王の選出 2
スフスフの都は高台に城があり。
貴族の屋敷、商店、民家が順に周りを囲む城郭都市となっている。
これは他の国から自国を守るというより、蜘蛛の脅威から幻羽人を守るためである。
その城壁はかなり高い。
田畑は城壁の外にあるが、いざとなれば飛んで逃げられる距離にある。
一般に蜘蛛は飛べない。
シェラはロク鳥の手綱を取り、城まで続く石畳を登り城の正門に着いた。
門の衛兵が慌てて行く手を遮る。
「お待ちください!王の許可が無ければここから先には」
少し戸惑いながらシェラは衛兵を見た。
白の剣士である自分を何故止めるのだろうか?と。
「我々は白の里から来たものだが?」
「あ、はい、それはそのお姿を拝見すれば、、」
白の剣士だと解らぬから止められた訳では無いのか、、。
確か王の選出には白の里からの立ち会い人が必要なはずだ。
古い風習だがどの都も形式的とはいえまだ続けているはず、ならば。
「「お館選び」というのに立ち会いたいのだが?」
「え?あ、いえ、もう立ち会いの剣士様はもうすでにいらしてるので、、、」
立ち会いは複数は要らぬという事か?
だが、はいそうですかと引くわけにもいかない。
如何したものかとすっと眼を細めた時に。
「シェラ? シェラじゃないか?!」
不意に名前を呼ばれ振り返る。
「トリスト?」
そこにいたのはシェラのよく見知った剣士だった。
「よぉ、久しぶりじゃんか」
トリストは腕は確かに立つ男なのだが、少々白の剣士という威厳に欠けるというか。
気さくといえば聞こえがいいが、振る舞い、物言いが軽すぎる!
もう少し白の一族の威厳をもった話し方を!
といつもの様に小言を言おうかとする前に。
「うぉ?!ミダル様~?!!」
騎乗(馬ではないが)の人物に気が付いたトリストが素っ頓狂な声をあげ
衛兵に怒鳴った。
「おいっ!早くお通ししろっ!」
「はい?」これまた衛兵が間の抜けた返事をする。
「白の魔導師ミダル様っ!
このお方はな、白の王子シュリアン様でさえ一目置かれる
それは偉~~いお方なんだぞっ!!」
うむ、至極わかりやすい説明だなトリスト。と半分呆れ顔でシェラは彼と衛兵との
やり取りを見ていた。
その後は、トリストに捲し立てられた衛兵が衛兵長に、衛兵長から執事長へ。
慌ただしく伝言リレーが行われすったもんだの末
ミダルは貴賓室へ、シェラはミダルの隣の部屋をあてがわれることになった。
質素ではあるが品のいい使い込まれた調度品が亡き王の趣味をうかがわされ
なかなか好感をいだける部屋だ。
シェラは白銀の甲冑を脱ぎ体のラインにぴっちりとあった緩衝用の服になる。
甲冑を整えていると窓に小石が当たる音がした。
「?」
下を覗くとトリストが手を振っている。
「降りてこいよ」
城の中庭で久方ぶりの再会に話ははずむ。
白の里以外で白の一族がまみえるのはごく稀な事なのだ。
白の一族の数は少ない。
まして幻羽人の生活圏内にいる一族は数名だろう。
「しっかし、シェラがミダル様の護衛をしてるとはな~」
「ただのお供さ、第一ミダル様に護衛は必要ないだろ」
「ははっ、そりゃまぁそうだな」
ミダルは太古からの生き残りの一人、大魔導師である。
彼にかなう者など考えられなかった、そして彼には死角すらない。
「トリストこそ 立ち会いの剣士だって?」
面白そうにシェラが笑う、この男堅苦しい事は大の苦手なのだ。
「いやまぁ、なんか成り行きでな、白の剣士なら誰でもよかったみたいだし」
ポリポリと頭を掻く。
「そのようだな」
「なんだよ、ひでーな」
「儀礼事は苦手じゃなかったのか?剣士長に押し付けられたか?
いや、、、そうか、使者が妙齢のご婦人だったんだな?」
そして、美人にも弱い。
「ったく、、、かなわねぇな
じじぃの奴俺が苦手な事知ってて押し付けるんだもんな~
シュリアン様も
『トリストにはいい経験だよ』なんつって助けてくれないし
使者の御嬢さんは真っ青になってたし
まぁ、、今回は楽に済むって話みたいだったから
そんならいいか、、、と思ってな」
全部当たりだったようである。
「そういえば『光羽』の持ち主だとか、本当なのか?」
「なんだ、それで来たわけか」
「老師、、いや、ミダル様は『幻羽』を探しておられる
『光羽』は『幻羽』の証の一つだそうだ」
「幻羽って、前大戦で黒の一族を異空間へ封印した白の光神だろ?
あいつがか?」
「わからん、それを確かめに来た
本当にそいつの羽は光羽なのか?
どんな奴だった?」
う~ん、と顎に手をやり考え込みながらトリストが答える。
「どんな奴って言われてもなぁ、、、かなりの優男だったぜ
羽は見ていないから何ともいえないけどな
まぁ焦らなくても今晩のレセプションで会えるだろうさ
王の選出は明日だから派手な前夜祭をやるらしい
奴は主役だからな」
「前夜祭か、、、」
「そうだ、シェラもドレスかなにか貸してもらえよ。
大胆な奴とか、俺楽しみにしてるからさ♪」
嬉しそうに笑うトリストに にっこりとシェラは笑い。
「私は甲冑を着る」
「はぁ??」
「別に私が着飾らなくとも美しく着飾った娘たちが大勢来るだろう」
「いや、それはそれで嬉しいんだけど、俺としてはシェラの盛装を、、、」
「白の剣士の正装は甲冑だろう?」
悪戯そうにシェラは笑いくるりと踵をかえす。
「それではまた、夜会で会おうトリスト」
軽く手を振りその場を後にする。
「ちぇっまたはぐらかされちまったか、、
そりゃ甲冑もいいけどなぁ、ドレスの方が断然似合うと思うんだけどなぁ
つ~か、見てみたかったなぁ、、、」
後に残されたトリストは深々とため息をついた。




