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闇の中の光 4

「トウランス!」

エクセルが転移して来るなりトウランスを呼ぶ。

その声で花の影からトウランスが出てくる。

「急いでこれを着てくれ

 どうもゆっくりしていられなくなった」

そう言いながら城の共通の倉庫から持ってきた衣装を渡す。


黒の一族にも生産階級の奴隷はいる。

彼等とて衣食は必要なのだから。

ただ、扱いは大してよくは無い。

下の村の奴隷と比べればはるかにましな扱いだが

機嫌を損ねたらいつ殺されるか解らない。

奴隷とは違い、あまり力を持てなかった黒の一族も生産階級にいる。

こちらは一応市民権は得てるが重用される事は無い。

衣類は作られる端から城の共通の倉庫に納品される。

こだわりの在る女性は直接注文を入れたりもしているようだが

大抵は自分で倉庫から見繕う事となる。

ちなみに白の一族は食料は自給自足に近いが

その他の生活品は幻羽人から仕入れることが多い。


「こ、、これ、、、」

下着代わりのチェニックを着

次に渡された衣装にトウランスが怪訝な表情をする。

困惑した顔でとりあえずその衣装に手を通す。

白い長衣ローブともドレスともとれる衣装には細かい刺繍とレースがあしらわれている。

どう見ても女物だ。

同じ模様の刺繍で飾られたショールで顔を隠す。

「よく似合う

 それならばれるまい」

眼を細めエクセルが微笑む。

カモフラージュの為だとは理解できるがトウランスにはかなり抵抗があった。

「いいか

 他の黒の一族に気付かれたらその場で殺されると思え

 何があっても声を出すなよ?」

エクセルにそう念を押される。

外見はごまかせてもトウランスの声は誤魔化せない。


まだ足がふら付いているトウランスの肩を抱くようにして

エクセルはトウランスを黒の城から連れ出す。

なるだけ人通りの少ない城内を選び人目を避け上手く城門まで来る。

流石に城門には数名の門番が居る。

「そのまま俺にしなだれかかって居ろ」

エクセルの指示に従い顔を伏せるようにエクセルに寄り添う。

「これはエクセル様」

エクセルに気が付いた門番が声を掛けてきた。

「ご苦労」

エクセルは軽く頷く。

「下の村の女ですか?

 珍しいですね」

トウランスを見、そう尋ねてくる。

「へぇ、初めてでじゃないですか?

 エクセル様が女連れとは」

他の門番もそう声を掛けてくる。

「皆には内緒で頼むぞ」

覗きこんでくる門番にエクセルは目配せしそう告げる。

「大丈夫ですよ

 皆もやってる事ですし

 ましてエクセル様を誰も咎めやしませんて」

門番はそう言って笑う。

彼の職業柄、下の村の女を連れ込む黒の一族を日常茶飯事に見ているのだろう。

「しかし、、またいい女ですねぇ

 どこの女です?

 俺もまた抱きに行こうかな」

ショールの隙間から除くトウランスの美貌に門番が好色そうな笑いをする。

「生憎だがこの女は俺の専用だ

 俺の子を産ませる」

今にもトウランスに手を伸ばしそうな門番にエクセルはそう釘をさす。

「あ、、ああ

 そうなんですね

 それじゃ仕方ないですね」

残念そうな顔で門番が引き下がる。

俺の子を産ませる?

トウランスの脳裏にその言葉が木霊する。

どういうことだ?

急に強張るトウランスに気を留めるそぶりも無く

名残惜しそうに見つめる門番を尻目にエクセルは城門を後にする。


暫くそのまま歩き、道沿いに木々が並ぶ街道を行く。

そしてすっかり城門が視えなくなった頃。

「もういいぞトウランス」

優しくトウランスの肩を叩き芝居の必要が無くなった事を知らせる。

「エクセル

 さっきのはどういう?」

「ああ、俺専用って奴か?

 ああ言っておけば俺以外にお前に触れられん

 そういうルールだ

 あの門番放っておけば後を付いて来そうだったんでな」

そう言い軽くウインクする。

「下の村と呼ばれる村には

 黒の一族の欲求を紛らわす為だけに生かされている者達が居る」

話しだすエクセルの瞳は憐れみを映しだしていた。

「黒の一族は弱者を弄り甚振らずにはいられない

 そう言う遊びが好きなんだ

 異空間に幽閉される時、その為に捕らわれていた者も

 大勢共に閉じ込められた

 そしてそのまま飼われ続けている」

トウランスを見、話を続ける。

「気に入れば男も女も関係ない

 肉欲のはけ口にされ飽きれば甚振り殺される」

トウランスは青ざめながら思い出す。

其れこそが黒の一族であると。

「彼らはか弱く寿命も短い

 ある程度殺しすぎないようにしてはいるが

 管理は中々難しい

 手っ取り早いのは手当たり次第に子を産ませ増やす事だ

 増えれば数など気にしなくて済むからな」

エクセルはここで一旦話を区切りそしてゆっくり続けだす。

「その結果、稀にだが「力」を有した子が生まれる

 この俺の様にな」

トウランスは思わずエクセルを見つめる。

「あのルールは父親を限定できるようにするためのものだ」

得てして強い力を持つ者からは強い力を持つ子供が生まれやすい。

初めから目星が付いていれば見つけ易い、そういう事だ。

トウランスの表情を見、エクセルは困ったような顔をする。

「どうした?

 下の村の連中の扱いに驚いたのか?

 哀れだがどうしようもない

 血を好むのは黒の一族の本能だからな」

此処で一旦言葉を切り

「それとも

 俺の事か?」

語られた、エクセルが下の村の出身であるという事実。


「 、、、たぶん両方だ

 まさか君が、、、」

言葉に詰まる。

だが、何か喋らねばとトウランスは言葉を続けた。

「でも、意外だったな

 黒の一族も自分の子供は可愛いんだな」

トウランスはその為のルールだと解釈する。

「いや

 黒の一族にそんな憐憫の情は無い

 あくまで力の在る者を見つける手段だ

 生まれてくる子供ガキの品定め為のな

 黒の一族は男女間の愛も親子の情も希薄だ」

愛情の無い世界だとエクセルは言う。

「妙な執着心はあるけどな」

そう付け加え笑う。


同じ古の一族で在る筈なのにどうして違うのだろう?

トウランスは唇を噛み締める。

白の一族は愛情に溢れている。

幻羽人と感情面ではほぼ変わりは無い。

光神・幻羽と闇神・幻羽この2柱の神は共にこの世界を導く神であった筈なのに、、、。


「黒の一族は「力」こそが総てだ

 生まれがどうあろうと「力」さえあれば上に上がれる

 俺の様にな」

力でのし上がったとエクセルは言う。

「 、、、まぁ

 多少なりは苦労はしたが

 今は自由気ままなものだ」

さらりと事もなげに言うが

並大抵の事では無かったであろうことは容易に想像できる。

だからこそトウランスは聞かずにはいられなかった。

「自由だと言ったが

 俺を逃がしても大丈夫なのか?

 君の立場は?」

これが何かの企みでないのなら、、、。

「そこまで自由だとは思えない、、、

 せっかく登った高みではないのか?」

トウランスの心配そうな表情を嬉しく感じながらエクセルは答える。

「トウランス

 黒の中に居ながら俺はいつも思っていた

 何故、か弱き者を踏みにじり哀れさを感じないのか

 何故、美しき者を愛で安らかな心になるのを嫌うのか

 お前と居ると俺は自分に正直でいられる

 だから、気にするな」

そう言って微笑む。


「さぁ

 下の村に急ごう

 俺の記憶に間違いが無ければあそこから、、」

言いかけてエクセルは前方の道に人の気配を察しとる。

下の村から此方に向かってくる人影があった。

咄嗟にトウランスを引き寄せる。

「すまん

 我慢しろ」

そう言うとトウランスの顎を捕え口づける。

いきなり抱きすくめられ口づけられたトウランスは驚きもがくが

エクセルの力強い腕から逃れることは叶わない。

その様子は道の樹に凭れた情事の最中に見える。

「ちっ碌な女が居やしないな」

「そう?」

人影はキルゼアとアルカシアである。

下の村からの帰りのようだ。

「私には充分楽しんでいたようにみえたけど?」

ギルゼアをからかうアルカシア。

「あら?」

アルカシアの声でキルゼアもエクセル等に気が付く。

「エクセルじゃない

 ふうん♪

 王子におもちゃを取り上げられた憂さ晴らしかしら?」

エクセルが樹木に女を押し付け口づけている様に見える。

トウランスの顔はエクセルの影になりよく解らないが

キルゼアには中々の美女に見えた。

「まぁ、いいんじゃない

 下の村の女で遊ぶのはいい傾向よ」

くすくすと面白そうに笑いながらすれ違うアルカシアの横で

あんな女が残ってていたのかと残念そうに舌打ちするキルゼア。

そのまま2人は城へ向かって歩いて行った。


「行ったか、、」

安堵のため息をつきエクセルはトウランスの肩を放した。

「アルカシア

 あの女だが、わりと鋭いんでな

 巧くやり過ごせて

 ん?

 どうした?」

トウランスの様子がおかしい。

涙目で唇を抑えわなわな震えている。

「おい?」

心配するエクセルの手を振り払い。

そっぽを向く。

「トウランス?」

訳が解らずエクセルがトウランスを呼ぶ。

きっ!とエクセルを睨み振り返ったトウランスが叫ぶ。

「何も舌まで入れなくてもいいだろっ!

 フリだけで十分じゃないかっ!」

「はぁ?

 それじゃばれるだろ

 なにもそんなに、、」

キスぐらいで騒ぐ事は、、と続けようとし

はたと思いつく。

「まさか、、トウランス?

 お前、、、

 嘘だろ?その顔で

 その歳で?」

そう、フォーストキスだった。

ファーストキスが男とのディープキスとは、、、。

そりゃ、泣きたくもなる。

「ほっといてくれっ!」

トウランスにもいろいろ複雑な事情があった。

色恋沙汰などする余裕も無かったのだ。






 


 









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