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黒の聖地 7

エクセルは神妙な表情で黒の聖地を眺めていた。

先ほどの爆発で外周は削られてしまっている。

何が起こった?

自分が外周を広げた時、何に反応して大爆発が起こったのか?

そう言えば光柱が4隅に立ったと言っていた。

白の結界魔法なのか?

相反する属性魔法の接触の結果だというのか、、、?

総ては憶測の域だった。



巨大なクレーターの一角。

瓦礫を押しのけて動く人影。

「これは、、、」

すっかり変わってしまった辺りの地形にトリストは絶句する。

「黒の聖地と白の結界石が接触した結果だ」

瓦礫に背を預けシュリアンがため息をつく。

「まさかこれほどの破壊力とは、、、

 根本的に認識を改める必要があるな」

優美な眉を顰める。

「ちっ、あれだけの爆発で外壁を削っただけなのか

 なんて強度だ、、、」

忌々しげに無傷で残る黒の聖地を睨むトリスト。

「引くぞトリスト」

「王子!俺はまだ戦えます!」

シュリアンの強力な防御結界のおかげで自分はほぼ無傷だ。

まだ、負けた訳では無い!とアピールする。

「そう言う問題じゃないよ」

やれやれとシュリアンは言葉を続ける。

「よく見てみろトリスト

 今の爆発スフスフの都まで巻き込んでいる

 全て我々の認識不足による結果だ

 これ以上幻羽人を巻き込む訳にはいかん!

 あの黒の聖地に守られている限り

 今の戦力では勝てん

 やみくもに被害を拡大させるだけだ

 正直あれが発動する前に何とかしたかったが

 こうなってしまった以上仕方ない、、、」

覚悟を決めたという表情で一度言葉を切り

シュリアンは言った。

「ニニデを開放する」


「王子、それは、、、?」

トリストにはいまだ聞いたことのない地名(?)だった。

「て、、、」

頭に手を当てながらグランが起き上がる。

「!

 トウラン?

 トウランス?!」

意識がはっきりした途端に思いだし

トウランスの名を呼ぶ。

彼が最後に見たトウランスは黒の聖地に飲み込まれそうになっていた。

トリストはグランから眼をそらしながら

「あいつは、、、俺を庇って黒の聖地に、、、」

申し訳なさそうにグランにそう告げる。

「嘘だ!トウランスがそんなへまするもんかっ!

 絶対何とかしてるよっ!」

悲痛なまでの信頼だった。

「きっとまだ黒の聖地の近くに居るんだ

 俺、探しに行くっ!」

飛び出そうとするグランの首にトリストの手刀が入る。

グランは意識を無くし、トリストに倒れ込んだ。

「すまん、お前まで死なせる訳にいかんのだ」

咄嗟のトリストの判断だった。


「トリスト良い判断だったが

 少し早計だったかもな」

トリストの判断を褒めつつ王子様は難色をしめす。

「実は私も、さっきの防護壁で魔力を使い果たして動けんのだ

 お前3人担いで帰ってくれるんだろうな?」

「へ?」

さらっとえげつない事をのたまった。

かくしてトリストは王子を背負い、左手にグランを右手にリューズ抱え

帰路に着くことになる。


「トリスト」

どのくらい歩いただろうか

トリストに背負われながらシュリアンが話しかける。

「なんですか?」

少し息が荒くなりながらトリストが答える。

「私もトウランスが生きている様な気がするよ

 あいつには、そういう不思議な処がある

 きっと巧くやっている、そう思うよ」

弟弟子にあたるトウランスをシュリアンはそう信じる。

トリストはその言葉に頷いた。

「ええ」

そう、トウランスは黒の魔力も有する稀有な魔術師だ。

彼なら、、、そう願わずにはいられなかった。




「ええいっ!糞っ!!

 あの白の羽虫めがーーーっ!」

体中に傷を負い包帯まみれになったアーカルが忌々しげに怒鳴る。

左手は骨が折れているのか肩から吊っている。

マントはボロボロになったためすでに着てはいない。

右目も怪我をしたらしく包帯で隠れている。

黒の一族は回復魔法が使えない為こうなると痛々しい。

「大体エクセルなんぞの口車に乗ったのが間違いだったわっ!

 生き残ったのはお前と俺の2人だけだと?!」

そう、生き残ったのはアーカルとトリンの2人だけだった。

憤慨収まりきらぬアーカルにトリンは首をすくめる。

彼らを助けてくれたのはそのエクセルなのだ。

咄嗟に駆けつけてくれ。

風魔法と防護魔法で爆発に巻き込まれるのをすんでの処で回避してくれたのだ。

感謝こそすれ悪態をつく義理ではない。

「そう言えばエクセルは何処だ?」

アーカルの質問にトリンは白けながら

「さあ?」と答えた。



その頃エクセルは

操る黒の聖地に妙なノイズがあるのに気がつき

原因を探そうと見回っていた。

黒の聖地は球体から魔力を発動させ解放すれば

さながら花が開くように幾重にも広がり出る結界魔法である。

外周が削られようがすぐ補充される仕組みになっている。

核である発動地点にある結晶を破壊しない限り解かれる事は無い。

唯一の破壊手段は空からの奇襲とされているが。

其れさえも上空10m以内に近づけば術者が居なくとも

自動的に核を守るため内輪がドーム状に閉じる仕掛けになっている。

実は核自体も防御結界に守られている。

闇神が作った難攻不落の防御結界魔法なのだ。


それはほんの微かなノイズだった。

エクセルでなければ気がつかない程の。

「この辺りか?」

独り言を言いながら異物ノイズの正体を探す。

その目に飛び込んできたのは

変形した防護結界のまま黒の聖地に捕らわれているトウランスの姿だった。

歪んだ防護結界の為、男、としか判断がつかない状態だ。

「生きてる、、、のか?」

エクセルはくいっと手を手前に引くような動作をし

トウランスを結界ごと黒の聖地から切り離す。

どさっと音をたてて支えを失った体が地面に落ちる。


「防護結界が拉げて膜になってるな

 もう少し遅ければアウトだったか、、、」

そう言いながら膜状になった防護結界を剥がしてゆく。

中の男は血塗れになっていた。

「なっ!」

剥がし終え、その容姿にエクセルの鼓動が高まる。

まさか、、、そう思いながら震える手で覆いかぶさる前髪をそっと整える。

「まさか、、、」

思わず心の中の声が洩れる。

その容姿は彼が探し求めていたひとに酷似していた。


そう、ずっと探し求めてきた。

魂に刻み込まれた記憶の中で出会ったひと

水鏡に戯れにその姿を描き、想いを募らせたひと

自分が盾となり剣となり全ての者から守ろうと心に決めたひと

そのひとに彼はそっくりだった。















少し短いですがきりが良いので。

これにて3巻終了です。

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