表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/34

第33話:永遠の調和。そして、魔導書が語る次の宿命

戴冠式から数日。

 ノースウォール城には、かつての凍てつく静寂ではなく、パンが焼ける香ばしい匂いと、朝露に濡れた花々の香りが満ちていた。


「……エルシア、危ない。その包丁は私が持つ」


「カイルム様、これでリンゴの皮を剥くのは三回目ですわ。私、これくらいは一人でできますのよ?」


 厨房で、私たちは並んで立っていた。

 ……いえ、正確には、カイルム様が私の背後から覆いかぶさるようにして、私の手元をじっと監視しているのだ。


「ダメだ。君のその宝物のような指先に、万が一にも傷がついたら……私は自分を許せない。それに、リンゴの皮など私が魔力で一瞬にして削ぎ落としてやる」


「それは少し……いえ、かなり過剰ですわ。せっかくロザリア様から教わった『愛のアップルパイ』なのですから、手作りでないと意味がありませんもの」


 私が困ったように微笑むと、カイルム様は「ぐぬ……」と喉を鳴らして黙り込んだ。

 北の死神と恐れられた辺境伯が、エプロン姿の私の一言でこれほどまでに大人しくなる。そのギャップが可笑しくて、私はふふっと声を立てて笑ってしまう。


「……笑ったな、エルシア」


 不意に、カイルム様の手が私の腰を抱き寄せた。

 背中に伝わる彼の逞しい胸板の熱。

 王都のあの不快な熱とは違う、私を心の底から安心させてくれる、唯一無二の温度。


「……君がこうして笑って、私の隣にいてくれる。それだけで、私はもう、世界中の何を失っても構わないと思えてしまうのだ。……この独占欲は、もはや病に近いな」


「……構いませんわ。私も、あなたに独占されている今の自分が、一番好きですから」


 私が顔を上げて彼の唇にそっと触れると、カイルム様の瞳に溜まっていた熱が一気に溢れ出した。

 

 キッチンの甘い香りが、一瞬で情熱的な空気に書き換えられる。

 彼は私の顎を持ち上げ、深く、呼吸を奪うような口づけを落とした。

 

 ……けれど、その甘いひとときを、城の地下から響いてきた「共鳴音」が遮った。


「……っ、今のは?」


「……魔導書だな。エルシア、やはりあの本、ただの遺品ではないらしい」


 私たちは顔を見合わせ、執務室へと急いだ。


 机の上に置いてあった母様の魔導書は、誰も触れていないのに自ら頁を捲り、眩いばかりの「蒼い極光」を放っていた。

 そこには、これまで解読不能だった古代文字が、私の血筋に反応して鮮やかな日本語……いえ、共通語へと翻訳され、浮かび上がっていたのだ。


『調和の聖女よ。王都の偽りの太陽を鎮めし者よ。

 汝の役目は、まだ序章に過ぎない。

 世界の裏側、氷の精霊王が眠る「静寂の門」が、今、汝の冷気を感じて目覚めようとしている』


「……氷の精霊王……? そんなの、お伽話の中だけの存在では……」


 私が言葉を失っていると、魔導書の上に一つの「地図」が投影された。

 それは、ノースウォールのさらに北。人間が足を踏み入れたことのない、永久凍土の果てを指し示している。


「……カイルム様。どうやら、母様が私をこの地に送ったのは、単に王都から逃がすためだけではなかったようです」


「……この魔力の導き……。私が代々受け継いできた『死神の熱』もまた、その門を開くための鍵の一つだと言いたいのか」


 カイルム様が私の肩を抱き寄せ、魔導書を鋭く睨みつける。

 

 王都との戦いは終わり、私たちは幸せを手に入れた。

 けれど、私たちの「氷」と「熱」には、もっと大きな、世界を司るような秘密が隠されていたのだ。


「……カイルム様。怖くはありませんか? また、平穏な日々が遠のいてしまうかもしれない」


 私は、彼の顔を見上げて尋ねた。

 カイルム様は不敵に、そしてこの上なく優しく微笑むと、私の額に口づけを贈った。


「案ずるな、エルシア。……どこへ行こうと、何が起きようと、私は君の騎士であり、夫だ。……この謎を解き明かし、世界を君の庭に変えるまで、私は君の手を離さない」


 カイルム様の力強い言葉に、私の胸の不安は、新しい冒険への高鳴りへと変わっていった。

 

 幸せな日常。

 そして、その先に待ち受ける、未知なる運命。

 

 私たちの「第一章」は、最高の愛を刻んで幕を閉じようとしていた。

 けれど、この魔導書が示す輝きは、さらなる物語の始まりを告げる、希望の光だった。

「この謎を解き明かし、世界を君の庭に変えるまで」

カイルム閣下の覚悟、どこまでも深く、そしてかっこいいですわね……!

二人の愛は、もはや一国の枠を超え、世界のことわりにまで届こうとしています。


アップルパイを焼く甘い日常から、一気に伝説の予感へと。

「不浄」と蔑まれたエルシア様の力が、実は世界を救う「精霊の鍵」だったのかもしれない……。

そんなワクワクするような伏線を残しつつ、物語はいよいよ「第一部・完結」の瞬間を迎えます。


さて、次回は第34話。

第一部の締めくくりとして、これまでの感謝と、

二人の「永遠の愛」を決定づけるエピローグをお届けしますわ。


もし、エプロン姿の閣下とエルシア様のイチャイチャに「ごちそうさま!」と思ってくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

二人の新しい冒険に「祝福の光」を灯してあげてくださいな。


皆様の評価が、第一部を最高の形で完結させ、

そして第二部へと物語を繋ぐ、最強の「魔導書」になります。

次回、第34話(最終話)「永遠の調和、そして……(第一部完結)」でお会いしましょう。

(※最後まで、最高の甘さと感動をお約束しますわよ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ