第七話 勝手につく電気
今回の依頼は、実に単純なものだった。
「部屋の電気がつくんです」
依頼人の女性は、困ったようにそう話した。
「夜になると、誰もいない部屋の電気が勝手につくんです」
「毎日ですの?」
「はい。ほとんど毎日」
「時間は決まっていますの?」
「だいたい同じです。午前二時頃ですね」
雲母は頷いた。
「では、確認しましょう」
「はい」
案内された部屋には、特に変わったところはなかった。
照明。
壁。
窓。
家具。
スイッチも、ごく普通のものだった。
「配線などは?」
「電気屋さんにも見てもらいました。でも、問題ないそうです」
「スイッチは?」
「もちろん確認しました。誰かが触らない限り、つくことはありません」
「なるほど」
雲母は部屋を見回す。
特に何かが見えるわけでもない。
「では、実際に確認してみましょう」
その日は、カメラを部屋に設置することにした。
「これで、誰かが入ってきてスイッチを押しているかどうかも分かりますわね」
「はい」
そして夜。
三人は別室でカメラの映像を確認していた。
午前二時。
「……そろそろです」
依頼人が小声で言う。
「……」
映像には、誰もいない部屋が映っている。
何も起こらない。
時計の表示が、午前二時を少し過ぎた。
その瞬間。
パッ。
「……」
「……」
部屋の電気がついた。
誰もいない。
スイッチには、何も触れていない。
カメラは何の問題もなく、その一部始終を記録していた。
「……つきましたわね」
「はい……」
「誰も入っていませんわ」
「はい」
「スイッチにも触れていません」
「はい」
雲母は映像をしばらく見つめる。
「……」
翌日の夜、念のためもう一度確認した。
やはり、同じだった。
配線にも異常はない。
スイッチにも問題はない。
カメラにも異常はない。
誰も部屋へ入っていない。
それでも、時間になると電気だけがつく。
二度目の確認を終え、雲母は最後に部屋を見回した。
「……」
何もいない。
何も見えない。
「雲母お嬢様…」
「何ですの?」
「結局……何だったんでしょう?」
「……」
雲母は少し考えた。
「何だったんですの、あれ?」
「いや、僕に聞かれても……」
「そうですわね」
雲母は小さく頷いた。
「分かりませんわ」
「……」
依頼人の女性も、困ったように目を伏せる。
雲母は依頼人へ向き直った。
「申し訳ありません。二度確認しましたけれど、原因までは突き止められませんでしたわ」
「そうですか……」
「まあ」
雲母は部屋を出た。
「電気がつくだけですもの」
「いや、それが怖いんですよ……」
足立も慌てて後を追った。




