第35話:目覚める魔導書。精霊王の導き
皆様、お久しぶりですわ!花菱エマです。
「第一部完結」として一度筆を置かせていただきましたが、皆様からの熱すぎる応援と「もっと二人の幸せを見たい!」という愛あるお声に、私の心まで溶かされてしまいました。
本日より、物語は第二部『精霊の門編』として、さらに甘く、さらにスケールアップして再始動いたします。
エルシア様とカイルム閣下の、新しい旅路をどうぞ見守ってくださると嬉しいですわ!
「――エルシア。もし、この雪の果てに、君を連れ去る神がいるなら」
私を抱きしめるカイルム様の腕に、ぐいと力がこもった。
彼の低い声は、深い愛情と、それを上回るほどの隠しきれない「焦燥」に震えている。
朝日が差し込む執務室。
机の上に置いてあったはずの『母様の魔導書』が、誰の手も借りずに宙に浮き、眩いばかりの蒼い極光を放っていた。
「……カイルム様、苦しいですわ。……大丈夫。神様が迎えに来たとしても、私はあなたの隣から一歩も動きません」
私は、彼の逞しい腕に自分の手を重ねた。
首筋に刻まれた「氷狼の紋章」が、カイルム様の激しい鼓動に呼応して、トクトクと熱く、甘く脈動している。
王都を鎮め、ノースウォールに平和が訪れた。
けれど、昨夜私たちが魂を分かち合ったその瞬間から、この魔導書は「何か」を待っていたかのように目覚めてしまったのだ。
パラパラと音を立てて、魔導書の頁が捲られていく。
文字が、光の粒子となって空中に舞い踊った。
『調和の聖女よ。王都の偽りの太陽を鎮めし者よ。
汝の氷は、単なる拒絶の盾ではない。
それは、世界を救う「冷たき愛」の楔なり』
「……母様の、声?」
懐かしい、花の香りが部屋を満たす。
光の粒が空中に描き出したのは、ノースウォールのさらに北。
人間が立ち入ることを許されない永久凍土の果てに立つ、巨大な『氷晶の門』の姿だった。
『大太陽の核を鎮めた影響で、世界の天秤が大きく揺らいでいる。
門の向こうで眠る「氷の精霊王」が目覚めれば、世界は永劫の冬に閉ざされるだろう。
それを止め、新たな調和を紡げるのは、エルシア。……愛を知った、あなただけ』
光の残像が消え、魔導書が静かに机に落ちる。
後に残されたのは、机に刻まれた一筋の光の地図。
「……また、君に重荷を背負わせるというのか。あの王都の連中と同じように!」
カイルム様が、怒りに身を震わせて魔導書を掴み取ろうとした。
彼の指先から溢れ出す漆黒の魔気が、部屋の温度を瞬時に氷点下へと叩き落とす。
「いいえ、カイルム様。違いますわ」
私は、カイルム様の頬を両手で優しく包み込んだ。
怒りで険しくなった彼の瞳を見つめ、私は今までで一番晴れやかな笑顔で告げる。
「王都では、私は無理やり力を奪われる『道具』でした。……でも、今は違います。私は、あなたがいるこの世界を守りたい。……私の氷が、あなたの熱を助けるための『奇跡』なのだとしたら。……私は、自分の意志で、その門へ行きたいのです」
「……エルシア」
「カイルム様。……一緒に行きましょう? 一生、離さないと誓ってくださった、私の騎士様」
カイルム様は、私の言葉を飲み込むように、強く、強く抱き寄せた。
彼の熱い唇が、私の額に深い誓いを刻む。
「……ああ。……分かった。……地獄の底だろうと、天の果てだろうと、私は君を離さない。……君が世界を救うというなら、私はその世界ごと、君を私の腕の中に閉じ込めて守り抜こう」
窓の外、ノースウォールの空には、かつてないほど巨大な、美しいオーロラが揺らめいていた。
それは、古い因縁を捨て、世界の深淵へと挑む「一対の魂」への、祝福の幕開け。
私たちの、本当の物語が、今、ここから始まろうとしていた。
お帰りなさいませ!
再開一話目からいきなりの「精霊王の導き」……。
エルシア様とカイルム閣下の絆は、もはや人間同士の愛を超え、世界の理をも変えようとしていますわね。
カイルム閣下の、怒りすら孕んだ「重すぎる独占欲」も、さらにパワーアップしている予感がいたします。
さて、二人が向かうのは、誰も見たことのない永久凍土の果て。
そこにはどんな試練が待ち受けているのか。
そして、母・イザベラ様が遺した本当の秘密とは……?
もし、この再開を「待ってた!」と思ってくださったなら、
ぜひ【ブックマーク】の再登録と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、
二人の新しい旅立ちへの「燃料」を贈ってあげてくださいな。
皆様の評価が、エルシア様の氷をさらに輝かせる、最強の魔法になりますわ。
次回、第36話「辺境伯夫人の朝。幸せなパンの香りと、小さな異変」でお会いしましょう。
(※甘い新婚旅行(?)の始まりですわよ!)




