる意識を奮い立たせ
トリストを力強い瞳で見つめた。
「、、、ああ。」
短い言葉ではあるがトリストの言葉を受け入れる。
「よし」
その言葉にトリストがニヤリと会心の笑みを見せる。
「と、いう事で
聞いたとおりだ、王サマ
悪いな、こいつは俺が預かるぜ」
ひらひらと、はい、さよならとギーレに手を振る。
ふるふると怒りに震え怒鳴るギーレ。
「たわけっ!!
貴様などの好きにさせるかっ!
どこまでも愚弄しおって!許さんぞっ!!」
握り拳を突き上げ威嚇する。
「へぇ、面白いことをいうねぇ
許さん、、か」
すっと立ち上がりギーレに振り向きながらトリストは剣の柄に手を掛ける。
「言っとくが、俺に支配者の羽のオーラなんてのは効かねぇから
あんたをぶった切る事ぐらい屁とも思わんぜ?」
ギーレはその眼光に射すくめられ思い出す。
白の剣士はあの蜘蛛さえ倒す相手だという事を、、。




