ニニデ解放 3 緑の聖地へ 2
えらく間が空きました、、ずみばぜん、、。
またコンスタントに投稿出来るように頑張りますです。
緑の聖地。
緑の森の民が暮らすその里は幻羽世界においても特殊な位置に存在する。
幻羽世界は6つの大陸から構成されているが緑の聖域はそのどの大陸にも存在しない。
そしてどの大陸の森とも繋がっている。
前大戦で黒の里を異空間に閉じ込めるという発想もこの聖域の存在があった為に考え出されたものだった。
では、その聖域に行くにはどうするか。
結論から言えばこちら側からは行けない。
向こうから招いてもらわねば行くことは出来ないのだ。
それこそがかの種族を排他的と呼ばしめ縁の無いものは聖域に入れないと言われている由縁である。
白の封印がある洞窟から一番近い太古の森を一同は目指す。
新たな同行者のせいで一同の雰囲気は重い。
リューズはグランかミルトナの影にいつも隠れ、
トリストを筆頭に白の一族はエクセルを遠巻きに警戒している。
当のエクセルはトウランスさえいれば後はどうでもよく、白の一族の態度など気にもかけていないのだが。
そのトウランスが申し訳なさそうに沈んでいる為それが心配で仕方が無い。
唯一グランとグローリアだけが変わらない。
が、一朝一夕でどうにかなる問題でもないため2人とも積極的に如何こうし様とは思っていないようだ。
重苦しい空気の中黙々と一同は走り、翌日には太古の森にたどり着く。
だがそれが到着と言う訳ではない。
強大な樹々が聳え立つ太古の森は枝々が日の光を遮断し昼中だと言うのに鬱葱と暗い。
奥に進むほど変化が無くなり同じような樹々が立ち並び位置感覚が狂いだず。
行く手を遮る巨大迷路の様な樹海が続く。
その状態がすでに2~3日続いている。
「あのぅ、、姫様
俺達、同じところをぐるぐる回ってません?」
こんなに感覚の狂う森は初めてなのだろう、とうとうグランが不安に耐え切れずそう訊ねる。
「此処はまだ初めてですわよ?」
グローリアがしれっと答える。
此処はという事は今までは同じ場所を巡っていたという事か?
「心配しなくても私を見つけてくれれば道は開けますわ」
意味ありげば微笑みを見せグローリアはお構いなしに歩みを進める。
逆に言えば見つけて貰えなくては道は開かない。
グラン同様落ちつかなげに辺りを見回していたトリストが背の羽を広げ、飛ぼうとするのをグローリアが制する。
「トリスト逸れますわよ?」
「姫、少し上空から辺りの確認をして、、、え?逸れる?」
探索の許可を得ようとしたトリストが、グローリアの言葉に気がつき問い返す。
「逸れます」
即答だった。
「もう緑の聖地に踏み入れてますから
普通の森と思わぬほうがよろしくてよ」
「え?何時の間に??」
気がつかなかった。
トリストとグランはきょろきょろと辺りを見回す。
普通の森との違いがわからない。
トウランスも同じだった。
エクセルはそもそも幻羽世界に来たのが初めてなので違いが分かるはずも無かった。
「トリスト様、方向感覚がおかしくなっていません?
それが聖域に踏み入れた感覚です」
おそらくグローリアと何度か聖域を訪れているのだろう、ミルトナがそう教える。
「なるほど、、」
確かに妙な感覚が付きまとっている。
「纏まっていないと姫様のお供だと認識してもらえないかもしれません
単独行動はお控えください」
ミルトナはちらりとトウランスとエクセルの方にも視線を送る。
彼女なりに助言を送ったのだろう。
「姫、それなら止まって待っててもいいんじゃ?」
グランが素朴な疑問を口に出す。
一向は森に入ってから休憩、就寝以外は立ち止まってはいない、歩き回っているのだ。
「そうしたいのは山々なのですけど
それでは見逃してしまいますのよ」
グローリアの答えにグランの疑問符は増殖する。
それを見つけたのはミルトナだった。
「姫様」
指差すその先に風も無いのに微かに左右に開きだす梢が映る。
「やれやれようやくですの」
そう肩をすくめるしぐさをしグローリアはその梢に向かう。
一同が通ると背後の枝葉は閉じ前面の木々が道を開く。
木々の導きにしたがい進む中、何度かチリチリと肌に違和感を覚える。
これは転移魔法を使ったときの感覚に似ている。
「ここ、深遠の静寂と同じ、、」
ポツリとユーリィエが呟く。
深遠の静寂と同じ他者を迷わし拒絶する迷路になっているのだろう。
何度か転移もしているようだ。
と、突然開けた空間に出る。
柔らかな緑の絨毯のような芝生がほんのりと光っている。
「グローリアです
門を開きなさい」
姫の声が凛と響く。
変化は劇的だった。
ザザザと木々が大きく葉をしならせ動き、周りの景色がぐるりと回転する。
芝生の光が強まりいっせいに弾けたと思うとまったく違う場所に居た。
周りを囲う巨木は太古の森と同じなのだが光が満ち溢れ鬱蒼とした陰りは微塵も無い。
露を含んだような新緑の葉が綺羅綺羅と輝いてる。
そこに3人の長身の者が居た。
みな一様に緑の長髪、長い耳、詰めた襟の服装に着崩した着物のようなものを纏い。
右目の下に同じ刺青、額の刺青は個々に違ったが3人の纏う雰囲気は同じ物だった。
なんとなくアストルートにも似ている。
中央の人物が進み出、会釈をする。
「グローリア姫
よく参られました」
「ごきげんよろしゅう
トライアント様」
グローリアは両手でマントの端を摘み片足を引き軽く会釈をする。
淑女の挨拶だ。
「この度は母上に、、」
ご挨拶でも?と言いかけたトライアントは後ろに佇むユーリィエに気付く。
「その子はまさか、、深遠の?」
ユーリィエは答えることなくぼおっとした眼差しでトライアントを見ている。
「そうだ
ユーリィエは深遠の長の娘だ」
ユーリィエは答えないと判断したエクセルが変わりに答える。
その声にトライアントや後ろに控えていた緑の民の眼がエクセルに注がれる。
「!あなたは、、、」
うろたえる様な仕草をするトライアントに後ろの2人もざわめく。
その様子を見、てっきりエクセルの黒の長衣を見咎められたのだと察したトウランスがエクセルを庇う様に割ってはいる。
「彼は、、
彼は今は敵じゃ、、」
擁護しようと発した言葉が終わる前にトライアントから意外な人物の名が出る。
「フローライト様!」
「え?」
黒の一族と咎められた訳ではなかった。
「やはり
あなたもそう思われるかトライアント殿」
イアロニが言葉を繋げる。
「イアロニ殿、あなたがなぜ?」
2人は旧知の仲のようだ。
「私は時の語り部
空白の時が解明されそうなので随行させて頂いた」
空白の時間?母の名前が出たのはどういうことなのか?
グローリアは訝しげながら彼らの様子を見る。
トウランスはエクセルを見るが本人はまったく意に介していないようで
「何のことか分からんが
それでユーリィエは受け入れてもらえるのか?」
淡々とした口調でトライアントに訊ねる。
「それは、勿論!
肌の色が違えど我等は同胞だ
共に同じ聖樹から生まれ出た一族
喜んでこの地に迎えよう」
トライアントは迷うことなく即答しユーリィエに手を差し伸べる。
「ユーリィエというのか
おいで」
ユーリィエは迷うような仕草を見せトウランスを見る。
そんな彼女にトウランスは優しく微笑み頷く。
「さぁ、お行きユーリィエ」
トライアントはユーリィエの背丈にあわせ屈みその頭を愛おしそうに撫でた。
「よく参られた
さぞ辛い目に遭われたのだろう
そなた達の苦渋を知りながら助けに行けなかった我々を許してくれ、、」
繭を潜め謝罪するトライアントにユーリィエはアストルートの面影を見る。
表情の乏しいその顔が緩み泣きそうな表情になりぎゅっと彼女はトライアントに抱きつき
その肩に顔を埋めた。
咽び泣くユーリィエをトライアントは優しく抱きしめる。
2人の緑の民も囲うようにユーリィエに寄り添う。
「今日から此処が君の家、我々は君の家族だユーリィエ」
そう語るトライアントは思念を送りタラットを呼び寄せる。
緑の民の唯一の子供を。
タラットはなぜ長に呼ばれたのか分からずきょとんとした顔で現れた。
「タラット、ユーリィエだ
仲良くしてやっておくれ」
ユーリィエを紹介されたタラットの表情は分かりやすかった。
彼は一目見てこの美少女の騎士になろうと決めたようだ。
頬を赤らめ嬉しそうにユーリィエの手を引き里の案内をかってでる。
朗らかな少年はきっと彼女の凍った感情をゆっくり溶かしていくだろう。
トライアントはユーリィエが足元に残した黒の里から持ってきた未熟なリプルの実をそっと拾った。
その実はトライアントの手の中で淡い光を放ち、そっと大地に置かれる。
見る見るその実からリプルの苗木が育ち小さな実を2個つけた。
「あの子がこの地に根付くように、、、」
トライアントの祈りであった。
その言葉に答えるように今しがた生えた小さなリプルは淡い光を飛ばす。
ユーリィエの未来を祝福するかのごとく。
「リザイガルの予言がついに動いたか、、」
リプルに向いたままのトライアントの表情はトウランス達には分からない。
が、その言葉は重かった。
「我々が同胞を助けに動かなかったのは
黒の里との接点が無かったというのが大きいが
リザイガルの予言を動かすことを恐れていた為でもある、、」
トライアントの懺悔とも言える告白。
「光と闇に分かれた種子が一つに戻る時大いなる変動と破壊
時の浄化が始まると件の予言は告げている
これは我々と深遠の民の事だろう
ユーリィエがこの地に根付く事を指しているのか
緑の一族と結ばれることを指しているのかは分からない
が、そのどちらかであるのは間違いない
それが運命なら我々は従わねばなるまい、、、」
「リザイガルの予言?」
どこかで聞いたような言葉だったがトリストには思いあたらない。
「魔導師に伝わる幻の預言書だ
幻羽世界の終焉を予言していると聞いている、、」
トウランスがそれに答える。
「幻羽世界の終焉?この世界が滅亡するって事か?!
トライアント!あんたそんな予言を信じているのか?!」
幻羽世界の守護者と自負している彼(白の剣士)には受け入れられない予言だ。
「始まりがあれば終わりがある、それが理だ
そして予言以上の物なのだ、リザイガルの予言はね
トリスト、君達の来訪も定められて居た事だよ」
諭すようにトライアントは告げる。
「『黄金の乙女の復活』ですか?」
イアロニが尋ねる。
「黄金の乙女、、フローライト様が目覚められるのか?!」
意外な言葉にトリストが反応する。
白の王子シュリアンの姉、前大戦時に最強の剣士と言わしめた白の王女。
彼女の復活がリザイガルの書に記されているというのか?
「いや
フローライト様が目覚められることは無い
それはグローリア姫がよくご存知の筈だ」
イアロ二は首を横に振る。
どういうことなのか理解できずトリストはグローリアを見る。
「母上は御自分のお命を私に下さったのですわ
ですからお目覚めになることはありません
いえ、ありえません」
死者が生き返る事がないのも理だからだ。
グローリアはそんな母を思い憂いた眼差しを空に向ける。
「姫
姫は母上のご尊顔をよくご存知ではあるまい」
トライアントがグローリアにそう語る。
確かにフローライトは湖低の墓所に居るためグローリアは姿絵でしか見たことが無い。
トライアントは何が言いたいのだろうか?
「フローライト様の救出にはシュリアン様にもお話していない事実がある
黒の地よりフローライト様が救い出された時
フローライト様には御子を御産みになった形跡があった
まるで、、逃げる最中に産み落とされたかのような生々しい、、、」
トライアントはここで言葉を切りゆっくりとエクセルを見る。
「そして、彼はフローライト様に生き写しだ」
いろいろと驚かされる事の連続だったがこれは破格の衝撃だった。
グローリアとエクセルは繭を潜めながらお互いを見合う。
中でもトリストやミルトナ、白の一族の拒絶、狼狽が激しい。
「トライアント!
あんた自分が何を言っているのか解っているのか?」
噛み付かんばかりのトリストの形相にも動じることなくトライアントは答える。
「重々」
その言葉の意味を重さを知っていると。
「この私に黒の一族の血が流れていると仰るの?!」
グローリアが怒鳴る。
深層の白の姫君として育てられた彼女に黒の一族の血が流れているなどありえない!
ありえてはいけないとでもいう風に。
トウランスはああ、やはりと声にならない声で呟いていた。
やはり、、この2人は兄妹なのだと、、。
「フローライト様の元に参りましょう
総てが解き明かされるでしょう
予言の通りに、、」
トライアントは静かにそう告げ皆を聖域の中へ入るように促した。
ここで7巻完了です。




