闇の中の光 2
鬱葱とした山林が点在し、山肌が露わになる山脈。
近くに村も何もなく荒れた土地が続く。
ミューズとアロンはそんな道も無い様な山肌を歩いていく。
「本当にこの辺りなのか?
なにも無いようだが?」
アロンが周りを見渡しミューズに尋ねる。
山頂近い崖の上なのでかなり見晴らしは良い。
足を止め風になびく髪を鬱陶しそうに抑えながら
「解らん
だが気配がする
要石というより懐かしい様な感じだ」
ミューズが答える。
アロンも微かな気配を感じふと崖下に眼を落す。
木々の間に走る数人の男たちが居た。
「あれじゃないのか?」
風下になるアロン達に男たちは気が付いてないようだった。
「白の一族か?」
ミューズも眼で追う。
「らしいな
さしずめ要石のガードに向かうってとこかな
奴らが案内してくれそうだな」
こんもりと木々の塊が点在しているが、荒れ地の度合いが多い為
崖上から彼らの行動はよく見えた。
じっと彼らを見つめるミューズにアロンが声をかける。
「どうした
仲間を見て里心がついたか?
何なら白へ帰ってもいいぜ」
別にミューズが白へと逃亡し、敵に回ろうが構わない。
戦う楽しみが増えるだけだ。
だが、ミューズは表情を変えることなく答える。
「いや、、、
むしろ何の感情も湧かない事に驚いている」
懐かしいとも、嬉しいとも何も感じない。
心に在るのは果てしない怒りのみ。
彼女はこの感情を持て余していた。
「刈るぞ」
言うが早いかミューズは崖を滑るように駆け降りる。
「あ、おいっ!
あいつらは泳がせておけ
要石の在りかが解るだろ!」
アロンの制しを聞かず、ミューズは剣の柄に手をかけ
3人の白の一族に躍り掛かる。
駆け降りた勢いで一人を両断し、そのままもう一人を下から薙ぎ払い。
返す刀で残った一人の首を跳ねる。
流れるような一連の太刀筋で3人をあっという間に屠る。
追い付いてきたアロンが屍を見、呆れたように言う。
「あーあ
殺っちまったか、、、」
剣を柄に戻すミューズは悪びれもせず
「こいつ等は増援だ
数は減らしておいた方がいい
雑魚相手とはいえこちらは2人だ」
そう語る。
一見理に適った言い分だがミューズの心の中は違っていた。
男達を屠る事で心中の苛立ちが少しは収まるかと思ったが、逆だった。
返って火に油だった。
渦巻く憎悪が紅蓮となりミューズを支配する。
この怒りを憎しみをぶつけられるなら相手など誰でもよかった。
次の獲物を探すべく要石の気配を読む。
「それに場所なら解った」
獲物を見つけ、ニヤリと笑う。
そう離れていない山肌の洞窟を利用して隠し場所は作られていた。
入口は巧妙に偽装されていたが在りかが解るミューズには意味をなさない。
迷うことなく入口を探しだし中に滑り込む。
中には白の剣士や魔術士が8名、要石を守っていたが
あっという間にミューズに全員屠られる。
アロンの出番は全くなかった。
アロンがミューズの後を追い、洞窟についた時にはほぼ終わっていた。
剣を握り佇むミューズの息が荒いが、是は疲れた訳ではなく
渦巻く憎悪に振り回されている所為である。
が、アロンには解らない。
息をつく間も無いくらい殺害に興じていたと理解する。
「ったく
一人で殺っちまって
少しは俺に残してくれりゃいいのに
お前さっきといい全く手加減しなかっただろ?
全力で振り切るんだもんな
ほんと、情け容赦無しって感じだぜ」
打ち倒された白の一族を確かめながらアロンが文句を言う。
「ちっ、こいつも死んでるか
元は同じ白の一族だろうに
やはりエクセル様の血の所為かな」
掴んでいた白の一族の死体を放り投げる。
アロンとて白を屠りたくてうずうずしていたのだ。
要石のありかを突き止める為我慢していたというのに
ミューズに綺麗に持って行かれてしまった。
せめて一人くらい残して欲しかったと愚痴がでる。
情け容赦ない仕打ちは黒の一族そのままだ。
エクセルの血の所為だろうとアロンは推察する。
だがそれは違った、エクセルの所為では無い。
ミューズには解っていた。
総ては彼女の中の怒りの所為である事を。
どんなにぶつけても彼女の果てる事のない怒りは治まらなかった。
怒りをぶつけ蹂躙しても、渦巻く憎悪は癒されはしない。
より血の犠牲を求めるだけだった。
そう、彼女には断末魔の鼓動が耳に心地がよかったのだ。
「ふっ
要石の悲鳴が聞こえる」
ニヤリと笑うミューズの表情を見たアロンは呻く。
「おいおい、今の表情なんか
黒の一族その物じゃないか、、、」
殺戮に魅了された笑顔。
まさしく黒の一族の表情だった。
白の一族として生まれ明るく天真爛漫だったミューズ。
だが、憎悪が彼女を変えた。
白の一族と黒の一族、その境界線は何処にあるのだろうか?
「いくぞっ!」
残忍な笑みを湛えミューズは洞窟の奥へ走る。
後を追おうとしたアロンだったが何者かに足首を掴まれる。
視れば息も絶え絶えの白の剣士が行かせまいと
血まみれの手でアロンの足首を掴んでいた。
苦痛に呻きつつもアロンを睨む眼にはまだ力があり
侵入者を止めようとする意志があった。
アロンは冷たい笑みを浮かべる。
「へぇ
好きだぜ、そういう奴」
そう嬉しそうに言いながら手に魔力を集める。
爆音が響く。
ミューズは後方の爆音にも振り返らず奥へと走る。
が、最深部までは行かずに足を止める。
「この辺り、、、」
要石の気配がする。
そのまま要石の声に心を傾けける。
次の瞬間、位置を把握し。
真横の岩肌を睨み剣を突き立てる。
岩肌から岩盤が削り取られ、要石が姿を現した。
「これで2つ目」
笑みを浮かべ剣を突きたて要石のプロテクトを外し、そのまま叩き割る。
ドンッ!という音をたて黒のマナが解き放たれた。
まるで黒い光の柱が立ったかのように黒のマナが放出される。
スフスフの地下に在った要石よりだいぶ大きく
大量のマナが幻羽世界に解き放たれることとなる。
それは、黒の一族の浸食の加速を意味する物だった。
少し短いですがきりが良いので。




