ニニデ解放 5 解放
短いですがきりがいいので。
グローリアはそっとリプルに手を差し入れた。
自分を中に受け入れてくれるかが心配だったがグローリアの意図を察してかリプルは彼女を拒ばなかった。
リプルの中に蹲るカインをそっと抱きしめる。
「大丈夫、目覚めなさい
貴方の力を貸して頂戴、カイン」
そう語りかけ、グローリアは習ったばかりの呪文を唱える。
そして自らの手首を切り血と共に最後の呪文に魔力を込める。
「リバース!」
閃光と共に魔力が解放され、、光が薄れた時にはカインを抱きグローリアがリプルの実から外に出ていた。
その姿を満足そうにエクセルが見つめる。
術の成功は疑いようが無かった。
グローリアの胸に抱かれたカインはゆっくりと瞳を開く。
「こんにちは、カイン」
グローリアはカインを大地にそっと下ろす。
カインは10歳前後の少年の姿をしていた。
ずっとリプルの中に居たせいかその線は細い。
「ようこそ、幻羽世界へ」
そんなカインにグローリアは優しく微笑む。
「そうね、何からお話すればいいのかしら、、、
まず言葉を教えるべきですわね」
そう、カインは生まれたばかりと言っていい、まず言葉を教えてそれから、、と
グローリアが段取りを考え始めた時にカインが言葉を発する。
「解りますグローリア姫
貴方の記憶が教えてくれましたから」
聡明そうな瞳でカインがグローリアを見つめる。
「え?何ですって??
私の記憶??」
グローリアが叫ぶ。
「ああ、そういえば記憶も一緒にコピーするみたいだな」
思い出したようにエクセルがそう言う。
「ちょっ、、聞いておりませんわよ兄上っ!!」
寝耳に水だった。
「たかが2~3年なら断片的な表層意識と簡単な記憶だけだ
そんなに気にすることはないだろ」
エクセルの答えにグローリアは悲鳴に近い声を上げる。
「気にしますわよっ!
たかが2~3年じゃございませんものっ!!」
「100年ですよね、グローリア姫」
にっこりとカインが微笑む。
「そ、そんな事まで??」
グローリアの顔が青くなる。
「ど、、何処まで知っていますの??」
「少なくとも姫のここしばらくの記憶と知識、所得している魔法、、くらいは」
「そ、、それってグローリア姫が2人状態って事ですか?」
トリストの顔も青い。
「流石にそこまでは」
とカインは苦笑する。
だが、かなりの記憶を受け継いでいるのは間違いなかった。
「手間が省けてよかったじゃないか」
しれっとそう言うエクセルにグローリアが噛み付く。
「兄上?!」
先ほどまでの自信に満ち溢れた表情はどこへやら恨めしげにエクセルを睨むグローリアは涙目状態である。
知られて困るような記憶は、、無い、、筈である、、。
筈なのだが、、、考えれば考えるほど悶絶ものだった。
そんなグローリアを微笑ましく思いながらカインが改めて臣下の礼を表す。
「グローリア姫
姫から頂いたこの知識と時間
姫のために使わせて頂きます」
カインにはミューズと違い自分の時間は譲渡された100年しか無い事が解っていた。
それでも世界を見せてくれた姫の為に自分の時間を使う事に躊躇いは無かった。
カインは黙ってその場に付いて来ているイアロニに向かい問う。
「イアロニ様
僕に純粋な白の源は存在しますか?」
イアロニは頷く。
「確かに君には解放に必要な白の源がある」
「ならば向かいましょうニニデへ」
カインは力強くそう言った。
かくして緑の里に別れを告げ、グローリア一行とトウランス、エクセル、グラン、リューズ、トリスト、シェラ、ルーファス、イアロニ、カインはニニデの洞窟へ戻る。
今カインの足元にはニニデの封印があった。
自らのマナを込めカインか解放の呪文を唱える。
「オープ」
封印は光を発しその場にニニデの空間を繋げる。
広い空間だった。
いたるところにリプルに似た球状の中に眠る白の一族の姿があった。
来るべき黒の一族との戦いにそなえ眠りについていたのである。
それは黒の一族が居なくなった幻羽世界におけるパワーバランスを考えた白の王妃の指示であったと言われている。
幻羽世界は幻羽人の世界であると彼女は考えていた。
ニニデには王子シュリアンの本体と5000人の白の一族が眠って居る。
全て魔術師、剣士はマスタークラスおよびそれに準ずる即戦力の者たちだった。
グローリアは眠る白の一族の中を掻い潜り一段高い台座に置かれている球体に走りよる。
そこには王子シュリアンが眠っていた。
「シュリアン様」
優しくシュリアンの名を呼ぶ、その姿は白の居城で眠りについているシュリアンと寸分違い無い。
シュリアンの眼が呼びかけに答えゆっくりと開く。
「、、、あね、、うえ?」
シュリアンにはフローライトに見えていた。
「いいえ、グローリアです
貴方の妻ですわ」
グローリアはそう言って悠然と微笑んだ。
そして時代は大きく動き出す。
新たな黒の一族との戦いが始まろうとしていた。
幻羽婦人と彼女は呼ばれている。
光神幻羽の奥方と。
その姿はまだ年端も行かぬ少女、大きな触覚を持つ彼女は亜幻羽人と分類される姿であるが
その儚げな美しさを損なうものではなかった。
彼女は思う自分は何を捜していたのか、、と。
それすらも忘れてしまっている。
彼女は忘却の河の混沌を漂う。
目前に漂うのは微かな光。
時を動かす者が現れたとき彼女はそれに呼ばれるかのようにその者に姿を見せる。
彼女は何処にでも居、何処にでも居ない者だから、、。
何者にも害されず世界に接触する事も許されてはいない。
彼女に残されているのは成就されなかったという想いと裏切り。
失敗し粉々に飛び散った。
本当に裏切りがあったのか、それが誰だったのか、、、
粉々になったピースの核は何処に行ったのか、、。
全ては目前の混沌に中にある筈なのに何も見つけ出せない。
彼女は漂う。
無限の闇を一人、、、。
何時までも何時までも、、、。




