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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第47話:不遜な王子と死神の眼光。私の妻に触れるな

「……エルシア、やはりあの男、この場で凍らせておけばよかったな」


 サバナ王国の王都『シャウラ』。

 黄金の輝きに満ちた王宮へと続く回廊で、カイルム様が私の耳元で低く、低く毒を吐きました。

 彼の大きな掌は、私の腰を砕かんばかりに強く引き寄せ、周囲に目に見えるほどの漆黒の魔気を漂わせています。


「カイルム様、落ち着いてくださいませ。……まだお会いしてもいないのに」


「会わずともわかる。あやつらは、君を『珍しい異国の宝石』か何かだと思っている。……私の魂を、そんな下卑た好奇の目に晒すこと自体が万死に値するのだ」


 カイルム様が私の肩に顔を寄せ、深く息を吸い込みました。

 私の肌に触れる彼の鼻先が熱く、独占欲に焼かれているのが伝わってきます。王都ルミエールで蔑まれていた私が、今や、カイルム様にとっては「世界から隠しておきたい至宝」になっている……。

 その事実が、くすぐったくて、そして何より誇らしくて。私はそっと、彼のマントの端を握りしめました。


 サバナ王国の玉座の間。

 そこには、黄金の装飾に身を固めた人々が、私たちの入城を待ち構えていました。

 中心に座るのは、病に伏せっているという国王の代理――第一王子、アハメド。


「おお、これは……。ハシムの報告以上だ。北の地に、これほどの雪の精が隠れていたとはな」


 玉座から立ち上がったアハメド王子が、ねめ回すような視線を私に向けました。

 王都の元婚約者、リュシアン様が持っていたような「傲慢」とはまた違う、手に入れたいものを値踏みするような、収集家の眼差し。


「……サバナへようこそ、北領の死神閣下。そして、可憐なる氷の聖女よ」


 アハメド王子が、不敵な笑みを浮かべて私へと歩み寄ってきました。

 そして、私の手を取ろうと、無遠慮に黄金の指輪がはまった手を伸ばしてきたのです。


 ――その瞬間、謁見の間の空気が一瞬にして「凍り」ました。


 バキ、バキバキッ!


 アハメド王子の足元の床から、禍々しい漆黒の氷がとげのように突き出し、彼の行く手を遮ったのです。

 あと数センチでも彼が前に出ていれば、その足は貫かれていたでしょう。


「……私の妻に、その汚れた指で触れようとするな」


 カイルム様の声は、地を這うような死神の宣告でした。

 彼は私を完全に背後に隠し、アハメド王子を射殺さんばかりの眼光で見下ろしました。

 王宮を守る近衛兵たちが一斉に剣を抜こうとしましたが、カイルム様が放つ圧倒的な殺気に、誰も指一本動かすことができません。


「死神閣下……。これは外交問題になりかねない非礼ですよ?」


 アハメド王子が、冷や汗を流しながらも強気に言い返しました。

 けれど、カイルム様は鼻で笑うと、彼の手首を一瞬で凍てつかせるほどの冷気を放ちました。


「非礼なのはどちらだ。……エルシアは、この地に慈悲を与えに来た。貴様の欲望を満たすために来たのではない。……次だ。次、その視線が彼女の肌を舐めるようなことがあれば、この王宮を丸ごと、私の魔力で永久凍土の下へ沈めてやる」


「…………っ」


 王子の顔が、恐怖で土色に染まりました。

 カイルム様の愛は、いつだって極端で、暴力的なまでに全肯定です。

 私を傷つけるもの、私を不快にさせるものすべてを、彼は容赦なく排除する。……王都で誰からも守られず、一人で凍えていた私にとって、この「重すぎる独占欲」こそが、何よりも信頼できる愛の形でした。


「カイルム様……。もう、そのくらいに」


 私が彼の背中にそっと手を触れると、荒れ狂っていた漆黒の魔気が、嘘のように静まりました。

 カイルム様は、私を振り返ると、先ほどまでの冷徹さが嘘のような、蕩けるほど甘い瞳で私を見つめ直したのです。


「……すまない、エルシア。……君があまりに美しいのが悪いのだ。……私の理性が、君を誰の目にも触れさせたくないと、常に叫んでいる」


 そう言って、彼は皆が見ている前で、私の指先を一本ずつ、丁寧に、そして執拗に口づけました。

 まるで、自分の所有物であることを世界に知らしめるような、熱い刻印。


 謁見の間が、困惑と畏怖に包まれる中。

 私は、懐に忍ばせていた「氷の破片」が、激しく熱を帯びていることに気づきました。


(……この奥に、誰かいる……?)


 カイルム様の愛撫をうっとりと受け止めながら、私は視線を王宮の深淵へと向けました。

 

 アハメド王子の瞳の奥に潜む、打算と、何かに怯えるような色。

 そして。

 王宮の地下から響いてくる、私の魔力と共鳴するような、氷の啜り泣き。


 黄金の王宮は、単なる救済を待つ場所ではありませんでした。

 そこには、かつての私と同じように、誰にも届かない場所で凍えている「何か」が、私を呼んでいたのです。

「……この王宮を丸ごと、私の魔力で永久凍土の下へ沈めてやる」

カイルム閣下、不遜な王子への牽制が、もはや「宣戦布告」の域に達しておりますわね!

エルシア様が指一本触れられることさえ許さないその執着……。

なろう読者の皆様も、この圧倒的な「全肯定の騎士ぶり」に、

心拍数が上がってしまわれたのではないでしょうか。


アハメド王子の無礼を一瞬で粉砕し、

王宮の面々を恐怖と敬畏で支配してしまった閣下。

ですが、エルシア様が感じた「氷の啜り泣き」の正体とは一体……?


黄金の砂漠、その中心にある王宮には、

まだエルシア様も知らない「悲劇の種」が隠されているようです。

次回、氷の聖女がその慈愛で、砂漠の闇をどのように照らしていくのか……。


もし、閣下の「俺の妻を値踏みするな」という激しい愛に痺れてくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】の継続と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

エルシア様の調査に「真実を見抜く光」を贈ってあげてくださいな。


皆様の評価が、エルシア様の魔法をより研ぎ澄ませ、

閣下の独占欲をさらに「甘い極致」へと誘う力になりますわ。

次回、第48話「干上がった大オアシス。氷華の祈りが降らす雨」でお会いしましょう。

(※聖女無双、そして王宮の地下に眠る秘密が暴かれますわよ!)

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