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闇の中の光 5

少し漫画と変えてあります。

漫画の展開がどうも気に入っていなかったので治したのですが

また、改稿するかも~、、。

「御帰りですか

 キルゼア候、アルカシア候女」

門番が帰ってきたキルゼア達に声を掛ける。

「よっ」

キルゼアが軽く挨拶する。

「そう言えばエクセルの奴とすれ違ったが

 珍しく女連れだったぞ

 どこの女だ?」

キルゼアの問いに門番も

「キルゼア候も眼を付けられましたか

 私もちらっとしか見えませんでしたが

 かなりいい女だったでしょう?

 嗜虐欲を擽るような」

そう答える。

「だな

 いい声で泣きそうだ」

キルゼアもニヤ付きながら門番に同意する。

「残念ですが

 あの女エクセル様の専用らしいですよ

 子を産ませると仰ってました」

門番が肩をすくめてそう言う。

「ちっ

 なんだ、あいつのか」

キルゼアも残念そうに舌打ちする。

その様子を見ていたアルカシアが鼻で笑う。

「なに?

 そんなに気に入ったの?

 ならっちゃえばいいじゃない」

アルカシアの言葉にキルゼアが呆れたように言う。

「馬鹿言うな

 一応ルールがあるだろう

 老人共が決め王子が認めた」

王子が認めたからには守らない訳にはいかないと。

「あなたこそ馬鹿よ

 大体何のためのルールよ

 「力」のある者を手早く見つけるための物じゃない」

物事の本質を忘れちゃ駄目よとアルカシアが力説する。

「そこの門番みたいな雑魚のたねが混じったら

 ヘボい子が出来るかもしれないけど」

雑魚と言われた門番は事実なので引き攣りながら黙っていたが

その眼はあんまりだと告げていた。

アルカシアはそんな様子を歯牙にも掛けず続ける。

「あなたは家の馬鹿アーカルと違い

 ちゃんと実力もある「候」なのよ?

 エクセルの種と混じっても遜色ないわよ」

アルカシアの言葉にキルゼアの自尊心が擽られる。

「だからルール違反じゃないって事

 りたかったらっちゃえばいいのよ

 どっちの子でも結果は期待できるわよ」

とんでもなく乱暴な解釈だがキルゼアは納得する。



トウランス達は下の村と呼ばれている村の入り口に着く。

入口付近には小さな土壁で出来たかまくらの様なドーム型の簡易住宅が並んでいた。

人ひとり横になれるかどうかの広さである。

そこに虚ろな目をした亜幻羽人、幻羽人がぽつぽつと座り込んでいる。

皆一様に痩せあばら骨が見えており頬はこけている。

「この辺りははぐれが多いな」

エクセルがぽつりと呟く。

「はぐれ?」

トウランスの問いにエクセルが答える。

「最小限の群れ、家族を殺されたか奪われたかで独りになった者達だ

 大抵そう言う奴はこういう風になる

 感情を持たぬ方がここでは楽だと気が付くからだろうな」

一旦言葉を止め、目を少し細め彼らを見、続ける。

「希望を目前で踏みにじられ望みを持つのは無駄だと思い知らされる

 ならば何も望まぬがいい、、、

 皮肉な話だがこうなった方が生存率が跳ね上がる

 木偶人形を壊しても何も面白くは無いからな」

トウランスは言葉を発することが出来なかった。

と、いきなりエクセルに抱き寄せられる。


「おや、エクセル様もですか」

下の村の中央部から黒の一族の男が亜幻羽人の女性を伴い歩いて来る。

肩を抱かれた女性は幸せそうに微笑んでいる。

「どんな具合です?

 俺の方はそろそろ仕上げですけどね」

女性に口づけるように頬を寄せ何かを囁いている。

女性はコクコクと頬を染めながら頷く。

仲睦まじいと言えるカップルに見えた。

トウランスは安堵のため息を漏らす、少なくともあの女性は幸せそうだ。

「何を安心している

 奴の言った仕上げとはあの娘をこれから甚振る事だ

 恐怖と死の隣り合わせで怯えて生きる幻羽人を

 手間と時間をかけ心を絆し、自分だけは大丈夫じゃないか

 特別な存在なんじゃないかと信じさせ

 希望を持たせた上での裏切り

 黒の好きな遊びだ

 希望を知り信じた者がそれを壊された時の喪失と嘆きは

 知らぬ時よりはるかに大きい

 残酷な遊びだ」

エクセルの言葉に愕然としその残忍さにトウランスは青ざめる。

その様子を見、エクセルは優しく笑み付け加える。

「心配するな

 俺はお前を裏切りはせん」

「違う

 君を疑った訳じゃない、、

 どうにか助けられないのか?

 彼女を、、、彼らを、、」

先ほどの女性だけでなく

此処に捕らわれている幻羽人は全てその対象に成りえるという事だ。

残酷な運命から解き放つことが出来ないか?と

トウランスはエクセルに問う。


「、、、気持ちは解らなくはないが

 今は俺達が逃げるだけで精一杯だ

 それは諦めてくれ」

そう言うエクセルもまた険しい表情だった。

その表情を見ることなくトウランスは一人考え込む。

「それでも、、何か出来る事が在る筈だ

 俺にでも出来る何か、、、」

「トウランス?」

意を決したように頭をあげエクセルを見る。

「エクセル、、、

 俺はここに残ろうと思う

 ここまで有難う

 今なら君も黒に戻れる

 だから、、、」 

「馬鹿な事をっ!

 黒の一族に見つかれば即座に殺されるぞ?

 大体こいつらに何がしてやれる?」

「それは、、、

 解らない、、、だけどこのまま何もしないで

 見捨てて行くのは、、、」

「愚行だな

 仮にこいつらに人らしい感情を戻してやっても

 喜ぶのは黒の一族だけだぞ?

 根本的な解決にはならん

 心を戻して黒の一族にもて遊ばれるよりは

 このまま心を持たぬ方が幸せだと思うがな」

「俺は、、、」

反論しようとして言葉を詰まらせる。

そう、多分エクセルの判断は正しい。

今の自分に出来る事など皆無に等しい。

だが、、、。

「すまない、、少し頭を冷やして来る、、、」

そう告げてトウランスは下の村に向かう。

「あまり離れるなよ?

 もう大丈夫だと思うが

 黒の一族がいるかもしれん」

エクセルの言葉に小さく頷き。

トウランスは、はぐれと称される者達の間を歩く。



かつて背に在った光羽を奪われ存在意義を無くした自分。

魔道の道がそれを救ってくれた。

そして、、その魔道で取り返しのつかない大罪を犯してしまう。

それでも手を差し伸べてくれた者達が居た。

受け入れてくれる者達が居た、、、。

だから今こうして自分が居る。

これは自分のエゴだと言える。

この人たちを助けることで少しでも贖罪の気持ちを味わいたいだけかもしれない。

救う力も在りはし無いのに。


もし、空間を繋げ幻羽世界に彼らを逃がすことが出来るのなら、、、

黒の一族を制圧する力を持っていたのなら

彼等を救う事が出来るだろう。

だが、残念だがどちらの力も自分には無い。

むしろ黒の一族から逃げるだけの弱者だ。


魔力が戻れば回復魔法は使える。

彼等を連れ去ろうとする黒の一族とも戦うことは出来るだろうが

所詮は一人。

出来る事などたかが知れている。

だけど、、何か何か出来ないのか?


希望を与えれば確かに黒の一族の思う壺なのかもしれない。

このまま何も感じることなくただ生きて行けば

黒の一族の手にかかる事も無く生き延びられるのだろう。

だが、、それで生きていると言えるのか?

それでも生きてさえいればいつか助かる道があるかもしれない。

生きてさえいれば、、、。

だけど、、、。


考えは同じことの繰り返しでまとまる事は無い

だがトウランスは考えることを止めることが出来なかった。

何度も何度も同じ事を考える。

何度も何度も、、、。


ふと、気がついた時何処からともなく

優しい歌声が聞こえてきた。

澄んだ美しい声に俯き項垂れた亜幻羽人、幻羽人が

頭を上げフラフラと立ち上がる。

声の聞こえた方向に光が集まり徐々に人型になって行く。


現れたのは幻羽婦人。

少女の様な面差し、背には輝く光羽。

そして頭上には触角がある。

だがそれすらも装飾品の様に見えるほど嫋やかな美少女だった。

そしてその姿は忘れもしない。

トウランスが背の羽を奪われた時に見た夢の様な美しい飛翔の主。

「あなたは、、あの時の、、」

そう呟き、引き寄せられるように歩み寄る。

「どうして此処へ?

 まさか、捕えられて?」

幻羽婦人は優しく微笑み否定する。

「私は幻羽婦人

 有りとあらゆる時空間に存在し

 そして存在しないもの

 私を捕える事など出来はしないわ」

そこに在ってそこに無い、そういう存在だと言う。

「私はあなたに呼ばれたのよ」

そう言い先ほどの歌を歌いだす。

歌声に引き寄せられ、よろよろと彼女の周りに生気を無くしていた

「はぐれ」と呼ばれる者達が集まりだす。

その顔々には見る見るうちに表情が戻りはじめ。

赤みが差し、微笑みさえ浮かんでいる。

心の癒しの歌だった。

老若男女総ての者がその歌に聞き入る。

その声はトウランスの心にも染み込む。

過去の贖罪が洗われて行くかのように。


少し離れたところに居たエクセルにもその歌声は届いた。

「ちっ

 あの女を呼んだのか

 それで事態が好転する訳でもないのに」

エクセルは苦い思い出を蘇らせる。

昔彼も彼女を呼び寄せた事があった。

だがその結果心を取り戻した玩具に嬉々として喜んだのは黒の一族だけだった。

「まぁ、、

 あの女が頻繁に降りてきて歌うならまだ救いがあるが

 悪戯に黒の一族の貪欲さを刺激するだけなら

 むしろ悪循環だぞ」

吐き捨てるように言った自分の言葉で思い出す。

「あ、貪欲で思い出した

 トウランスに食事させるの忘れてたな、、、」

食堂で何か用立ててくるつもりがすっかり忘れていた事を思い出す。

「仕方ないな、、あれを探すか、、、」

昔よく食べていた木の実を思い出す。



トウランスは幻羽婦人に何故来てくれたのかと素朴な疑問を伝える。

「出会いは偶然ではないの」

意味深な微笑みと言葉で幻羽婦人は答える。

「あなたは流れの一部になるわ

 淀んだ時の流れが大きく動き出す

 幻羽世界に戻りなさい

 トウランス」

「しかし、、、」

何故自分の名を知っているのか、時が動くとはどういう事なのか

聞きたいことは他にもあったがトウランスの口から出たのは逆説の言葉だった。

「此処の子たちが心配?」

優しく微笑み幻羽婦人は続けた。

「いいわ

 時々私が降りて歌ってあげる

 私に出来るのはその位だけれど

 ここへ呼んだのはあなたで3人目よ」

瞳を伏せ思い出すように歌うような軽やかな声で

「一人目は黄金の髪の剣士

 二人目は紫の髪の少年

 そしてあなた」

トウランスはそんな幻羽婦人をただ見つめる。

「時の流れに係る者の魂の声は聞こえるの

 だから

 また会うかもね」

そう笑うと幻羽婦人は静かに消えた。


―出会いは偶然ではないの―

幻羽婦人の言葉が過る。

そうなのならあの飛翔の時も助けてくれたのかもしれない。

彼女を呼んだ2人の人間。

黄金の髪の剣士、紫の髪の少年。

「まさか、、紫の髪の少年って

 エクセル?」

そう考えると辻褄が合う。

彼は昔彼女を呼び、そして結果的に黒の一族を喜ばせてしまった。

助けようとしたのに苦しめる結果に終わった。

その事実は後悔となり彼の記憶に刻まれたのだろう。

だから頑なに否定していたのか、、、。

「もしそうなら、俺はエクセルに、、」

謝らなければならない、そう思い引き返そうと踵を返す。

気が付けばだいぶ彼と離れてしまった。

下の村と一口に言っても実は中々に広い。

入口には「はぐれ」と呼ばれる個体が寄り集まって暮らしているが

中央には畑や雑木林が在り自給自足できる環境になっている。

此処には家族単位、そして村としての構成が成り立ち

怯えながらも質素に暮らしている幻羽人、亜幻羽人達が居る。

現在トウランスが居るはぐれのいる地域の反対側には広大な森が広がっていた。


引き返そうとしたトウランスはいきなり口を押えられ森に引きずり込まれる。

声をあげる事も出来ずトウランスは森に連れ去られた。

乱暴に樹の幹に引き倒される。

傷口が悲鳴をあげたが声を漏らすことなく自分を押し倒した相手を見る。

そこには先ほど城に戻った筈のキルゼアが居た。

「楽しませてくれよ?

 存分にな」

くくっと残忍な笑みを浮かべそう言い放つ。



















 

 




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