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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第22話:断たれた偽証と、執務室の甘い檻

「……刺客、ですって?」


 審問官マルファスの嘲笑が、凍てつく空気の中で反響した。

 私の指先から、スッと血の気が引いていくのがわかる。母様が、王都の反逆者? そして私が、このノースウォールを滅ぼすために送り込まれた毒?


 そんなはずはない。私はただ、疎まれ、捨てられただけのはずなのに。

 けれど、あの羊皮紙に記されたフレイム公爵の印章は、私の記憶にある父の冷酷な筆致そのものだった。


「……っ、カイルム様、私は……!」


 縋るような思いで、隣に立つカイルム様の腕に手を伸ばした。

 けれど、カイルム様は動かなかった。その視線は、城壁の下で勝ち誇るマルファスをじっと見据えたまま、微動だにしない。


 ――怖い。


 もし、この人が私を「敵」だと認識したら。

 昨日まで私を温めてくれたこの熱い手が、今度は私の喉を焼き切るために伸ばされたら。

 

 私の身体が、絶望に震え始めたその時。

 肩を掴むカイルム様の手が、グイ、と力強く私を引き寄せた。


「……審問官。一つ、聞き忘れていたことがあった」


 カイルム様の声は、驚くほど低く、凪いでいた。

 マントの襟元に私が縫い付けた『氷の刺繍』が、彼の昂ぶる魔力を吸い取り、不気味なほど鮮やかに青く発光している。


「な、何だ、カイルム。……今さら命乞いか? その魔女を差し出せば、お前の家名だけは――」


「お前は、その紙に書かれた文字が、私の意志よりも重いとでも思っているのか?」


 次の瞬間、カイルム様の手が私から離れた。

 彼が指先をわずかに動かしただけで、マルファスが掲げていた「証拠の契約書」が、突如として黒い炎に包まれた。


「ひ、ひいっ!? な、何を……っ、証拠が!」


「証拠など必要ない。……エルシアが何者であろうと、誰に送り込まれようと、そんなことは些細な問題だ」


 カイルム様は、慌てふためくマルファスを一顧だにせず、私を抱きすくめるようにしてその場に跪かせた。

 大勢の兵士が見守る中、彼は私の両手をとり、その手の甲に、火傷しそうなほど熱い口づけを落とした。


「……たとえ君が、私を殺すために来た毒だったとしても。……私は、君を飲み干して死ぬことを選ぶだろう」


「……カイルム、様……」


「審問官。王都へ戻り、あのハゲ上がった王太子に伝えろ。……エルシア・ド・ノースウォールは、今この瞬間、私の魂の一部となった。……彼女を奪おうとする者は、神であろうと、王であろうと、この私が地獄へ叩き落とすと」


 カイルム様が立ち上がった瞬間、城壁から凄まじい氷の奔流が溢れ出した。

 それは城門を塞ぎ、王都の使節団を物理的に押し返していく。圧倒的な魔力の差。マルファスたちは、悲鳴を上げながら白銀の雪原へと追い散らされていった。


 ◇◇◇


「……あ、あの……カイルム様?」


 気づけば、私は彼に抱き上げられたまま、城の最奥にある執務室へと運び込まれていた。

 重厚な扉が閉まり、背後でカチリとカギがかかる音が響く。


 部屋の中には、暖炉の火だけが赤々と燃えていた。

 カイルム様は私をソファに降ろすと、逃げ場を塞ぐように両腕で私を閉じ込めた。


「……カイルム様、先ほどの……審問官の言葉は、本当なのですか? 私の母様は……」


「そんなことはどうでもいい、と言ったはずだ」


 カイルム様の指先が、私の顎を強く持ち上げた。

 見上げる彼の瞳には、荒れ狂う情熱と、壊れそうなほどの執着が渦巻いている。


「……私が恐れているのは、君の過去ではない。……君が、王都の言葉に惑わされて、私の元からいなくなることだけだ」


「……いなくなり、ません。私は、あなたの妻ですから」


「……ならば、証明してくれ。……君の氷で、私のこの狂おしい熱を鎮めてくれ。……今、この瞬間も、君をどこかへ閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくないという衝動で、胸が張り裂けそうだ」


 カイルム様は、私の首筋に深く顔を埋めた。

 刺繍の魔法で鎮められていたはずの彼の魔力が、私の肌に触れたことで、再び熱を帯びて暴れだす。


「……エルシア。君が刺客でも、魔女でも構わない。……君が私の隣にいるという事実だけが、今の私を繋ぎ止めている唯一の鎖なのだ」


 彼の熱い吐息が、私の理性を甘く溶かしていく。

 王都から突きつけられた疑惑の影は、彼の重すぎる愛の前に、霧となって消えていった。


「……私を、離さないでください、カイルム様。……どこへも、行かないように……あなたの愛で、縛り付けて……」


 私がそう呟くと、カイルム様の瞳に溜まっていた熱が、一気に溢れ出した。

 

 重なる、唇。

 それは昨日までのどの口づけよりも激しく、独占的で、逃げ場のない「檻」のような味。


 執務室の窓の外では、王都との全面対決を告げる吹雪が吹き荒れている。

 けれど、この閉ざされた部屋の中で、私は初めて、カイルム様と二人きりの「共犯者」になれたような、甘美な悦びに震えていた。

「たとえ君が毒だったとしても、私は君を飲み干して死ぬ」

カイルム閣下の、狂気すら孕んだ全肯定……。

皆様、この「究極の溺愛」に、ご自身の心まで溶けてしまってはいませんか?


審問官の卑劣な罠を、愛の力で粉砕する。

これこそが、花菱エマが皆様に届けたかった「心の安全基地」の真髄ですわ。

たとえ過去にどんな秘密があろうとも、

今、目の前で愛し合っている温度こそが、二人の真実。


しかし、執務室で二人きり。

カギをかけられた「甘い檻」の中で、

カイルム閣下の独占欲はどこまで暴走してしまうのか……。


もし、閣下の「重すぎる愛」に胸が熱くなったなら、

ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、

二人の逃避行……いえ、独立宣言を応援してあげてくださいな。


皆様の評価が、二人の絆をさらに強くし、

物語を誰も予想だにしない「極上のハッピーエンド」へと導きます。

次回、第23話「氷の温室のティータイム。ロザリアとお嬢様談義」でお会いしましょう。

(※少しだけ、平穏な甘さを補給する回になる予定ですわよ!)

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