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ニニデ解放 5 鍵の少年

「トライアント様

 お聞きしたいことがございますの

 この度お伺いした本当の用件です」

グローリアは簡潔に訪問の理由を話す。

「カルナ?

 ああ確かに彼女の息子、カインというが彼ならここに居ますが

 だが、、」

「どうかしましたの?」

「その眼で実際見ていただいたほうが早いな

 案内しよう、こちらです」

「あ、では我々はシェラの元にお願いできないだろうか?

 彼女に会わねばならないんだ」

トウランスがトライアントに申し出る。

シェラに残る核を排除しないと彼女は助からない。

「シェラに?

 彼女もリプルの林に居る、そう離れた場所ではないから共に案内しよう」

「リプルの林?

 カインもリプルの中に居ますの?」

グローリアの言葉にトライアントは静かに頷いた。



リプルの林。

リプルの群生地である。

貴重な植物故に他所では大量にに生えることは無いが緑の聖地にはこれでもかという具合に群生している。

トライアントが日課として植えていた結果だという。

そして群生している実はほぼ空の状態だ。

ルーファスが居たリプルはフローライトに近い場所に彼を居させようとの配慮で湖の傍に植えられていたものだった。

緑の聖地ではその他にもたまにぽつんとリプルが生えている。


シェラは比較的群生地に入って直ぐの場所に居た。

ヌークも共に居、話をしていたようだった。

一行に先に気が付いたのはヌークだった。

「母上?」

母の視線がそれたのに気が付いたシェラがそう言いながらヌークの視線の先を見る。

トリストとリューズが走ってくる。

「シェラ!無事か」

リプルの中に居る事態ですでに無事ではない状態なのだが一見するとすこぶる元気そうに見える。

「トリスト、、どうやってここに、、」

緑の民が白の一族とはいえやすやすと他種族を招き入れる事が無い事をシェラは知っている。

と、リューズの背後に居たエクセルに気が付く。

「お前はっ!」

忘れもしない自分を倒した黒の魔術師、それが緑の聖地に?しかもトリスト達と共に?

シェラの困惑を他所にエクセルは彼女を見自分の魔法の核を確認する。

すっと右手を上げるとシェラの胸から小さな黒い針のようなものが飛び出してきた。

「!!」

小さな黒い針はエクセルの手の上で浮いている。

「へぇ、それが『核』なんだ」

グランが興味津々でエクセルの手の中のものを見る。

こんな小さな物が死を招く脅威になるのか、、と。

「今のは、、?」

シェラは自らの胸から出た何かを探るように核が飛び出た小さな傷をなぞるがそれも直ぐリプルの作用で塞がる。

「シェラもう大丈夫だ」

トウランスの声と共にエクセルは手の中の核を握り潰した。

効果は劇的だった。

リプルの実がはじけシェラは外に開放される。

今までどんなに待とうが出られなかった治癒の実が全快を約束したのだ。

「、、、出られたのか?」

シェラ本人が一番信じられないというよな表情をしていたがそれも一瞬だった。

「どういうことだ?何故その男が此処に?」

エクセルを見て怒鳴る。


「シェラ、安心なさい彼は、、」

「お前は?? 何故私の名を知っている?!」

安心させようと語りかけたグローリアを見て又もシェラは怒鳴った。

「お前、、?」

ピシッとグローリアの顔が曇る。

このグローリアをお前呼ばわりですって?

「まぁまぁ、姫

 ここは私が

 ヌークも事情を知りたいでしょうし」

トライアントが苦笑しながら割り込む。

シェラもヌークも事の次第がわからず困惑していたがトライアントの端的な説明により事情を飲み込むことが出来た。


「それでは、、そいつ、、、

 いや、彼はフローライト様の遺児で

 私がリプルの実から出られなかったのは彼の魔法の核が残っていたから

 ですか、、」

シェラも漸く合点がいく、何故リプルから出られなかったかを。

「殺されかけた貴女に遺恨を残すなというのは無理かも知れませんが

 もう兄は敵ではないのです、出来れば水に流してくださりません?」

グローリアがエクセルを庇う。

「いえ、グローリア姫

 私が敗れたのは自らの未熟のせい

 それを遺恨などとは思いません」

シェラは眼を閉じ臣下の礼を取りながらグローリアに恨みは無いと告げる。

彼女とて武人、戦いの結果を引きずることはしない。

「ただ、ひとつだけお聞きしたい

 生贄にえとなった白の少女の亡骸がどうなったのかと言うことを」

真っ直ぐエクセルを睨み付ける。

自分はいい、だがミューズは、、、。

「亡骸は無い」

エクセルの答えにシェラの両目が閉じる。

やはり亡骸を弔ってやることも出来ないのか、、と。

だがエクセルが続けた言葉は想定外の物だった。

「あの娘は生きているからな」

シェラの両目が見開く。

「ば、、馬鹿な?!

 私はこの眼で腹を引き裂かれたミューズの死体を確かに見た!」

あの状態で生きている筈がない。

リューズはそのシェラの言葉にショックを受ける。

自分が繋がったと思ったのは錯覚だったのか、、と。

やはり妹はもう、、、?。


「正確には生き返った、と言うべきだったな

 生き返るかどうかはあの女の生命力しだいだったから

 あの女に生命力があったという事だろう」

エクセルは淡々と続けた。

「生き返った?

 どうしてそんなことが??」

驚くトウランスはエクセルを見る、が当のエクセルは眼を逸らした。

「、、、君か?

 君がやったのかエクセル?」

エクセルは言葉に詰まる、なにやら恥じているようにも見える。

「そうなんだな!君がその子を助けたんだな?!

 しかし、、どうやって?

 蘇生魔法だけは白魔法にも無いぞ」

最上級の回復魔法でも蘇生だけは出来ないのだ。

「、、、蘇生魔法じゃない

 俺は回復系の魔法は使えんからな

 しいて言うなら譲渡魔法だ

 ついでに言うと使ったのは初めてだから効果のほどもよくわからん」

憮然とした表情でエクセルが続ける。

「いや、、そんな効果のほどもよくわからん魔法を使うのは俺としても

 不本意だったんだが

 あの時はまぁ、、、それにそれまで試す機会も無かったし、、」

確信の無い魔法を使ったという事が恥ずかしいのか彼には珍しく言い淀む。

「譲渡魔法?

 何を譲渡したんだ?

 まさか、、君の命か?エクセル」

が、トウランスは端的に魔法の構成を言い当てる。

「む、、まぁ、、な

 高々2~3年くらいだ大したもんじゃない」

古の一族の長命さからすれば瞬きほどの時間だった。

だがその事実は皆の変化を誘う。


「おま、、いや、、貴方の命を?」

シェラからはエクセルに対する負の感情が消え去り。

「分けてくれた、、、ミューズに、、」

リューズからはあからさまな感謝が生まれ

トリストすらもあっけに取られた。

「やっぱりミューズは生きているんですね!!

 貴方が助けてくれたんですね!!」

満面の感謝を込めてリューズが叫ぶ、が、直ぐその表情は曇り。

「あ、、でも

 それじゃあ、せっかく生き返ってもミューズは2~3年でまた、、」

「死んじゃうのか?あいつ」

グランがリューズの言葉の後を継ぐ。

2~3年譲渡された命を使い切ると死が訪れるという事になるのではないか、、と。

だがエクセルは考え込むような表情をする。

「さぁ、、な

 正直な所どうなるかはあの娘の生命力しだいだと思うが、、

 どうもあの術は不確定要素が多すぎてな

 媒体にした花のせいか外見もすっかり変わったし

 生き返る前の記憶も無くしていた

 只、生き返って間もない頃「呼ばれた」と言ってそれで名前だけは解ったんだ」

「そ、それ私です!

 私が呼んだの!やっぱりミューズに繋がっていたのね!!」

リューズが叫ぶ。

「では、、本当にミューズは、、」

「生きてるんです!シェラ様!!

 よかったぁ!」

そう、生きているのなら、譲渡魔法を自分が覚えてミューズに時を分け与える事も出来る筈だとリューズは思った。

自分さえ頑張ればきっと全て何とかなると。


「いや、まて

 生きていたとしても黒に捕まっているんだよな?

 何故今まで殺されずにいるんだ?

 確かあの娘は非力で黒が関心を持ちそうなものは何も持って無い筈だが?」

水をさすつもりではないがトリストが至極もっともな意見を述べる。

「要石、、、ですわトリスト」

だが、グローリアがその答えを示す。

「姫?」

「黒の一族が進入してからの要石の破壊が余りにも正確で早すぎました

 要石の声が聞こえる白の一族が彼らの中に居たとしたなら

 全てが飲み込めます、そうですわね?」

「ああ、当たらずも遠からずだ」

エクセルが肯定する。

それはミューズが白の一族を裏切っていると言う事に他ならない。

リューズもシェラも言葉を飲み込む。

「これ以上彼女を利用させる訳には参りませんわ

 ニニデを解放し、白の一族の力を取り戻さねば」

此処に来て当初の目的をもう一度確かめる。

「その為にカルナの息子に目覚めてもらわねばなりません

 今、この幻羽世界にニニデを解放する白の源を持つのは

 シュリアン様とその子だけですもの」

グローリアの言葉にトライアントは頷き先を示す。

「こちらへ、、姫

 あの子はもっと奥に居ます」


リプルの林、、その中央部分に近い実にカインは居た。

胎児のように丸まりその少年は眠っているように見える。

「これがカインだ」

トライアントが指し示す。

「眠っているのですか?」

グローリアの問いにトライアントは首を振る。

「目覚めないのだ、ずっと」

「生まれた時から?一度もですの?」

その言葉にグローリアが驚く。

「カインはおそらくリプルから出れば死ぬだろう

 この子は幻羽婦人の慈愛の中でしか生きられない

 弱いのだ、、あまりにも」

トライアントが端正な顔を曇らせる。

「リプルの中でしか生きられないですって、、

 そんな、、この子には動けぬシュリアン様をお助けする為にも

 代わりにニニデを解放してもらわねばならぬと言うのに、、、」

真実を知ったグローリアは唇を噛み締める。

何か方法が無いものか、、と彼女は考えを巡らす。

「強い、、生命力があればよい訳ですね、、、」

その言葉にエクセルの眼が動く。

「先ほどお話になった生命の譲渡魔法の呪文スペルわたくしに教えてくださいません?

 わたくしの生命力で目覚めさせて見せますわ!」

グローリアは真っ直ぐエクセルを見つめそう頼んだ。

「姫、、」

トリストやトライアントが躊躇いを見せるがグローリアの意思は固い。

「それしか方法はありませんわ、違いまして?」

「、、、呪文はさして難しくは無いが力の配分が難しいぞ?」

そんなグローリアを心配してかエクセルも眉を顰めている。

「あら、わたくしを誰だとお思いですの?」

そう言って笑うグローリアは自信に満ちている。

貴方の妹、黄金の乙女の娘ですのよ?と言う風に。








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