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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第26話:ノースウォールの世紀の結婚式。領民たちの祝福

地平線を埋め尽くす黄金の鎧。

 三千の「太陽騎士団」が雪原を蹂躙し、その中心で異端審問官マルファスが再び呪わしい杖を掲げていた。

 王都の「正義」という名の熱気が、北領の冷気を無理やり押し返そうと、不快な陽炎を立ち昇らせている。


 けれど、ノースウォール城のバルコニーに立つ私たちは、それさえも「余興」として見下ろしていた。


「……綺麗。世界が、祝福してくれているみたい」


 私は、カイルム様にエスコートされ、領民たちが集まる広場へと続く大階段の最上段に立った。

 私が紡いだ「純白の氷のドレス」は、吹雪の中でダイヤモンドのように煌めき、動くたびに魔法の粉雪が光の尾を引く。背後には、私が刺繍を施した漆黒のマントを翻す、カイルム様。


「ああ。これほど美しい景色は、私の人生で二度とないだろう。……エルシア、君を愛している。この命が尽きても、君という光を離しはしない」


 鳴り響く祝婚歌の調べ。

 領民たちの地響きのような歓声。

 そのすべてをかき消すように、城門の向こうからマルファスの怒号が響いた。


「ノースウォール辺境伯! 婚礼などという茶番はやめろ! 聖王令に背き、罪人を匿うというのなら、この三千の炎で城ごと灰にしてくれるわ!」


 三千の騎士が一斉に剣を抜き放ち、太陽の加護を受けた炎が雪原を真っ赤に染め上げる。

 王都が誇る「太陽の怒り」。並の魔導師なら、その熱気だけで意識を失うほどの威圧感。


 けれど、カイルム様はただ不敵に微笑んだだけだった。

 彼は私の腰を抱き寄せ、その大きな手で私の指先を包み込む。


「……エルシア。準備はいいか。……君の、最初で最後の『共同作業』だ」


「はい。……カイルム様」


 私は、母様の魔導書から得た知識を、胸の奥で練り上げた。

 『不浄』と蔑まれた氷。それは命を奪うものではない。溢れすぎた熱を宥め、世界の調和を取り戻すための「聖なる静寂」。


「――絶対零度の調律アブソリュート・チューニング


 私がその言葉を紡いだ瞬間。

 私のドレスから、そしてカイルム様のマントから、目も眩むような「蒼白の光」が溢れ出した。


 それは吹雪さえも静止させる、絶対的な静寂。

 光の波が城壁を越え、雪原を飲み込み、三千の軍勢へと押し寄せる。


「な、なんだ!? 炎が……太陽の火が、消えていく……っ!?」


 マルファスが悲鳴を上げた。

 騎士たちが掲げていた魔剣の炎が、まるで見えない手に握りつぶされたかのように、一瞬で鎮火していく。それだけではない。彼らの黄金の鎧が、パキパキと音を立てて美しい氷の結晶に覆われ、地面に縫い止められていくのだ。


「ひ、ひいぃっ! 身体が……動かん! 魔法が使えない! 何だ、この氷は……冷たくない、なのに、力が……吸い込まれていく!」


 三千の軍勢が、一瞬にして「氷の像」の森と化した。

 怪我人は一人もいない。ただ、彼らの傲慢な魔力だけが完全に封じられ、彼らは雪原の中で膝をつくことさえできずに固まっている。


「……王都の太陽が、これほどまでに脆いとはな」


 カイルム様が、静まり返った雪原を見下ろして言い放った。

 私の刺繍が彼の魔力を完全に制御し、今やその声には、真の支配者としての威厳が宿っている。


「マルファス。貴様たちの『熱』は、エルシアがすべて預かった。……命を拾いたければ、その不自由な身体のまま、這って王都へ帰れ。……我々を邪魔する者は、二度とこの北領の土を踏むことは叶わぬと知れ」


 カイルム様はそう告げると、私に向き直った。

 彼は大勢の領民たち、そして氷漬けになった三千の軍勢の前で、私の顎をそっと持ち上げた。


「……愛している、エルシア・ド・ノースウォール。私の命を繋ぐ、唯一の女神よ」


「……私も、愛しています。カイルム様。……私の、永遠の騎士様」


 雪原に跪く敗北者たちを背景に、私たちは深く、熱い口づけを交わした。

 降り注ぐのは、私の魔力が生み出した、祝福の光の粒子。


 「不浄の氷」は、今、世界で最も尊い「奇跡」として、北の空に刻まれた。

 領民たちの地響きのような万歳三唱が、凍てついた王都軍の耳に、敗北の調べとして残酷に響き渡っていた。

「これこそが、私たちの『共同作業』」

三千の軍勢を指先一つで沈黙させ、その前で永遠の愛を誓う……。

これほどまでに美しく、そして痛快な「ざまぁ」があったでしょうか!

皆様、エルシア様の凛とした花嫁姿と、カイルム閣下の圧倒的な強さに、

心からの拍手を贈っていただけましたでしょうか。


王都が誇る「太陽の加護」さえも、エルシア様の「調和」の前では無力。

一度手放した救世主が、自分たちを裁く女神として君臨する絶望を、

マルファスたちは王都へと持ち帰ることでしょう。


さて、ついに正式な夫婦となった二人。

ですが、物語はこれで終わりではありませんわ。

敗走した審問官の報告を受けた王太子リュシアンが、

ついに最後の一線を超え、王都そのものを道連れにする暴挙に出ようとしています。


もし、この世紀の結婚式に「最高!」と思ってくださったなら、

ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、

二人の初夜……いえ、新生活への祝福を届けてあげてくださいな。


皆様の評価が、二人の絆をさらに熱く、甘く、溶けないものにします。

次回、第27話「氷の聖堂の誓い。もう二度と、その手を離さない」……いえ、

「敗北の残響。狂える王太子の最後通牒」でお会いしましょう。

(※甘い新婚生活の裏で、王都が崩壊のカウントダウンを始めますわよ!)

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