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迷走 4

ちょっと短いですが、きりが良いので。

ミューズとアロンは白の一族が守っていた要石の洞窟の中に戻って来ていた。

ミューズが白の一族の血で魔方陣を剣先で描く。

既に死して数日たっているため血自体も凝固していたが

心臓を破壊したり、人数で補いなんとか魔方陣を描ききる。

アロンは興味深そうにミューズの作業を見ていた。

「キーワードは白の一族の穢れた血で書く魔法陣と要石

 要石は欠片でもかまわない

 此奴等は屈辱を感じ死んだはず

 一度通い合った空間だ

 二度目はその程度の穢れでも充分条件を満たす筈だ」

ミューズが説明し終わるか否かに空間に異変が生じ始める。

空間に歪が生じ始め渦の様に回転し始める。

「見ろ

 開くぞ」

満足げなミューズの声と共に空間にゲートが開く。




静かに坐していたエクセルが顔を上げる。

「来る」

そう一言発し、立ち上がり結界を作る。

「この中に入れ」

そう2人を促す。

トウランスとユーリィエはエクセルに言われるままその結界に入る。

目前の空間に固定された球体がバチバチと発光しだし

閃光と共に結界ごと彼等を飲み込む。

上下も無く遠近も無い異空間に放り出される。

そのままその空間を水平に移動する。

基準となる物が無いので向きも速度も解りはしないが

かなりのスピードで移動しているようだった。

たまに空間に見知らぬ世界の情景や見知ったような情景が現れるが

そのまますうっと消える。

トウランスはユーリィエの肩を支えながら物珍しそうにそれを眺めていた。


それは一瞬だった。

エクセルが気が付いたのは術者だったからかもしれない。

ミューズも又気が付いたのは術者だった為か

それともエクセルと記憶で繋がっていた為か。

光速で彼等はすれ違う。

「エクセル?」

ミューズとアロンは振り返るが、すでに姿は見えなくなっていた。

そのまま出口へと吸い込まれ黒の城のゲートから飛び出す。

即座にその場にいた黒の一族が群って来る。

「アロン?!

 アロンか?」

アロンは肯定の返事をし。

ミューズは髪を後ろに祓い整えていた。

「その女は?」

「ああ、彼女はエクセル様が、、」

言い終えぬ間に

「エクセルだと?!」

怒号と共に数本の剣が付きつけられる。

目前の剣の腹を掴みアロンが睨む。

「これは何の真似だ?」

要石を破壊し大幅に黒のマナ値を増やした功労を労われるならまだしも

こんな扱いを受ける謂れはない。

「知らないのかアロン?」

アロンを知る黒の一族がそう語る。

「何を?」

何の事だかさっぱりわからないアロンに他の黒の一族から怒声が飛ぶ。

「エクセルが黒を離反したぞ!」

「黒を裏切ったんだっ!」

その意味に一番驚いたのはミューズだった。

「ば、馬鹿なっ!!

 そんな事あるわけがないっ!」

エクセルがロリアンを裏切るなどあり得ない!

自分の中のエクセルの記憶にあるのは

ロリアンに対する深い親愛と忠誠。

その暖かい想いに癒されてきたのだ。

あの感情が偽りで等有るはずが無かった。

「事実だっ!」

「エクセルさ、、、いやエクセルは我らを裏切り

 キルゼア候を殺め逃亡した、、、」

そう言ったのはアロンと同じエクセルの信仰者だった者だ。

彼が勘違いや間違いでエクセルが離反したなどと言うはずが無い事を

アロンが一番よく解っている。

ならば本当にエクセルは黒を裏切ったという事だ。

そうだとしたら先ほどすれ違ったエクセルは逃亡の最中だという事になる。

そう理解してもまだ信じられなかった。

「ともかく、アロン

 お前には上層の方々から尋問が下される

 申し開きが在ればそこでするがいい」

本当にエクセルが離反したなら部下である自分にも疑いが掛かるのは仕方のない事だ。

「、、、了解した」

不承不承だが納得する。

だが、ミューズは?

「その女もエクセルの関係者か?」

「彼女は、、、まぁ、、そうだ

 彼女は要石を破壊するのを協力してくれて、、」

歯切れが悪い。

ミューズが白の一族で在る事、死した彼女をエクセルが蘇らせた事。

アロンもどう説明していいやら解らなかった。

「エクセルの関係者なら決定が下るまで投獄しておく事になる

 女、いいな?」

アロンはどうするとばかりにミューズを見る。

一番の悪手は彼女がここで暴れる事だ。

だが、当のミューズはわなわなと震え真っ青な顔になっている。

何かの間違いだと思うが疑いを掛けられているのは事実だ。

そして先ほどのエクセル、あまりにも間が合いすぎている。

もしかしたらという疑念が膨らみ、ミューズの中で感情が悲鳴をあげた。

信じていた物が崩れ落ちていく。

呆然自失のままその場に座り込む。

そのまま引き摺られるように立ち上がらされ数名の黒の一族に連行される。

アロンはその後ろ姿を見送った後。

尋問が有ると言った男の後に従った。




一方、異空間のエクセルは

自分が考えていた以上にミューズに自分の記憶が流れていたことに驚いていた。

アロンは補助的な用途しかない魔方陣自体を軽視していたから

ゲートを開く魔法陣を描ける訳がない。

となると魔方陣を描きゲートを開いたのはミューズという事になる。

それは当然エクセルの記憶だろう。

どうも自分が作った呪文スペルではあるが不覚的要素が多すぎる。

余り多用すべき魔法では無いかもしれない、

自重すべき魔法で在るようだ。


「、、、前、、、」

ユーリィエが遙か先を眼で示す。

トウランスやエクセルからはまだ何も視えはしないが彼女は何かを感じ取ったようだった。

暫くすると前方に数人の移動する集団が居た。

先に黒の城からアーカルのいるスフスフの神殿へ補充する為に派遣された一団の様だ。

「魔術士が2人、、、剣士が4人、、、」

ユーリィエが的確な部隊詳細を呟く。

どうやら彼女には解るらしい。

送り出した術者の魔力の差の所為か先行する一団のスピードが遅い。

このままいけば衝突してしまうだろう。

「ちっ

 仕方ないな」

エクセルは舌打ちし手を翳す。

結界のすぐ外に小さな炎が浮かぶ。

パンと小さく弾けたそれは轟音と共に目前の一団へと襲いかかり

紅蓮の炎が彼らを焼き尽くす。

そこには骨さえ残って居なかった。


「すごい、、、

 俺の理解の範疇を超えている

 何故こんな特異空間でも魔法が使えるんだ?」

思わずトウランスの口から感嘆と共に疑問が洩れる。

「総ては運命で在るお前の為に」

エクセルが真顔でそう答える。

トウランスはその言葉にエクセルの努力が透けて見えた気がした。

元より天賦の才に恵まれては居たのは容易に想像できる。

だがそれに胡坐を搔くことなく日々鍛錬、研究を続けて来たのだろう。

より強くなる為に。

それが自分の為だと彼は言う。

戸惑いと共に気恥ずかしさを感じてしまう。

そんな様子を誤魔化すように

「それで、、、

 幻羽世界の何処へ?」

次の質問を投げかける。

「さあ

 俺は幻羽世界に詳しくは無いから

 座標点があいまいになってる可能性がある

 一度通じたゲートなら移動距離も速度も速いが

 曖昧な新たな到達点だ

 多少時間と位置のずれが起こるだろうな」

過去には戻れない。

特異空間と言えど時間は流れているのだから。

「だが

 この光の先は間違いなく幻羽世界だ」

そう言い遙か彼方に薄っすら見える光の出口を見据える。

幻羽世界に帰るのだと。











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