64.悪役令嬢は美形の父に不意打ちされる
「……疲れたわ……。お父様達のせいで、不愉快極まりないわね」
ストレッチをしながら、ソフィアはブツブツと愚痴を言う。
公爵家では、自分の思い通りに全く行かず、鬱憤が溜まっていった。
「まだ寝る気になれないし、もう一度筋トレ……」
「入るよ」
バッ!と振り向き、そして開きそうになる扉に向かって勢いよく走る。
「え?何で?開かない?」
ガチャガチャとジュリアンはドアノブを回すが、開く気配がない。
それもその筈。ソフィアが、ドアを押して、開かないようにしているのだ。
「ちょ、ソフィアー?何をしているのかなー?」
暫く攻防戦は続き……
「それで、何の用ですか?」
勝負に負けたソフィアが、あからさまに不機嫌にしながら問いかけた。ジュリアンは、閉められないように靴を扉の間に挟み込みながら、「今日は久しぶりに一緒に寝よう?」と笑いかけた。
「無理です。帰ってください」
閉まる扉に彼は抵抗しながら、「まあまあ」と宥める。
そして、彼は拒否する隙も与えずソフィアの手を握り締めると、強引に走り出した。
(!?)
ソフィアは目を見開く。
男性の力には到底敵わないと悟ったのか、おとなしく連れていかれた。
ジュリアンの寝室に着くと、手を振り払う。
「……3人で寝るのですか?」
「大丈夫!私とソフィアの2人だから!」
「は?」
余計良くない、とソフィアは顔を顰める。
「お母様は了承したのですか?」
「勿論!」
『一人寂しく寝ろ、という解釈で合っているかしら?』と不満そうに頬を膨らませていた妻の姿を思い出し、ジュリアンは心の中で密かに(可愛かったな)と惚気を噛み締める。
「ほら、寝よう」
ソフィアをぐいっと引っ張った。
「ちょ、お父さ……」
ベッドに、ボン!と着地する。
急にやめてと文句を言おうとしたその時。
「え……」
父が、ソフィアに覆いかぶさるかたちになっていた。
ジュリアンの、この世界でも類まれなる正統派な美貌が、目と鼻の先にに迫る。
——ドクン……!
鼓動がうるさく鳴り響いた。




