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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第32話:宝石の都の戴冠式。世界で一番幸せな冬

王都を焼き尽くそうとしていた「狂った熱」を鎮め、私たちは北の聖域へと凱旋した。


 ノースウォールの境界を越えた瞬間、迎えてくれたのは、これまでのような刺すような吹雪ではなかった。

 私の「調和」の魔力がカイルム様の「熱」と溶け合い、領地全体を包み込む柔らかな春のような微風。雪はダイヤモンドのように煌めきながら舞い降り、凍てついていた大地からは、季節外れの美しい高山植物が次々と芽吹いていた。


「……見てください、カイルム様。お城が、光っていますわ」


「ああ。……君という主を迎えるために、この地そのものが喜んでいるのだな」


 城の広場には、ノースウォールの全領民、そして隣領から駆けつけたロザリア様たちの姿があった。

 彼らは一斉に膝をつき、私たちが通る道に「氷の花びら」を撒いて祝福する。


「女神様、万歳! エルシア様、万歳!!」


 地響きのような喝采。

 王都で「不浄」と石を投げられていた頃の私が、今の私を見たら、きっと夢だと思って信じないだろう。

 私は、カイルム様にしっかりとエスコートされ、城のバルコニーに設えられた「戴冠の祭壇」へと昇った。


 今日の私は、あの婚礼のドレスをさらに魔力で研ぎ澄ませた、氷の宝飾が輝く正装を纏っている。

 カイルム様は、私の前に跪くと、自身の家系に代々伝わる「白銀の王冠」を捧げ持った。


「……エルシア。君がこの地に来てくれたあの日、私の世界は初めて『色』を得た。……君がいなければ、私は今も孤独な死神として、自らの魔力に焼かれて死んでいたことだろう」


 カイルム様の灰色の瞳が、熱く、切実な色を湛えて私を見つめる。

 彼は大勢の領民の前で、私の手に深く、深く口づけを落とした。


「……君はもう、誰の所有物でもない。君は、このノースウォール領、そして私の心の、唯一無二の支配者だ。……生涯をかけて、君を敬い、愛し、守り抜くことを、ここに誓おう」


 カイルム様の手によって、私の頭上に王冠が戴せられた。

 その瞬間、私の内側から溢れ出した「白氷」の魔力が、夜空へと立ち昇り、巨大なオーロラを描き出した。


「……ありがとうございます、カイルム様。……そして、私の大切な皆さん。……私は、この温かな場所で、あなた方と共に歩めることを誇りに思います。……もう、この地を凍えさせる悲しみはありませんわ」


 私が微笑むと、空から光の粒が降り注いだ。

 領民たちは涙を流して喜び、ロザリア様に至っては「ああ、なんて尊いお姿! わたくし、一生エルシア様の靴磨きとして生きていけますわ!」と、侍女に羽交い締めにされながら叫んでいる。


 式典が終わった後、私たちは二人きりで、城の最上階にあるテラスへと向かった。

 

 下界では、祝祭の灯火が宝石のように輝いている。

 かつての「死の地」は、今や大陸で最も豊かな、光溢れる都へと生まれ変わっていた。


「……疲れたか、エルシア。……本当なら、あんな連中の前に君を立たせたくはなかったのだが」


 カイルム様が、背後から私を包み込むように抱きしめた。

 彼の熱い吐息が首筋をくすぐり、私はたまらず小さな声を上げた。


「カイルム様……。また、そんな独占欲を……。ふふっ、でも、今日は許してあげますわ」


「今日だけ、ではない。……一生だ。……王都の奴らが君を捨てたことだけは、唯一感謝してやる。……おかげで、私は君という奇跡を独り占めできたのだから」


 カイルム様は、私の腰を引き寄せ、逃げられないように腕を回した。

 彼の指先が、私の薬指の指輪をなぞり、そのまま手のひらを重ねてくる。


「……愛している、エルシア。君なしの人生など、もう考えられない」


「私も……愛しています、カイルム様。……私の、冷たい世界を温めてくれて、ありがとう」


 私たちは、宝石のような星空の下で、甘く、長い口づけを交わした。

 

 復讐は終わった。

 「不浄」と呼ばれた過去は、今、最高の幸福として上書きされた。

 

 けれど。

 その甘美な沈黙の中、私の部屋の机に置いてきた母様の「魔導書」が。

 誰もいない暗闇の中で、不気味な青い光を放ち、未だ開かれたことのない最終ページを、ゆっくりと開き始めていた。

「君という奇跡を独り占めできた」

カイルム閣下、戴冠式の最中でさえ、

エルシア様を「俺だけのもの」と言わんばかりの熱い視線を送っていましたわね。

これほどまでに一途で重厚な愛に包まれるヒロイン……。

皆様、ご自身の心までノースウォールの春のような温かさに包まれませんでしたか?


「ゴミ」と呼ばれた少女が、一国の主母として戴冠する。

これこそが、全ての苦難を乗り越えた者だけが辿り着ける、

最高に美しいハッピーエンドの風景です。


しかし、物語の幕が閉じる寸前、

母様の魔導書が不穏な動きを見せました……。

第一部完結まで、あと2話。

幸せの絶頂にあるふたりに、どんな「宿命」の続きが待っているのか。


もし、エルシア様の戴冠式に「本当におめでとう!」と思ってくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

彼女の新しい門出を祝ってあげてくださいな。


皆様の評価が、エルシア様の未来をより輝かしく、

そして第二部へと繋がる強い光になります。

次回、第33話「幸せの温度。二人で焼く、初めての甘いパイ」……

いえ、「永遠の調和。そして、魔導書が語る次の宿命」でお会いしましょう。

(※幸せなエピローグの始まりですわよ!)

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