↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/99

81.執着執事は彼女に会いたい

 ……急に、神々しいまでの白が飛び込んできた。思わず目を細める。

 起きたばかりで目が慣れていないのか、視界がぼやけている。

 手……温かい。いや、案外冷たいな。

 誰かに手袋越しで手を握られているのだろうかと考え始めたが、意識がすっと澄み始める。

 瞼がゆっくり下がり、再び夢の世界へいざなおうとする。

 行きたくないと、必死に目を開けようとするが、どうにも開けられない。身体が言うことを聞かず、勝手に動くのが気に入らず、苛立ちが積もっていくのを感じる。


 

 ——消えゆく意識の中、最後、黄金が映った。


 ◇   ◇   ◇

 

「うん、そうだった。確固たる自信を持っていたのに……」

 耳から、声が聞こえる。

「ギルがあんなに酷い怪我を負ったのを見て……誰がやったのか察しが付いてしまって。……そうしたら」

 意識が徐々に戻り始める。

 ぼやけていた景色も、明白になっていった。

「ソフィアお姉様を元に戻す。……絶対的ポリシーだった筈なのに、僕は正しいのかって、不安になってきて……!」

 悲痛な声が、耳に届く。

 今にも泣き出しそうに顔を歪めるレオン様に、気絶する直前のあの変な態度はそういうことだったのかと、納得がいった。

「フランク……僕、どうすれば良いのかな」

 瞳を濡らして、レオン様はフランク様の制服をくしゃりと掴んだ。顔をうつむかせ、頼るように身体を近づける。


 

 しかし、フランク様は彼の背中を優しく撫でてから、丁寧にレオン様を押し戻した。

「ギルが簡単に怪我するわけないだろ。しかもあんな大怪我。絶対、わざとだ」

「うん……だけど……」

「ソフィアの行動が怪しいのは認めるし、そこは気をつけたほうが良いと思う。けどな、お前の覚悟はそんなもんだったのか?人に判断を求めるのは、思考を放棄したのと一緒だ。俺が何かを選択したとして、お前は、後で素直に笑えるか?」

「……〜!」

 フランク様の歯に衣着せない率直な言葉に、レオン様は黙り込む。

 それから、ハハッと浅い笑いが聞こえた。

「……フランクは、厳しいなぁ」

 作った笑顔ではない、困り顔のような笑みだった。だが、自然だとも言えなかった。


 

「うん……そうだね。きちんと僕自身が選択しないと」

 彼は拳を握る。

「僕は——」

「ありがとうございます」

 レオン様の言葉に、口をかぶせた。

 彼は呆然と口を開き、俺を見つめる。聞かれていたのかと焦るように立ち上がれば、また椅子へ座った。

 俺は、彼を待たず、言葉を続ける。

「心配してくださったのでしょう?フランク様の言う通り、あれは自分が選択したことです。こんな俺に、ありがとうございます」

 白い歯を見せて、笑った。



 静寂が続いたが、レオン様は、目を閉じ、顔を背ける。それから、パチンと頬を叩いた。

「ありがと、ギル!」

 いつものレオン様の笑みになっていた。

「……いえ」

 淡く微笑むと、レオン様は目を細め、ニカッと笑った。



「一つ尋ねたいのですが、俺何時間程度寝ていましたか?」

 そう尋ねると、後ろからレオン様に肩を組んでいるフランク様が答えた。

「半日くらいだな。お前が倒れた次の日の朝だから、今」

「え」

 結構寝てしまっていた。

 通常は、誰かの気配が新たに出たら目が覚めるはずなのに、全く起きれなかった。

 それから、重要なことに気づいた。


 

「今日、定期テストじゃないですか!早く行ってください!」

 俺のせいで受けられなかったなどという状態になるわけにはいかない。

「何言ってんだ。起きたばっかだろ」

「そうだよ。いくら、腕は治ったとはいえ、本調子じゃないでしょ?」

 そう言われて、初めて左腕が完治していることに気づく。恐らく、シルヴィア様がやってくれたのだろう。

 改めて、様々な人に迷惑をかけてしまった。

「いえ、大丈夫ですよ」

 それを証明するために、ベッドの上で、ひょいっと片腕倒立を行う。

 左腕に大きな負担がかかるが、全く痛くない。聖女の力を改めて思い知る。

「おいおい、分かったからやめろよ。あぶねぇぞ」

 フランク様に言われて床に足を下ろすと、俺は部屋から追い出すように手を払う。

「俺が倒れたせいで、勉強時間を短くさせてしまい、すみません。俺は大丈夫ですので、早く行ってください」

 やれやれという風にフランク様は手を上げると、レオン様の背中を押しながら部屋から出ていく。

「ま、お前が元気そうで良かったわ。安静にしろよ」

 そう言い残して、2人は居なくなった。

「……なんか、悔しいな」

 フランク様の立ち去り方が、格好良かった。

 


「……何か……嫌な夢を見た気がする」

 ポツリと呟く。

 しかし、覚えていないのだ。

 物凄く嫌で、叫びたくなるような、二度と見たくないような夢だった気がする。

「ソフィアに……会いたい」

 欲を言うと、俺がよく知っている方のソフィアが良いが、今のソフィアでも全く問題ない。

 会って、癒されたい。そして……

「確認したい……?」

 出てきた言葉の意味が分からず、自分で自分に首を傾げる。

 一体何を確認するというのか。

 「どんな夢を見たんだろうな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。