表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/35

第28話:初夜、熱く溶け合う二人。氷の魔法が解ける時(前編)

カイルム様の指先が、私の首筋をなぞる。

 その熱い感触が、背筋を伝って甘い痺れとなり、身体の奥へと消えていった。


 寝室を照らすのは、窓から差し込む月の光と、暖炉で静かに爆ぜる炎だけ。

 私が自らの魔力で紡いだ「氷のドレス」は、カイルム様の熱に当てられたせいか、それとも私の心の高鳴りに呼応したのか、淡い青の光を放ちながら、少しずつ形を崩していく。


「……エルシア。君は、本当に美しい。……私がどれほどこの瞬間を待ち侘びていたか、君には想像もつかないだろう」


 カイルム様が私の肩に顔を埋め、深く、熱い吐息を吹きかける。

 彼の低い声が、直接私の骨を震わせる。私は、その逞しい胸板に背中を預け、逃げ場のない檻の中にいるような、心地よい絶望に浸っていた。


「……カイルム、様……。私、あなたの熱に、溶かされてしまいそうです……」


「……溶ければいい。……そして、私の熱と混ざり合い、二度と離れられない一つの形になればいい」


 カイルム様の手が、私のドレスの肩紐をそっと押し下げる。

 肌に触れる冷たい空気さえも、彼の掌が触れた瞬間に沸き立つような熱へと変わっていく。


 私は、震える手でカイルム様の首に腕を回した。

 マントを脱ぎ捨てた彼の礼服の下からは、鍛え上げられた身体の隆起が伝わってくる。その鼓動は、私の知っているどんな旋律よりも激しく、ひたむきに私を求めていた。


「……見てくれ、エルシア。私の魔力が……君の氷を求めて、こんなにも鳴いている」


 カイルム様の掌が、私の胸元に触れる。

 その瞬間、彼の周囲に燻っていた漆黒の魔力と、私の内側から溢れ出した白氷の魔力が、パチリと音を立てて共鳴した。


 青と黒の閃光が、寝室の空間を幻想的に彩る。

 いつもなら「暴力」として暴れるはずの彼の魔力が、私の氷に触れた瞬間、穏やかな、慈しむような光へと昇華されていく。


「……ああ……。君なしでは、私はもう、立っていられない」


 カイルム様はたまらずといった様子で、私をベッドへと押し倒した。

 沈み込むシーツ。重なる、体温。

 

 これまでは「辺境伯」と「追放令嬢」だった。

 けれど今、この薄闇の中には、ただ愛を欲する一人の男と、それに応えようとする一人の女しかいない。


「……エルシア。君が王都で失った温もりも、涙も、すべて私が飲み込んでやる。……今夜からは、君の瞳に映るのも、君の肌に触れるのも、私だけでいい」


 彼の熱い唇が、私の耳朶を食み、鎖骨へ、そしてその先へと降りていく。

 あまりの快感に、私は指先をシーツに食い込ませ、彼の名前を何度も呼んだ。


「……カイルム様、カイルム様っ……。私を……あなたの愛で、埋め尽くして……」


 私がそう告げた瞬間。

 カイルム様の瞳に溜まっていた情熱が、決壊した。


 深く、深奥まで突き刺さるような抱擁。

 冷たい氷が、灼熱の炎に触れて蒸気となるように、私の意識は真っ白に染まっていく。

 身体の芯まで彼に貫かれ、魂が一つに溶け合っていく感覚。

 

 王都で「不浄」と蔑まれた私の氷は、今、カイルム様の愛という炎に抱かれて、最高の幸福として昇華されていた。

 

(ああ……私、本当に、この人の妻になれたんだ……)


 幸福の涙が頬を伝い、それをカイルム様が愛おしげに口づけで掬い取る。

 この時間が永遠に続けばいい。

 この腕の中で、一生、甘い夢を見ていたい。


 けれど。


 絶頂の余韻に包まれる中、私は不意に、窓の外の異変に気づいた。


「……カイルム、様……?」


「……どうした、エルシア。まだ、離してやらないぞ」


 彼が私の首筋に鼻を寄せて囁くが、私の視線は窓の外の空に釘付けになっていた。


 白銀の雪を照らすはずの月が――。

 不気味なほど、どす黒く、「赤く」染まっていたのだ。


 そして。

 ゴゴゴゴ……と、地鳴りのような振動が、城の石壁を伝って私たちの肌に響き渡った。


「……っ、この魔圧は……王都か!? あの馬鹿ども、何をした……!」


 カイルム様が私を抱きしめたまま、鋭い眼差しで空を睨みつける。

 平和なノースウォールの空気が、遠く南から押し寄せる「狂った熱波」によって、急速に歪み始めていた。


 初夜の甘美な静寂は、今、破局の予兆によって塗り替えられようとしていた。

「溶ければいい。そして、二度と離れられない一つの形になればいい」

カイルム閣下の、なんと熱く、そして独占的な愛……!

皆様、二人の魂が完全に重なり合ったこの瞬間に、

ご自身の心まで蕩けてしまわれたのではないでしょうか。


言葉ではなく、魔力と肌で語り合う、至高の初夜。

エルシア様が、真の意味で「一人ではない」ことを確信した、

物語の中でも最も大切なシーンの一つですわね。


しかし、その幸福を切り裂くように昇った「赤き月」。

リュシアン王太子が引き起こした「太陽の核」の暴走が、

ついに北領の結界にまで牙を剥き始めました。


もし、二人の甘い睦み合いに「幸せになって!」と胸が熱くなったなら、

ぜひ【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

二人の絆に「不滅の加護」を贈ってあげてくださいな。


皆様の評価が、迫りくる災厄を打ち払う、

最強の「夫婦の魔力」になります。

次回、第29話「誰にも邪魔させない、愛の刻印(後編)」でお会いしましょう。

(※予兆が「現実」の脅威となり、閣下の怒りが再び爆発いたしますわよ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ