黒の聖地 3
かなり時間が空きました(><)
スフスフの都から街道沿いに数日歩き
左右にあった森の木々が途切れだした頃、小さな村が見え始める。
山のすそ野に広がる畑、畑の中から村へと流れる小川。
草を食む家畜のどかな村だ。
「リューネだ」
グランがいち早く村を見つけ駆け出す。
釣られてリューズも小走りになる。
その様子を微笑ましげに見つめていたトウランスだったが
不意に眉を顰め二人を止める。
「グラン待て、様子が、、」
その言葉が言い終える前に二人の背後から忍び寄る者がいた。
リューズが小さく悲鳴を上げる。
トウランスの背後にも音もなく男が現れる。
咄嗟に指先に魔力を集めるが
「トウランス?」
「トリスト?!」
お互い相手を確認し合いトリストはトウランスの首筋に突きつけた剣を止め。
トウランスはトリストの眉間に突きつけた指先の魔力を拡散させた。
「お前、、何でこんなところに?」
剣を下しながらトリストが尋ねる。
「おい、こいつらは敵じゃない、剣を引け」
部下に合図する。
リューズの方は見知った剣士だったらしく
がたがた震えるリューズを見てすでに剣を納めていた。
が、グランの方は逆に背後の剣士をいなし取っ組み合いを始めている。
「黒の剣士かと思ってな、、いきなり悪かったな」
謝るトリストに
「そうか、ヌーク殿が伝えてくれたんだな」と安堵するトウランス。
「ああ、王子の命で俺達が派遣された」
ニヤリと笑うトリスト。
「よかった、、ちゃんと伝わったんだ、、」
そう言い終えると緊張の糸が途切れたのかその場でリューズは崩れ落ちた。
「あ、おいリューズ?! てめ~っ!何したんだ?!」
「え?いや、、何も、、」
おろおろする剣士にグランが怒鳴る。
「何もって現に倒れてるじゃないかよっ!」
三つ巴の取っ組み合いに変化していた。
「、、、トウランス、あれ、止めてくれないか」
おいおいおいと呆れ果てて頼むトリストに
「すまん、、ああなるとどうにも、、」
ドン引きの2人を尻目に決着がつくまで取っ組み合いは続いた。
ぺろっと手についた擦り傷を舐めるグラン。
「とうとう2人とも伸しちまいやがったか」
やれやれというていでトリストがグランを見る。
「すまん、、」申し訳なさそうにトウランスが謝る。
「いや、弱いこいつらも悪いんだ
ったく、先が思いやられるな」
戦力の底上げの必要があるとは思っていたが、仮にも白の剣士とあろうものが
幻羽人の少年にあしらわれてどうする!
まったくもって弛んでる!ため息すら出ない。
それともこの少年が規格外だということか?
「なぁ、、トウランス明日、、」
といいかけてトリストは言葉を飲み込んだ。
「いや、やっぱいいわ、なんでもない
元気そうだな」
たわいのない挨拶に言葉を代える。
「え、うん」
「お前がシェラを助けてくれたんだってな
ありがとう
本当に恩にきるぜ」
トリストの心からの感謝であった。
「いや、、俺は何も、、ヌーク殿の御力だ
トリスト、シェラにリューズの事を頼まれたんだが
お前が白の里に連れて帰ってやってくれないか?」
伏し目がちに躊躇いながらリューズの事を頼むトウランスに
まだ白の里へのわだかまりがあるだなと察したトリストだったが。
「悪い、それは出来ん
俺はスフスフの神殿に行く」
トウランスの頼みをあっさりと断る。
その言葉の意味にトウランスの方が動揺した。
「先ほど言いかけたのはそれか?
まさか、、、王子の命とは、黒の一族の討伐か?!」
「黒の毒虫達をのさばらしておく訳にはいかんからな」
ふてぶてしい笑いで答えるトリスト。
「駄目だっ!行くなトリスト!
とんでもない魔術士が居る!」
慌てて止めるトウランスに今度はトリストの方が怪訝な表情を浮かべる。
「トウランス?」
「あのシェラを一撃で倒した相手だっ!
見た事も無いほどの魔法のキレだった
あの魔術士とだけは戦うな!
正直俺なんかでは足元にも及ばない、、
今思い出しても寒気がする
シェラが助かったのは殆ど奇跡だ
シェラがもし純粋な白の一族なら助からなかった
あまりにも正確な一撃だったからわずかに急所からそれたんだ」
必死の形相だったトリストはこんなトウランスを久しく見た事が無い。
「そうか、忠告有難う
だが、どんな相手だろうが幻羽世界の調和を崩す黒の一族の侵入を阻止する
それが俺達白の剣士、幻羽世界の守護者たる揺るぎない誇りだ」
有り難いと思った、友人の心配が、だが引くわけにはいかない。
「それに黒の魔術士に有効なのは白の剣士だ
俺の仕事だろ」
トウランスの不安を吹き飛ばすかのようにトリストは笑って見せたが
トウランスの様子は変わらない。
彼には解っていた、相性でどうにかなる相手ではない事を。
次元が違うのだ。
トウランスはトリストに死んでほしくなかった。
眼を閉じ、覚悟を決める。
「トリスト俺も行こう
正直役に立てるかどうかは解らないが
回復魔法くらいなら出来る」
「何、柄にもない事を言ってんだよ」
そんなトウランスの肩を力強く叩きそのまま肩を抱く。
「無理すんなよ、お前まだわだかまってるんだろ?
それに、お前自身の傷がいえない限りはたとえ黒の一族相手でも
お前は攻撃するのを躊躇うだろう
そんな危なかしい奴連れて行けるか」
トウランスは幻羽世界において類を見ない魔術士だ。
最強と言っていいとトリストも思っている。
だが、、もろ刃の剣であるのも事実だった。
彼自身の甘い性格ゆえに、そして負ってしまったトラウマの為に。
「けど嬉しいぜお前の気持ち
そしてどれだけやばい相手なのかもよく解った
安心しろ伊達に「豪腕」の字名は持っちゃいない
そうそう簡単にくたばりゃしないさ」
そう語るトリストの表情は気負いもなくただ使命を全うする。
力強い意志の宿ったものだった。
「だからお前はシェラが頼んだ通りリューズを白の里に送ってやってくれ
途中いろいろ物騒なところもあるしな」
抱いていた肩を軽く叩き
「後、そこに伸びてる二人に回復魔法頼むわ
俺はリューネの長老に話通して来るから」
軽く手をふりトリストは村の中心へ歩き出す。
「あいつ、トウランの事やけに詳しいんだ?」
傷口を舐めながらグランが言う。
伸びてる白の剣士に軽く回復魔法をかけ
気絶しているリューズの様子を確認してから
トウランスは懐かしそうに語る。
「トリストには何度も助けられた
本当に古い、、友人なんだ」
そう、白の里に行く前も行った後も何度も助けてもらった、、、。
「ふ~ん」
豪腕のトリスト、白の剣士幻羽世界の守護者か
羨望にも似た眼差しでグランの瞳はトリストの後を追う。
と、その守護者が器用に後ろ向きで後戻りをして来た。
くるりと目の前で振り返る。
「トウランス、ひとついいか?」
トウランスに質問する。
「お前なんで敵の事が解ったんだ?」
「それはシェラの傷口を見たらどんな魔法ぐらいかは、、」
「どこの?」
「胸」
うっとトリストが息を飲む。
「トウランス、、
シェラの事は本当に感謝している
だが、、それはそれ、これはこれだ」
きょとんとトウランスはトリストを見ていた。
「てめぇっ!俺でさえまだ見ていないのにっ!」
いきなりトリストの鉄拳が飛んでくる。
咄嗟にトウランスは防護壁を張り阻止したが
「ちっ!」
トリストの舌打ちと同時の衝撃音のあと防護壁は粉々に壊れた。
トウランスの顔から血の気が引く。
確かに本気で張った防護壁でなかったがそれでもかなりの強度はあったはずだ。
それを素手で割るかーーーっ?
割った本人は相当いたかったらしく腕を抑え蹲っている。
「の野郎~、出来る様になりやがって、、」
じんじんと赤くはれた拳をさすりトウランスを睨む。
トウランスはまさか第二波が来るのでは?と身を引く。
「トウランっ!」
トリストの怒鳴り声に思わずびくりと反応してしまう。
やはり第二波か?
「回復魔法、、頼む
これ、、すげ~痛い、、」
「、、、同じこと、、しないなら、、」
「おう、、」
不承不承にトリストも約束する。
防護壁を素手で攻撃するのはやめた方がいいと心に決め。




