ニニデ解放 2 ケルビム
大変遅れましたが投稿致します(><)
転移魔法や体力増加を駆使してもその洞窟にたどり着くのに一週間以上かかった。
此処は緑の聖地にも似た木々生い茂る鬱葱とした太古の森の中。
岩肌に作られた巨大な扉には鍵穴も何もなく来るものを阻んでいる。
グローリアはその前に立ち小さな手を翳し太古の呪文を唱える。
と、隙間も無かった扉の真ん中に筋が浮かび、瞬く間に左右に開く。
そのまま扉の中に身を潜らせ地下に続くなだらかな坂を下りて行く。
洞窟は中々に広い。
「この先ですわ
よろしいですわねトリスト、防護壁は私がしっかり張ります
あなたは思いっきり馬鹿力で破壊しなさい」
「了解」
トリストから端的な返事が返る。
進む一行の前に件の植物が現れる。
「でけ~」
グランが見上げても頂上が見えない程洞窟いっぱいにそびえている。
洞窟そのものもかなり巨大な空間なのだがケルビムが巨大な為感覚がおかしくなる。
グランはゆっくりケルビムの傍によりその表面を触る。
「うっわ、石みたいに堅いや
鉱物植物かぁ」
コンコンと拳で表皮を殴るが鉱物的な音が響くだけで動きは無い。
後ろを振り返ると皆かなり離れて佇んでいる。
「あれ?
皆なんでそんなに離れてんの?」
「古の一族専門だと言っただろ」
「15m以内に近づくと反応するんですわ」
「あ、そうか」
トリストとグローリアの言葉に動かぬケルビムをしげしげと眺め
「どんな反応すんの?
リューズちょっと来てみろよ」
好奇心に駆られグランが声を掛ける。
「い、、嫌よ、、、」
道中魔法を教授してくれたミルトナにしがみ付く様にしながらリューズが首を振る。
そんな怖い事はごめんだと言う風に。
「リューズならそんなに心配いりませんわ
、、、多分ですけど」
「え?」
「前回来た時折に気付いたのですけど
血の濃さによって襲う反応が違いますのよ
まぁ、、データーが足りませんから確実だとは言えませんけど」
「あぅ、、行かなきゃいけませんかぁ?
データ取る為に、、、」
リューズは涙目であるが王女からの命令とあれば応じねばなるまい。
「まさか
危ないからおよしなさい」
グローリアが即座に否定する。
「では、俺が」
そう言ってトリストが前に進み出る。
「なにしろ伝承でしか聞いたことが無い初めて見る生物だ
ぶっとばす前にどのくらいの強度なのか見ておきたいしな」
「え?マジ?」
自分で言っておきながらグランはトリストの行動に驚く。
自分から攻撃を受けたいって、、なんか、マゾっぽい。
トリストが15mまで近づいた時。
グランの目前を高速で何かが走った。
それは唸りを上げトリストへと襲いかかる。
トリストは最小限の動きで触手状の葉を弾き返す。
「へぇ、堅いな」
それが感想だった。
弾き返された葉は慣性が弱まるとまたトリストに襲いかかる。
「 、、、5つですわね
スピードは似た様な物ですが私の半分以下ですわ
トリストのお母様は確か幻羽人でしたわね
そんなものですかしら」
冷静にその様子をグローリアが分析する。
暫くその攻防が続いたが飽きて来たのか一際大きく薙ぎ掃うとトリストは後方に飛ぶ。
はじかれた葉はグランの元まで飛ばされ、上部の葉に派手な音をたて打ち付けられた。
思わずグランは頭を庇いその場にしゃがむ。
その形のままケルビムは動きを止める。
「へっ?」
恐る恐るグランが上を見上げると先ほどの攻撃が嘘のように固まっている。
「ちっ、罅も入ってないのか、、頑丈すぎるだろ」
後方に飛び退いたトリストが呆れたように毒ずく。
「よし、グラン戻ってこい
2人同時に攻撃するぞ」
そう手招きするトリストに了解と答えグランは戻った。
お互い邪魔にならぬ距離を取り愛剣を構える。
「よろしいですか? 姫
思いっきりいきますよ?」
「望むところですわ」
そう答えグローリアは防御魔法を展開する。
白の一族屈指の力を誇るだけあり巨大な洞窟を強固な防護壁が隅々まで覆う。
「行くぞ! グラン」
トリストの声を合図に2人は渾身の力で衝撃波を放つ。
呻りをあげクロスし破壊力を上げた衝撃波がケルビムを襲い蹂躙する。
「もう一丁!」
駄目押しとばかりトリストがもう一撃衝撃波を放つ。
破壊の風はケルビムを粉砕したかに見えたが、、。
「なっ、、無傷だと?」
初撃の巻き上げた砂埃がおさまるとそこには罅一つ、一欠けらも欠損していない無傷のケルビムが聳え立つ。
皆に一様に動揺が走る。
「どういう事ですの、、、トリストの攻撃力は屈指のものですのよ
馬鹿力では誰にも負けませんのよ?
馬鹿力ではっ!!」
グローリアさえ動揺を隠しえないが言っている内容が失礼極まりない。
「ひ、、姫、、
それ褒めてないですよね、、、」
トリストの苦情を華麗にスルーしグローリアは続けた。
「物理攻撃も駄目、魔法攻撃も駄目だなんて
一体どういう事ですの、、、」
「魔法攻撃もですか?」
スルーされた事より聞き捨てならない事実にトリストが思わず尋ねる。
「ええ、此処に居るミルトナで試済みです
私ほどではありませんが彼女は中々の使い手ですのよ」
グローリアの言うとおりミルトナの名はトリストも聞き知る白魔法の使い手である。
「大体どうしてこんなところにケルビムなどという物が存在しますの?
忌々しい限りですわっ!
おかげで向こうにある白の印を押すだけという簡単な事が出来ませんのよ?!」
その愛らしい顔を顰めグローリアは悪態をつく。
「え?じゃああれの向こうに行ってその白の印ってのを押すだけでいいの?」
そんな事で良いんだと言わんばかりのグランの問いにグローリアが答える。
「そうですわ
それで祭壇への道が開くと秘伝書には書いてありましたわ」
「それって、、誰でもいいの?」
「誰でも構いませんけど
誰も近づけもしませんわっ!
この私でも全く近づけやしませんもの!!」
憤慨の極みである。
「いや、、だから
だったら俺、、行けると思うけど?」
グランの素朴な発言にその場の時が止まる。
そう、古の一族でなければケルビムの妨害は無い。
「 、、、、姫
盲点でしたね」
トリストの言葉にグローリアは無言で答えた。
何故気が付かなかったのか、これまた憤慨の極みである。
グランは皆が見守る中、すいすいとケルビムの太い葉を掻い潜り奥へと進む。
巨草の為幸いあちこちに隙間があり進むのに苦労はしなかった。
「えっと、、この辺りかな?」
グランは葉の隙間から土壁が視えたのを確認し件の白の印を探す。
と、少し先に楕円形の周りに三角の様な模様が取り巻く印が視えた。
「これかな、、?」
そう言い、手を伸ばしその印に触れる。
ふわっと暖かな光に印が包まれたと思うと突然グランの足元が消えた。
「うわっ?!」
ガコン!と大きな音と共にグランの叫び声が響く。
「グラン?」
異変を察したトリストが思わず前に飛び出すがそうはさせじとケルビムの葉が行く手を阻む。
「ちっ!」
弾けど弾けど途絶える事のない攻撃に進むことが出来ない。
「グランっ!」
再度名を呼べど答えは無かった。
トリストから余裕が消えより激しく葉との攻防が始まる。
グローリアも援護するが状況はほぼ変わらない。
「?!」
変化が訪れたのも一瞬だった。
トリストへの猛攻が途絶え葉がぴたりと止まる。
「止まった、、、? グランがやったのか?」
先ほどの攻撃が嘘のようにケルビムは微動だにしない。
それに気が付いたのはグローリアだった。
「違いますわ、、、何かが、、来ますわ、、」
大きな魔力が何処からか近づいて来る。
グローリアが言い終わるか否かにぴくっぴくっとケルビムの葉が反応し。
一斉にすべての葉が洞窟の上部に向かい伸びる。
そこに、黒い球体になった防護結界が現れケルビムが纏わり付こうとするが
次の瞬間張られた新たな結界に弾かれる。
「なっ?」
「こんな処にケルビムだと? しかもでかい、、」
言うよりも先に張ったエクセルの結界だった。
「ケルビム?」
トウランスも名前だけは知ってはいた、古の一族を捕食すると言われている鉱物植物だ。
ユーリィエがびくんっと震えトウランスの足にしがみ付く。
「ユーリィエ?」
ガタガタと震える彼女の顔は真っ青だった。
エクセルの結界の上から幾重にも葉を纏わり付かせ締め上げ壊そうとしているようだった。
ユーリィエは太古の血を持つ種族だ、彼女を狙っているのか?と気付いたトウランスは無意識に手を伸ばし力を放つ。
―去れ!―
念じたそれは魔法では無かったがトウランスの瞳が赤く変じ閃光が走る。
ケルビムの葉が吹き飛び、戒めの消えた結界はケルビムから離れ。
役目を終えた結界は消え、ユーリィエを抱いたトウランスとエクセルが背の羽を広げ降り立つ。
「トウランス?」
思いもしなかった友の出現にトリストは驚き名を呼ぶ。
「トリスト?」
「トウランス止まるな!走れ!」
ケルビムから距離を稼げていない事に気が付いたエクセルがその背を抱く様に走れと促す。
充分に距離を取りトリスト達と合流を果たしトウランス達は一息つく。
その後ろに無傷のケルビムが静かに佇む。
吹き飛ばしたかの様に見えた葉も弾き飛ばされただけで切れてはいなかった。
「トウランス、、お前よく無事で、、、
いや、、無事じゃないか、、怪我まみれだな」
それでも五体満足に帰ってきたことが信じられないかのようなトリストだった。
「ああ、彼に助けて貰ったんだ
この子はユーリィエ
それよりケルビムって?」
「彼?」
そう言われてトリストは怪訝そうに黒の長衣の青年を見る。
典型的な黒の魔術師の装束だ。
まさか黒の魔術師が助けたというのだろうか?
「ケルビム 古の一族を餌とする鉱物植物と言われているが
実際は纏わりつき捕獲されてしまい餓死するというのが正しいな
あれは中々厄介だぞ
剣も魔法も全く効かないからな」
トウランスの問いにエクセルが答えだす。
「ほら、表面の砂粒の様な点
あれが総て旧魔法の防護呪文だ、如何なる攻撃も受け止め弾き返してしまう
しかも、とっくに忘れ去られた呪文の為解呪法が無い
唯一駆逐用の剣だけが有効の筈だ
それ以外は何をやっても無駄だ」
だが、先ほどトウランスが怯ませた。
「トウランスさっき何をやった?
一瞬だがケルビムが退いた、、、」
物理的な現象で剣で弾き返すとこは出来るが魔法で弾くことは叶わぬ筈だ。
「え? さぁ、、、?
ユーリィエが狙われているのかと思って夢中で、、」
トウランス本人もよく解っては居ないようだった。
「そうか、、、」
例の相乗効果の要因だろうかとエクセルは考えを巡らせる。
確か一瞬だったが力が発動する前に瞳の色が変わった。
あれがあの力の兆候という訳か、そして本人その自覚は無い。
どうもあの力はエクセルが考えていた以上に不安定な危なっかしい物の様だ。
そう考えながらも不敵に微笑む。
どのような事が在っても自分が盾になると改めて。
「ともかくこんな処に長居は無用だ
あれは植物だけあってあの場から動くことが出来ない
生えた場所から移動できないのが欠点だ
近づかなければ害はない」
そう言ってトウランスを促す。
「ちょっ、お、おいトウランス
ちょっと待ってくれ、俺さっきから何が何だか、、」
トリストが状況をよく把握できず狼狽える。
トウランスが生還したのは嬉しいが横にいる男が問題だ。
黒の長衣を着ている奴なんて怪しい事この上ない。
しかもさっさとこの場から去る気らしい。
「待ってトウランスさん!」
リューズも必死に訴える。
「グランが、、グランが向こうに行ったきりなんです!」
彼女には黒の長衣なんか関係なかった。
ただただ帰らぬグランが心配だった。




