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58.悪役令嬢は帰省する

 翌日。

 ソフィアは、教室にレオン達が来たのを確認すると、声をかけた。

 ソフィアの方から声をかけてきたことに、レオンと、一緒に来ていたフランクはギョッと驚く。

「明日、家に帰れってお父様が」

「え!明日!?」

「ええ」

 随分直前だとレオンは驚き、聞き返す。

 僕達とソフィアの今の関係を知って、配慮してくれたのかと考えつき、レオンは表情をほころばせた。

「教えてくれてありがとう、ソフィアお姉様」

「お父様に頼まれたから言っただけよ」

 ツンと突っぱねるように淡々とソフィアは言ったが、レオンはどことなく嬉しそうだ。それから、話題を探していると、隣のフランクがソフィアに聞いた。


 

「そういや、昨日ロベリア伯爵家のシエル令息と話してたけど、どうしたんだ?」

「お、フランク、ナイス!」

 レオンはそれについて聞きたかったということを思い出し、親指を立てた。

 2人は、ギルと一緒に、最近は放課後の時間は禁書庫に閉じこもって、禁忌魔法について書かれた書をあさっていた為、昨日図書館に来ていたソフィアに気づいたのだ。

「……別に、ただ魔術や魔法の訓練を学園から頼まれたから特訓していただけ」

「そうなんだ!でも、ロベリア伯爵子息って、そんなに魔術出来ないの?」

 シエルについてよく覚えていないレオンはそう尋ねる。

 一般的な思考回路である。

 しかし、シエルのことについて記憶していたフランクは考察した。それがまた真実に近い。



「逆で、シエル令息は魔術や魔法の才能があるし、所持魔力量が多いらしい。だけど、あんま魔術や魔法の練習してこなかったって聞いてっから、才能をもっと伸ばそうってことじゃね?」

「まあ、そういうことね」

 相変わらずの記憶力だと内心少し感嘆しながら、ソフィアは頷いた。

「それで、どうだったの?やっぱり大変だった?」

 レオンに聞かれ、ソフィアは考える。

 


 間を開けてから、彼女は答えた。

「才能は予想以上にあるけれど、体力が無いからそこが課題って感じだったわ」

「へぇー」

 レオンは、そこで本を開き会話を強制終了したソフィアを見ながら考える。

(魔法の才能あるのなら、今度、接触してみようかな)


 ◇   ◇   ◇


「おかえりなさい!」



 あっという間に土曜日になり、ソフィアは嫌々ながらも実家へ帰省することにした。

 学園から屋敷へ向かい、馬車から降りた途端、ソフィアは強い衝撃と同時に、柔らかな感触に包まれた。

 ソフィアは「離れて」と言おうとするが、言えず、もごもごとなってしまっている。

 桜のような甘く優雅な香りが彼女を包み込む。

 馬車から降りた瞬間抱きつかれるという予想外の出来事だったということもあり、彼女は一瞬、心地よさそうに表情を和らげた。

 しかし、直ぐに母を自分から引き剥がす。

「駆けて抱きつくというのは、非常識ではございませんか、お母様?」

 教養が無いのですか?という意味を込めて、ソフィアはにっこりと微笑んだ。

 しかし、リーシェはというと、特に気にした様子もなく、頬に右手を当て、ほんわかとしている。

「そうね、ごめんなさい。だけど、今直ぐ抱きしめたくなっちゃって」

 頬をぽっと赤くする。

 見るものが見れば、「可愛い……!」と失神するであろうその姿を見て、ソフィアは「そうですか……」と唇を小さく噛んでいた。


 

「母上、ただいま帰りました」

「この度はお世話になります」

 レオンやフランク達が降りてきた。

 フランクが何故居るのかというと、フランクに、昨日、誘いの手紙が届いていたからだ。

「おかえりなさい。フランクくんも、宜しくね」

「フランク君……」

 慣れない呼び方に、フランクは少し戸惑う。

「さあ、行きましょう」

 リーシェがソフィアの手を引いた。



 ソフィアは逆らわずに引かれながら、母に嫌味を言う。

「お母様は病弱なのですから、日傘もささずに歩いていては倒れてしまうのでは?」

 自分の体調管理すらまともにできないなんて愚かですね、と。

「心配してくれるの?ありがとう」

 何の疑いもなく、感謝を伝える。

 ソフィアの言葉の真意に気づいていた3人は、リーシェを感心の目で見ていた。レオンに至っては、お母様……と頭に手を触れている。



 扉が開き、中へ入る。

「「「「「おかえりなさいませ」」」」」

 ずらりと、輝いて見えるほど美しいホールをバッグに、使用人達が1列に並んでいた。

 倒す角度も手の置く位置も。全てが、全員揃っているようだった。髪肌には貴族と同レベルの艶があり、服は給料が1年分消え去る高級素材だ。

 そして、ホールの真ん中には公爵が立っている。昼用にしては、豪華な服装だ。

「おかえり」

「……ただいま」

 不本意そうにしながらも、そう返した。

明日も投稿します!

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